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早瀬から肩を抱かれた。最後まで一緒に読もうと言われながら。
「大丈夫。この後で良いことが起きるから。……ある夜のことです。レストランで怪我をした少年に出会いました。その子も一人ぼっちでした。自分と同じだなと思い、友達になりました。2人は自分のことを一人ぼっちだと言っていますが、そうではありませんでした。心にドアを作り、カギを掛けていたから、誰も訪問できなかったのです。……青年と少年は恋人同士になりました。森の中の家に住みたいねと話しています。……ここで終わっているね。書きかけみたいだね」
最後の部分には、メモが書かれている。夏樹の字だ。判読不能なぐらい、個性的な字を書く子だ。
「夏樹ってね。何でも出来るけど、字だけは上達しなかったんだって」
「そうみたいだね。圭一さんは綺麗な字を書くよ」
「そうなんだ?夏樹も綺麗な字を書くかと思っていたんだ」
「悠人君は思い込みが強い子だね。俺のことも変質者だと思っていたし」
「今でもそう思っているけど?」
「悪いことを言うのは、この口か?」
早瀬から強引に引き寄せられて、抵抗する間もなくキスをされた。
「んんーっ。ゆう……、り……、さん」
「ふう、これで許してやる」
大げさなぐらいに音を立てて唇が離れた。強く吸い付かれたから痺れているのに、指先で触られた。
「赤くなったね。もっとしようか?」
「いいってば!」
「いいのか?そうか、もっとしようか」
「NO!」
「少しは流されよう」
「いやだよー」
早瀬の腕から逃れて机の隣に立つと、本の上にコピー用紙が置かれていることに気づいた。そこには、ピアノを弾いている人のイラストが描かれている。『黒崎さん作』と、名前も書かれていた。
「黒崎さんが描いたんだね。あの話のラストは、ピアニストになるのかな?」
「正解だよ。勘が良いね?」
「なるんだ!?」
「まだ夏樹君には話していないことだそうだ。黒崎さんは49歳の誕生日に、今の仕事を辞めるそうだ。大学生の時から黒崎製菓の副社長の秘書をして、仕事を叩きこまれていたからね。辞めた後は、ピアニストを目指すと聞いたよ。音大へ行くのか、誰かに師事するのかは、これから決めていくそうだ。夢を諦めていないんだよ」
「そうなんだ……」
「君も諦めないでほしい。俺が言うと説得力がないけどね」
「裕理さんも……」
プロの夢を諦めないでほしい。その言葉を飲み込んだのは、早瀬が先に首を横に振ったからだ。
「仕事をしながら音楽を続けることは出来る。8月のコンテストに向けて頑張ろう。お父さんが何か言って来ても、俺が止める。安心しろ」
「自分の身は……」
自分で守る。父に向かい合う。そう言おうとすると、また首を横に振られた。
「何もかも一度に挑戦しなくていい。こうして一緒にいるんだ。適材適所だと思ってほしい。俺の仕事を取らないでくれ」
「SP?身辺警護?」
「その通り。本気を見せてやる。……ああ、もう一回キスしようと思ったのに。悪い魔法使いの呪いだな」
部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。黒崎さんが俺達を呼びに来ていた。そして、人の悪い笑い声が聞こえて来た。『その辺でやめておけ。準備ができたぞ』と言われた。
何かやっているのだと誤解されているから、早瀬のことを突き飛ばして、部屋から出て行った。早瀨が言ってくれたことが嬉しかったのに、素直にお礼が言えないままだった。
「大丈夫。この後で良いことが起きるから。……ある夜のことです。レストランで怪我をした少年に出会いました。その子も一人ぼっちでした。自分と同じだなと思い、友達になりました。2人は自分のことを一人ぼっちだと言っていますが、そうではありませんでした。心にドアを作り、カギを掛けていたから、誰も訪問できなかったのです。……青年と少年は恋人同士になりました。森の中の家に住みたいねと話しています。……ここで終わっているね。書きかけみたいだね」
最後の部分には、メモが書かれている。夏樹の字だ。判読不能なぐらい、個性的な字を書く子だ。
「夏樹ってね。何でも出来るけど、字だけは上達しなかったんだって」
「そうみたいだね。圭一さんは綺麗な字を書くよ」
「そうなんだ?夏樹も綺麗な字を書くかと思っていたんだ」
「悠人君は思い込みが強い子だね。俺のことも変質者だと思っていたし」
「今でもそう思っているけど?」
「悪いことを言うのは、この口か?」
早瀬から強引に引き寄せられて、抵抗する間もなくキスをされた。
「んんーっ。ゆう……、り……、さん」
「ふう、これで許してやる」
大げさなぐらいに音を立てて唇が離れた。強く吸い付かれたから痺れているのに、指先で触られた。
「赤くなったね。もっとしようか?」
「いいってば!」
「いいのか?そうか、もっとしようか」
「NO!」
「少しは流されよう」
「いやだよー」
早瀬の腕から逃れて机の隣に立つと、本の上にコピー用紙が置かれていることに気づいた。そこには、ピアノを弾いている人のイラストが描かれている。『黒崎さん作』と、名前も書かれていた。
「黒崎さんが描いたんだね。あの話のラストは、ピアニストになるのかな?」
「正解だよ。勘が良いね?」
「なるんだ!?」
「まだ夏樹君には話していないことだそうだ。黒崎さんは49歳の誕生日に、今の仕事を辞めるそうだ。大学生の時から黒崎製菓の副社長の秘書をして、仕事を叩きこまれていたからね。辞めた後は、ピアニストを目指すと聞いたよ。音大へ行くのか、誰かに師事するのかは、これから決めていくそうだ。夢を諦めていないんだよ」
「そうなんだ……」
「君も諦めないでほしい。俺が言うと説得力がないけどね」
「裕理さんも……」
プロの夢を諦めないでほしい。その言葉を飲み込んだのは、早瀬が先に首を横に振ったからだ。
「仕事をしながら音楽を続けることは出来る。8月のコンテストに向けて頑張ろう。お父さんが何か言って来ても、俺が止める。安心しろ」
「自分の身は……」
自分で守る。父に向かい合う。そう言おうとすると、また首を横に振られた。
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部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。黒崎さんが俺達を呼びに来ていた。そして、人の悪い笑い声が聞こえて来た。『その辺でやめておけ。準備ができたぞ』と言われた。
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