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17時半。
オフィスでは終業時間を迎えた。黒崎、早瀬、そのほかの管理職が、別室で桂川弁護士と打ち合わせを行っている。その間、黒崎製菓としての動きがあった。事件を受けての謝罪コメントが、ニュースで流れた。営業企画部の写真だとと知られているようで、苦情の匿名話が掛かっている。この時間からは自動音声で対応する。広報部が担当になる。販促チームとしては、穴が開いた分の業務を進めている。
「……就業規則に定めてあります。起訴休職では、給料の支払いが。……いえ」
橋本室長が電話で話している相手は、白澤の両親だ。上司が打ち合わせ中のため、代わりに対応している。
やっと落ち着いたオフィスの中、ミーティングルームのドアが開いた。橋本室長の代わりに、黒崎へ用件を伝えに行った。
「白澤さんのご両親から電話が入っています。橋本室長が応対中です」
「分かった。忙しいところをすまないが、用事をお願いしたい」
「はい。どのような……」
黒崎が桂川弁護士と並んで立っている。打ち解けた様子だ。その光景に驚いたが、顔に出すわけにはいかない。初対面の相手なら、黒崎の迫力に押されるものだ。しかし彼女はそんな素振りはない。打ち合わせ中に打ち解けるか、慣れたのか?黒崎と桂川弁護士が話し始めた。
「桂川さん。今回のケースは、当社としては……」
「わたくしは反対の意見です」
「弁護士としてでしょうか?私情ではありませんか?」
「いいえ。あくまでも弁護士としての意見です」
「私情ではいかがですか?この件ならば、黒崎製菓としての……」
「クライアントの意思に沿います。黒崎常務の私情では?」
「いいえ。役員としての意見です」
「わたくしの意見はこうです」
「分かりました。ありがとうございました。明日、早瀬よりご連絡させていただきます」
黒崎が笑っていた。桂川弁護士も同じように。対等に会話するのはおかしなことではないが、クライアントに嫌われようが眉をひそめられようが、桂川弁護士の意見はブレていないようだ。
(理久に偉そうなことが言えない。ああいう人達に憧れている。かっこ悪いところを見せたくない……)
この企業の中では、俺は嫌われまくっている。その結果、随分と自由になった。それが自分の持ち味だと知った。理久を見ていると、学生時代の自分のようだ。こんな奴になってほしくない。
(そのうち追い越されるだろうな。本当にチキンサンド。フラれるかもしれない……)
そうするわけにはいかない。すっと息を吐き、姿勢をピンと伸ばした。気持ちを切り替えていると、そばの早瀬から声を掛けられた。
「桂川さんを宿泊先のホテルにお送りしてくれ。銀杏ホテルだ。ここからすぐだが、都内は慣れていない」
「……承知しました。お送りした後、こちらへ戻り……」
「そのまま帰宅してくれ。数日間は繁忙になるはずだ。君に負担がかかるはずだ。今日は休んでくれ」
「……いえ、残ります」
「悪い子になれ。どうやってサボって立ち回わるのかが大事だぞ?」
冗談半分、本気半分だった。俺のことを帰宅させるための口実なのだろう。桂川さんから気遣われたが、方向が同じなのでと言い、一緒にオフィスを出た。
オフィスでは終業時間を迎えた。黒崎、早瀬、そのほかの管理職が、別室で桂川弁護士と打ち合わせを行っている。その間、黒崎製菓としての動きがあった。事件を受けての謝罪コメントが、ニュースで流れた。営業企画部の写真だとと知られているようで、苦情の匿名話が掛かっている。この時間からは自動音声で対応する。広報部が担当になる。販促チームとしては、穴が開いた分の業務を進めている。
「……就業規則に定めてあります。起訴休職では、給料の支払いが。……いえ」
橋本室長が電話で話している相手は、白澤の両親だ。上司が打ち合わせ中のため、代わりに対応している。
やっと落ち着いたオフィスの中、ミーティングルームのドアが開いた。橋本室長の代わりに、黒崎へ用件を伝えに行った。
「白澤さんのご両親から電話が入っています。橋本室長が応対中です」
「分かった。忙しいところをすまないが、用事をお願いしたい」
「はい。どのような……」
黒崎が桂川弁護士と並んで立っている。打ち解けた様子だ。その光景に驚いたが、顔に出すわけにはいかない。初対面の相手なら、黒崎の迫力に押されるものだ。しかし彼女はそんな素振りはない。打ち合わせ中に打ち解けるか、慣れたのか?黒崎と桂川弁護士が話し始めた。
「桂川さん。今回のケースは、当社としては……」
「わたくしは反対の意見です」
「弁護士としてでしょうか?私情ではありませんか?」
「いいえ。あくまでも弁護士としての意見です」
「私情ではいかがですか?この件ならば、黒崎製菓としての……」
「クライアントの意思に沿います。黒崎常務の私情では?」
「いいえ。役員としての意見です」
「わたくしの意見はこうです」
「分かりました。ありがとうございました。明日、早瀬よりご連絡させていただきます」
黒崎が笑っていた。桂川弁護士も同じように。対等に会話するのはおかしなことではないが、クライアントに嫌われようが眉をひそめられようが、桂川弁護士の意見はブレていないようだ。
(理久に偉そうなことが言えない。ああいう人達に憧れている。かっこ悪いところを見せたくない……)
この企業の中では、俺は嫌われまくっている。その結果、随分と自由になった。それが自分の持ち味だと知った。理久を見ていると、学生時代の自分のようだ。こんな奴になってほしくない。
(そのうち追い越されるだろうな。本当にチキンサンド。フラれるかもしれない……)
そうするわけにはいかない。すっと息を吐き、姿勢をピンと伸ばした。気持ちを切り替えていると、そばの早瀬から声を掛けられた。
「桂川さんを宿泊先のホテルにお送りしてくれ。銀杏ホテルだ。ここからすぐだが、都内は慣れていない」
「……承知しました。お送りした後、こちらへ戻り……」
「そのまま帰宅してくれ。数日間は繁忙になるはずだ。君に負担がかかるはずだ。今日は休んでくれ」
「……いえ、残ります」
「悪い子になれ。どうやってサボって立ち回わるのかが大事だぞ?」
冗談半分、本気半分だった。俺のことを帰宅させるための口実なのだろう。桂川さんから気遣われたが、方向が同じなのでと言い、一緒にオフィスを出た。
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