青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 家を出た。これから向かうのは、お義父さんの家だ。一貴さんと二葉が同居するようになり、すっかり賑やかになった。二葉は妹とはいっても、俺達は本人の希望通り、なるべく男扱いをしている。そして、晴海さんが家の花の交換をしながら、二人の喧嘩を止めているのは、お馴染みの光景になった。

 黒崎には8人のお兄さんがいる。一番上の拓海さんは亡くなっており、他のお兄さんは黒崎家とは距離を置いている人ばかりで、法事でしか会っていない。

 TDDのステージドクターの6番目のお兄さんの山岸聖河やまぎしせいがさんは別だ。交流が生まれている。そして、黒崎のお母さんの再婚先で生まれた朝陽も遊びに来る。その時は、とても賑やかになる。

 お義父さんの実子は、拓海さんと晴海さん、黒崎と二葉の4人だ。他のお兄さんたちは、それぞれお母さんが違うし、拓海さんと晴海さんのお母さんである妻がいながら、お義父さんが付き合った恋人の子供だ。息子全員がお義父さんの実子かと思っていたが、そうではないことを知った。息子の居る人と恋人同士になり、いずれは黒崎家の養子にと考えていたそうだ。

 ここにいる一貴さんもその一人だ。しかし、俺は実子ではないかと思っている。お義父さんは人のことを言えないのだが、一貴さんがお腹に出来た時に、お母さんにはお義父さんと同時進行で付き合っている人がいて、どちらがお父さんなのか分からないそうだ。だから、一貴さんの戸籍の父の名の欄は空欄になっている。それが一貴さんを傷つけている。しかし、黒崎家の息子として、たまに訪ねてくるお義父さんと話をして、教育されていたようだ。一貴さんのお母さんは、お義父さんの子だと言い張り、認知してくれないのを恨んでいるそうだ。

 森のような敷地の中を奥に進んで行くと、お義父さんの家がある。もう寒くなったから、リビングのテラス窓は閉じられている。でも、そこに居そうだと思った。そこの窓からは、今年設置したばかりの小さな噴水がある。今日も水しぶきを上げて、キラキラと輝いている。そばには大きな池もある。転ぶといけないから、近くには行かないようにと黒崎から言われている。しかし、今日は一貴さんと一緒だから、そばに行って、噴水の水に触った。けっこう冷たい。秋になったのがよく分かる。

「夏樹君。そろそろ行こう」
「うん。こういうことは早く終わらせたいよね」

 一貴さんが玄関のドアを開いた。手にはカメラを持っている。すると、山崎さんがやって来て、迎え入れてくれた。お義父さんはリビングに居るそうだ。

「お義父さーーん」
「ああ。夏樹。来たのか。一貴も。出かけていたのか?朝食にいなかった」
「写真を撮りに行っていました。あの……」
「どうしたんだ?」

 一貴さんが言いづらそうにした。俺が背中を軽く叩くと、カメラを落としてしまったのだと打ち明けた。お義父さんは怒っていなくて、カメラを見ていた。
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