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13時。
クリニックと薬局から帰った後、コンビニで買ってきたサンドイッチを一枚だけ食べて、薬を飲んで寝た。一時間少しの睡眠でも、随分と身体が楽になった気がする。痛み止めが効いていて、喉が楽だ。目を覚ますと、黒崎がそばにいた。ベッドの端に座り、俺のことを見ていた。
「俺、寝ていたね」
「ああ。よく寝ていた。同級生には電話してある」
「うん。昼ご飯はどうする?お腹空いただろ?コンビニで買ってきたやつだけじゃ、お腹が張らないんじゃない?」
「うな重とカツサンドが到着した。伊吹君からの差し入れだ」
「そっか。聡太郎君経由で知ったんだね」
伊吹と聡太郎はパートナー同士だ。検診に付いていったのかもしれない。中山クロウとして久弥とコンビを組んで子守唄でデビューし、あちこちのテレビ番組で見かけるようになった。実家の両親は恥ずかしがっている。図々しさを隠すことなく、トークを繰り広げているからだ。その時は、TDDのナツキの兄だと名乗っているし、パートナーが新しいバンドのギタリストになることも話している。おかげで会社はうまくいっているそうだ。
「伊吹お兄ちゃん。もう帰ったの?」
「ああ。アンが吠えるからだ」
「あれ?打ち解けてなかったっけ?」
「冗談だ。アンに犬用のおやつを買ってきてくれた。吠えなかったぞ」
「うへへ。俺と似ているね。スイーツがあったら平気だなんて」
伊吹は動物好きなのに、どういうわけか、アンに吠えられる。一貴さんの飼っているフェレットのユリウスにも警戒されている。実家にいる犬のレモンは伊吹のことが好きだ。何が違うのだろう。
さっそく伊吹にラインを送ろうとして、黒崎から止められた。
「夜にしろ。分かってくれている。ラインは良いからと言っていた」
「でも。悠人からも来ているからさ。返信したいよ。えーーい。返信。お兄ちゃんにもスタンプを送信っと」
「全く……」
「言うことを聞かないって?え?山崎さんがおかゆを作ってくれたの?」
「ああ、ついさっき、届けてくれた」
「悪いなあ。山崎さんのおかゆって、美味しいんだよねえ。具が凝っててさ~。もちろん胃にも優しくてさ」
「もう少し寝ておくか?」
「起きるよ。夜、眠れなくなりそう」
そう言いながら起き上がると、身体がダルかった。朝はこんなに思わなかったのに。両腕を上に上げてのびをしても変わらない。昨日のリハーサルの疲れだろうか。楽しかったのに。高宮さんからはOKをもらえた。
「黒崎さん。寝ても疲れが取れない事ってある?」
「それはある。お前は若いから、滅多にないんだろう」
「そうだよね。あんたはもうすぐで38歳だもん。そうなるよね?いたっ」
頬をつねられた。結構痛かったから、黒崎は本気だったようだ。これでも病人だ。大目に見てもらいたい。
「なんだよ~」
「お前も疲れを出しているだろう。熱を出していたはずだ」
「もうなくなってきたよ」
「油断は出来ない。食べたら寝ていろ」
「うん」
額に手を当てられた。そんなに出ていないようだ。身体が強くなってきたことで自信に繋がっている。いつまでもボーカルでいられるかも知れないと思った。そして、ふと、右側の奥歯の辺りが気になった。親知らずが埋まっている場所だ。俺も生えてきているかも知れないと思った。
「あーーーん」
「どうしたんだ?」
「おやひやずがはえているひゃもしれなくって。大丈夫だったよ」
「もう取ったらどうだ?」
「怖いんだよ。先生はもう少しこのままでもいいっって」
「そう言っていたな。高校生の時はどうだったんだ?」
「抜いた後、そんなに痛くなかったよ。若かったからかな?」
「今でも若いだろうが」
「うへへ」
黒崎がベッドに座った。リラックスした格好をしている。スーツ姿をしていても、今の格好でも、雰囲気は同じだ。ピシッとしている。しかし、俺に向けている視線は優しい。そっと頬に触れられた。胸が痛くなるほどに、そっとした力だ。
クリニックと薬局から帰った後、コンビニで買ってきたサンドイッチを一枚だけ食べて、薬を飲んで寝た。一時間少しの睡眠でも、随分と身体が楽になった気がする。痛み止めが効いていて、喉が楽だ。目を覚ますと、黒崎がそばにいた。ベッドの端に座り、俺のことを見ていた。
「俺、寝ていたね」
「ああ。よく寝ていた。同級生には電話してある」
「うん。昼ご飯はどうする?お腹空いただろ?コンビニで買ってきたやつだけじゃ、お腹が張らないんじゃない?」
「うな重とカツサンドが到着した。伊吹君からの差し入れだ」
「そっか。聡太郎君経由で知ったんだね」
伊吹と聡太郎はパートナー同士だ。検診に付いていったのかもしれない。中山クロウとして久弥とコンビを組んで子守唄でデビューし、あちこちのテレビ番組で見かけるようになった。実家の両親は恥ずかしがっている。図々しさを隠すことなく、トークを繰り広げているからだ。その時は、TDDのナツキの兄だと名乗っているし、パートナーが新しいバンドのギタリストになることも話している。おかげで会社はうまくいっているそうだ。
「伊吹お兄ちゃん。もう帰ったの?」
「ああ。アンが吠えるからだ」
「あれ?打ち解けてなかったっけ?」
「冗談だ。アンに犬用のおやつを買ってきてくれた。吠えなかったぞ」
「うへへ。俺と似ているね。スイーツがあったら平気だなんて」
伊吹は動物好きなのに、どういうわけか、アンに吠えられる。一貴さんの飼っているフェレットのユリウスにも警戒されている。実家にいる犬のレモンは伊吹のことが好きだ。何が違うのだろう。
さっそく伊吹にラインを送ろうとして、黒崎から止められた。
「夜にしろ。分かってくれている。ラインは良いからと言っていた」
「でも。悠人からも来ているからさ。返信したいよ。えーーい。返信。お兄ちゃんにもスタンプを送信っと」
「全く……」
「言うことを聞かないって?え?山崎さんがおかゆを作ってくれたの?」
「ああ、ついさっき、届けてくれた」
「悪いなあ。山崎さんのおかゆって、美味しいんだよねえ。具が凝っててさ~。もちろん胃にも優しくてさ」
「もう少し寝ておくか?」
「起きるよ。夜、眠れなくなりそう」
そう言いながら起き上がると、身体がダルかった。朝はこんなに思わなかったのに。両腕を上に上げてのびをしても変わらない。昨日のリハーサルの疲れだろうか。楽しかったのに。高宮さんからはOKをもらえた。
「黒崎さん。寝ても疲れが取れない事ってある?」
「それはある。お前は若いから、滅多にないんだろう」
「そうだよね。あんたはもうすぐで38歳だもん。そうなるよね?いたっ」
頬をつねられた。結構痛かったから、黒崎は本気だったようだ。これでも病人だ。大目に見てもらいたい。
「なんだよ~」
「お前も疲れを出しているだろう。熱を出していたはずだ」
「もうなくなってきたよ」
「油断は出来ない。食べたら寝ていろ」
「うん」
額に手を当てられた。そんなに出ていないようだ。身体が強くなってきたことで自信に繋がっている。いつまでもボーカルでいられるかも知れないと思った。そして、ふと、右側の奥歯の辺りが気になった。親知らずが埋まっている場所だ。俺も生えてきているかも知れないと思った。
「あーーーん」
「どうしたんだ?」
「おやひやずがはえているひゃもしれなくって。大丈夫だったよ」
「もう取ったらどうだ?」
「怖いんだよ。先生はもう少しこのままでもいいっって」
「そう言っていたな。高校生の時はどうだったんだ?」
「抜いた後、そんなに痛くなかったよ。若かったからかな?」
「今でも若いだろうが」
「うへへ」
黒崎がベッドに座った。リラックスした格好をしている。スーツ姿をしていても、今の格好でも、雰囲気は同じだ。ピシッとしている。しかし、俺に向けている視線は優しい。そっと頬に触れられた。胸が痛くなるほどに、そっとした力だ。
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