青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 南波と北添を2人だけにしてしまうのを気にしたが、枝川を残させて、オフィスに戻らせた。また小競り合いが続きそうだと、枝川が俺の顔を見ながらため息をつき、そういうことを言い出した。南波に恋人ができるまでかと聞くと、出来ても、モテるのには変わりないと、枝川が言った。

「南波はそんなにモテるのか?」
「ええ。高嶺の花です。桜木君が退職した後、彼に注目が集まりました。優しい子ですからね。彼の声が聞きたくて、吸い寄せられるようにして集まる男性社員が何人かいます」
「隣は安岡さんだったか」
「はい。女性社員で固めています。え?変えるんですか?」
「男の中に入れてやれ」
「それですと、また喧嘩が起きます……」
「女性ばかりの中じゃ、南波が気を遣うだろう」
「副社長。いつからそんなに優しくなったんですか?平田ーー、お前、良かったなーー」

 枝川がソファーに座ったままで平田に声をかけた。彼は今、同じ部屋にいる。ここで聞いたことは漏らしてはならないため、張り詰めた空気をまとっている。それを枝川が“イジっている”。枝川も平田とコンビを組んでムードメーカーをやっていた。その平田がいなくなり、営業企画部は静まりかえっている様子だ。そして、枝川が俺に向き直った。

「山下はどうなりますか?」
「異動を提案しようと思っている。ちょうど、今回、10人単位で動かす人事異動があるから、それに混ぜる形を取ろうかと思っている」
「あの先日の資料室で……」
「その社員の配置転換も同時にすることにした」
「山下のことは遠くにしないでください。南波のことが好きで、勢い余ったんだと思います。まだ25歳です。やり直すチャンスをください」
「ああ。部内での異動になるはずだ」
「よかったです」
「部長の意見も聞く。方針が変わるかも知れない」
「はあ……」

 久しぶりに枝川のため息を聞いた。山下のことを庇っている。まだ年が若く、今回のようなことは二度と起こさないはずだと、枝川が言った。山下も南波達と同様に真面目な社員だ。さて、異動先をどこにするかと考えた。課長職以上を集める必要がある。さっそく、平田に声をかけた。

「平田。営業企画部の課長職以上を集める準備をしてくれ。今日の11時だ」
「はい!」

 平田が秘書室に戻った。残ったのは枝川だ。山下は9時半に、ここに呼んである。もう一度、枝川には足を運んでもらうことになる。山下を伴う必要があるからだ。まさか山下が退職すると言い出すだろうかと問いかけると、それはあるかも知れませんと枝川が答えた。今頃、悶々としているだろう。彼の性格を考えて想像した。後悔しているといいがと思いながら、山下を呼びに行っている枝川の後ろ姿を見送った。
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