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午前9時半。
予定時刻通りに、山下が枝川に伴われて副社長室に入ってきた。ソファーに座らせて、先ほどの南波達と同様に、何があったのかを聞いた。話に食い違いはなかった。彼は先に手を出した方だ。表情は暗い。雷を落とされると分かっているのだろう。まずは騒動を叱りつけた。
「山下君。謝罪は済んでいると聞いている。何か言っておきたいことはあるのか?」
「いえ、ありません」
「後悔しているか?」
「はい……」
「ん?」
「あちゃーーー。聞こえないぞ……」
枝川が小声で山下に、言い直せと言った。俺には後悔しているように感じるのだが、意地を張っているのか。それとも、消えてなくなりたいほど恥ずかしいということか。南波と北添からは離すことになる。ふと、秘書室はどうかと考えた。同じフロアにオフィスがあり、そう遠くない異動先だ。
「あの……、後悔しています。あの時は必死でした」
「それが分かっていれば良い。君は異動したいか?今回の件は社内で広まっている」
「異動したいです。そうなるんですよね?先に手を出したのは僕ですから」
「そうだな。南波君達と離れて、頭を冷やすといい」
「あの、僕、今のマンションに引っ越したばかりなんです。また引っ越すのは……。こんなことをしておいて、言うのはおかしいと思っています」
「異動先は社内で考えている」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
枝川からも礼を言われた。この際だから、何か他にもあれば言ったらどうだという事も山下に促している姿を見て、随分と面倒見の良い課長だと感じた。しかし、山下からは言葉はなかった。
南波のことは本気で好きだったんだろう。今回のことで、距離が離れてしまうのではないか。南波は北添との方が気が合っている気がしている。じれていたのだろう。また騒動が起きかねない。今回で終わりならいいのだが。南波には枝川からはっきりと伝えている。君はモテると。
「失礼します」
「失礼します」
「ああ、落ち着いて業務に励んでくれ」
部屋を出て行く二人に声をかけた。残ったのは自分一人だ。すると、平田が報告に来た。11時からのこの件の会議の出席者リストを持って来た。全員出席だ。対応が早く、驚いた。もう新しい業務に慣れたようだ。
「平田。早いじゃないか」
「はい!ありがとうございます!」
「そんなに固くなるな。もっとダラけていただろう」
「失礼しました。副社長にお手紙が届いています。開封はしていません!」
「ああ、ありがとう」
差出人はミラノサーネ・レイだ。幼馴染みでデザイナーをやっている桑園怜の会社だ。プライベートな手紙なら家に届く。この間も、怜が作ったストールが届いていた。夏樹が使うためだ。さっそく開封すると、展示会の招待状が入っていた。夏樹を同伴して来てくれということだ。さっそく、パソコンでスケジュール帳を開いた。予定は空いている。
「平田。展示会の招待を受けた。予定に入れておいてくれ」
「はい!かしこまりました!」
平田が隣の部屋に戻っていった。仕事で使っているスケジュール管理のファイルは、秘書だった早瀬が作ったものだ。前職の黒崎ホールディングス時代から使っており、馴染んでいるため、変える気が起きない。分かりやすく、見やすい。その早瀬は専務取締役として、役員室にいる。常に顔を見て仕事をしていた。今は会議でしか社内で会うことがない。夏樹が俺のことをからかっていた。寂しいくせにと。
するとその時だ。その早瀬が副社長室のドアをノックした。一人の男性社員を伴っている。顔が曇っている。しかし、早瀬は笑っていた。
予定時刻通りに、山下が枝川に伴われて副社長室に入ってきた。ソファーに座らせて、先ほどの南波達と同様に、何があったのかを聞いた。話に食い違いはなかった。彼は先に手を出した方だ。表情は暗い。雷を落とされると分かっているのだろう。まずは騒動を叱りつけた。
「山下君。謝罪は済んでいると聞いている。何か言っておきたいことはあるのか?」
「いえ、ありません」
「後悔しているか?」
「はい……」
「ん?」
「あちゃーーー。聞こえないぞ……」
枝川が小声で山下に、言い直せと言った。俺には後悔しているように感じるのだが、意地を張っているのか。それとも、消えてなくなりたいほど恥ずかしいということか。南波と北添からは離すことになる。ふと、秘書室はどうかと考えた。同じフロアにオフィスがあり、そう遠くない異動先だ。
「あの……、後悔しています。あの時は必死でした」
「それが分かっていれば良い。君は異動したいか?今回の件は社内で広まっている」
「異動したいです。そうなるんですよね?先に手を出したのは僕ですから」
「そうだな。南波君達と離れて、頭を冷やすといい」
「あの、僕、今のマンションに引っ越したばかりなんです。また引っ越すのは……。こんなことをしておいて、言うのはおかしいと思っています」
「異動先は社内で考えている」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
枝川からも礼を言われた。この際だから、何か他にもあれば言ったらどうだという事も山下に促している姿を見て、随分と面倒見の良い課長だと感じた。しかし、山下からは言葉はなかった。
南波のことは本気で好きだったんだろう。今回のことで、距離が離れてしまうのではないか。南波は北添との方が気が合っている気がしている。じれていたのだろう。また騒動が起きかねない。今回で終わりならいいのだが。南波には枝川からはっきりと伝えている。君はモテると。
「失礼します」
「失礼します」
「ああ、落ち着いて業務に励んでくれ」
部屋を出て行く二人に声をかけた。残ったのは自分一人だ。すると、平田が報告に来た。11時からのこの件の会議の出席者リストを持って来た。全員出席だ。対応が早く、驚いた。もう新しい業務に慣れたようだ。
「平田。早いじゃないか」
「はい!ありがとうございます!」
「そんなに固くなるな。もっとダラけていただろう」
「失礼しました。副社長にお手紙が届いています。開封はしていません!」
「ああ、ありがとう」
差出人はミラノサーネ・レイだ。幼馴染みでデザイナーをやっている桑園怜の会社だ。プライベートな手紙なら家に届く。この間も、怜が作ったストールが届いていた。夏樹が使うためだ。さっそく開封すると、展示会の招待状が入っていた。夏樹を同伴して来てくれということだ。さっそく、パソコンでスケジュール帳を開いた。予定は空いている。
「平田。展示会の招待を受けた。予定に入れておいてくれ」
「はい!かしこまりました!」
平田が隣の部屋に戻っていった。仕事で使っているスケジュール管理のファイルは、秘書だった早瀬が作ったものだ。前職の黒崎ホールディングス時代から使っており、馴染んでいるため、変える気が起きない。分かりやすく、見やすい。その早瀬は専務取締役として、役員室にいる。常に顔を見て仕事をしていた。今は会議でしか社内で会うことがない。夏樹が俺のことをからかっていた。寂しいくせにと。
するとその時だ。その早瀬が副社長室のドアをノックした。一人の男性社員を伴っている。顔が曇っている。しかし、早瀬は笑っていた。
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