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16時。
予定通りの時間に、中野課長が山本を伴って副社長室に入り、さっそく話を始めた。枝川から聞いている話をすると、山本が頷いた。悔しくなって、谷川を突き飛ばしたという部分だ。谷川は椅子から落ちて、床に転がった。大けがに繋がることだ。
「山本君。分かっているか?大怪我をしていたかも知れない」
「はい」
「床に転がった谷川君に馬乗りになりそうなところを、周りが止めたそうだな」
「それは覚えていません。夢中になっていて……」
「殴りかかった部分は覚えているか?」
「覚えています」
「谷川君がよけられたから、怪我はしなかった。日頃から言い合いになっていたのか?」
「いえ。南波君に話しかけたら、谷川君に邪魔をされている気がしていました。勘違いかも知れません」
「谷川君がそれを謝っていたじゃないか。勘違いじゃないぞ」
山本は落ち着いて話をしている。落ち着かないのは中野課長の方だ。言おうか言うまいか、口の端が動いている。この際だ。吐き出してもらいたい。
「中野課長。報告はあるか?」
「山本君の南波君への話しかけ方のことですが。卑猥なことを言ったことが数回あるそうです。南波君の近くにいる社員から声が上がりました。山本君に確認しました。冗談で言ったことがあるそうです」
「そうなのか。山本君。それはやめておいてくれ」
「はい」
「プライベートでは南波君と連絡を取ったことはあるのか?」
「あります。その時は何も言っていません。食事の誘いだけです」
「頻繁に連絡していたのか?」
「いいえ。諦めていたので」
「交際を申し込んだのか?」
「いえ。どうせ俺なんか相手にされないと思って、嫌がらせのつもりで冗談を言いました」
「副社長……」
中野課長が間に入ってきた。南波の周りには仕事ができる社員で固められていると思い、日頃から悔しい思いをしていたそうだ。その周りとは、南波に想いを寄せるライバルの男性社員達のことだ。
「よくライバルだと分かったな?」
「何となくです。南波君に話しかけているから、そうなのかと思っていました」
「君の冗談は嫌がらせの類いだ。君も怪我がなくて良かった。仕事に不満は?」
「僕は何をやってもダメで、周りについていけなくて、出世も出来そうになくて、ムードメーカーにもなれない」
「今の部署についていけないのか?」
「半分ぐらいは出来ていると思います」
「中野課長。どうなんだ?」
「山本君は丁寧に仕事をやってくれています。ミスはありません」
「だそうだ。君には反省してもらいたい。もっと落ち着ける場所を探す」
「異動っていうことですか?」
「それはまだ分からない。一人暮らしか?」
「はい。最近、実家から出たばかりです」
「引っ越しをしたばかりということか。分かった。君のことで会議を開く。結果は伝える。それまでは今の部署で業務を行ってくれ」
「はい」
「中野課長もありがとう」
「いえ」
中野課長には残ってもらいたいが、山本のことを一人でオフィスに返すのは気がかりだ。そこへ、平田が入ってきた。会議記録を机の上に置くように頼んであったからだ。そこで、山本の隣の席の社員を呼ぶように指示を出した。彼を迎えに来てもらうためだ。中野課長には残ってもらう。
少し経って、3人の社員が山本を迎えに来た。田所常務もいた。山本のことを任せた後、中野課長と向かい合ってソファーに座り、山本の人事記録を確認した。日頃の業務のことも話しながら。
予定通りの時間に、中野課長が山本を伴って副社長室に入り、さっそく話を始めた。枝川から聞いている話をすると、山本が頷いた。悔しくなって、谷川を突き飛ばしたという部分だ。谷川は椅子から落ちて、床に転がった。大けがに繋がることだ。
「山本君。分かっているか?大怪我をしていたかも知れない」
「はい」
「床に転がった谷川君に馬乗りになりそうなところを、周りが止めたそうだな」
「それは覚えていません。夢中になっていて……」
「殴りかかった部分は覚えているか?」
「覚えています」
「谷川君がよけられたから、怪我はしなかった。日頃から言い合いになっていたのか?」
「いえ。南波君に話しかけたら、谷川君に邪魔をされている気がしていました。勘違いかも知れません」
「谷川君がそれを謝っていたじゃないか。勘違いじゃないぞ」
山本は落ち着いて話をしている。落ち着かないのは中野課長の方だ。言おうか言うまいか、口の端が動いている。この際だ。吐き出してもらいたい。
「中野課長。報告はあるか?」
「山本君の南波君への話しかけ方のことですが。卑猥なことを言ったことが数回あるそうです。南波君の近くにいる社員から声が上がりました。山本君に確認しました。冗談で言ったことがあるそうです」
「そうなのか。山本君。それはやめておいてくれ」
「はい」
「プライベートでは南波君と連絡を取ったことはあるのか?」
「あります。その時は何も言っていません。食事の誘いだけです」
「頻繁に連絡していたのか?」
「いいえ。諦めていたので」
「交際を申し込んだのか?」
「いえ。どうせ俺なんか相手にされないと思って、嫌がらせのつもりで冗談を言いました」
「副社長……」
中野課長が間に入ってきた。南波の周りには仕事ができる社員で固められていると思い、日頃から悔しい思いをしていたそうだ。その周りとは、南波に想いを寄せるライバルの男性社員達のことだ。
「よくライバルだと分かったな?」
「何となくです。南波君に話しかけているから、そうなのかと思っていました」
「君の冗談は嫌がらせの類いだ。君も怪我がなくて良かった。仕事に不満は?」
「僕は何をやってもダメで、周りについていけなくて、出世も出来そうになくて、ムードメーカーにもなれない」
「今の部署についていけないのか?」
「半分ぐらいは出来ていると思います」
「中野課長。どうなんだ?」
「山本君は丁寧に仕事をやってくれています。ミスはありません」
「だそうだ。君には反省してもらいたい。もっと落ち着ける場所を探す」
「異動っていうことですか?」
「それはまだ分からない。一人暮らしか?」
「はい。最近、実家から出たばかりです」
「引っ越しをしたばかりということか。分かった。君のことで会議を開く。結果は伝える。それまでは今の部署で業務を行ってくれ」
「はい」
「中野課長もありがとう」
「いえ」
中野課長には残ってもらいたいが、山本のことを一人でオフィスに返すのは気がかりだ。そこへ、平田が入ってきた。会議記録を机の上に置くように頼んであったからだ。そこで、山本の隣の席の社員を呼ぶように指示を出した。彼を迎えに来てもらうためだ。中野課長には残ってもらう。
少し経って、3人の社員が山本を迎えに来た。田所常務もいた。山本のことを任せた後、中野課長と向かい合ってソファーに座り、山本の人事記録を確認した。日頃の業務のことも話しながら。
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