青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 夏樹からの視線が痛い。早瀬は悠人と話をしている。助けてもらえないようだ。急に今日のことが面白い話のように感じた。当人達にとっても、会社にとっても、早く元通りのオフィスに戻したいという願いがあるというのに。

「すまない。うちの会社が君にフラれた恨みからだ」
「ということは、恋愛トラブルですか?」
「その通りだ。南波をめぐって、4人が喧嘩騒動を起こした。谷川は巻き込まれた形だ」
「え?谷川君が?」

 桜木が驚いている。大人しい彼がという意味だ。南波をめぐってという部分には驚いていない様子だ。

「南波のことは驚かないんだな?」
「そうだろうなって思います。でも、彼はマイペースだから、誰も相手がいらないって言っていました。今は動画配信が趣味になっているし」
「ああ。早瀬から聞いた。……ん?俺にも言ったって?」
「南波から相談されていませんでしたか?」
「そうだったか。すまない。忘れていた」
「ひどいなあーーーー。見て欲しかったんですよ!」

 桜木が声を上げた。南波とは食事に行く仲だ。桜木は見ているのだろう。

「君は見ているのか?」
「もちろんですよ。……夏樹君。副社長はオフィスでは君の写真ばかり見ているんだ。それで部下からの報告まで忘れている状況だ。動画のことを教えてあげる」
「うん」

 夏樹が笑顔で返事をした。桜木がスマホを取り出して、その動画配信サイトを表示させた。それを夏樹がじっと見つめている。すると、早瀬も来て、見始めた。早瀬と桜木は親しい。悠人と付き合う前まで、桜木のことを追いかけていた。それは悠人も知っている。悠人は桜木を憧れの先輩だと言い、慕っている。すると、悠人が言った。南波の動画は人気があるのだと。見ていたのか。

「“みなみとやま”。蜂が飛んできて、南波さんが逃げていく姿とか、缶詰の講釈とかが面白いですよ。視聴者のコメントも面白くて……」
「黒崎さん!ちゃんと覚えてて、教えてよ~」

 夏樹から叱られてしまった。するとその時だ。俺達の近くを車が通った。長谷部さんと大和と琉芯が乗っている。俺達に手を振った。これから送迎で帰るのだろう。

「お疲れ様!おやすみなさい」
「おやすみなさい」

 それぞれが挨拶をして、車が出て行った。そこで、俺達も帰ることにした。早瀬の車には悠人が乗り、俺の車には夏樹と桜木が乗った。夏樹が久しぶりに桜木と帰ることができて嬉しそうにしている。

「だってさ~。聡太郎君が帰る時って、伊吹お兄ちゃんがいるじゃん。ゆっくり話せないもん」
「ははは。暑苦しい兄貴だもんね。久弥さんプロデュースで、楽曲を出す計画中だよ」
「マジで!?またテレビに出るんだね。万理が恥ずかしがっていてさ~」
「お前もそうだろう」
「うん。でも、出させてもらえるのはありがたいよ」

 伊吹と久弥がコラボして楽曲を出した。その宣伝でテレビに出た後、伊吹のことを面白がったテレビ局から出演オファーがあり、断ることなく、伊吹はテレビに出た。もちろん、自身が経営している、株式会社ブロッコリーの名前を出した上でだ。
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