113 / 938
6-15
しおりを挟む
黒崎と売り上げの話をしていると、自分も開発部の社員なのに、どこか遠くの存在のような気がしたり、身近な存在だという気がしたりしていることに、最近気づいた。開発部の仕事は緊張の連続であり、依頼されたことをやり遂げることに必死で、色々と周りのことを考える余裕がない。それは歌の仕事でも同じであり、成し遂げた後は身体の力が抜けて、座り込んでいることも珍しくない。
黒崎が黒崎が黒崎が俺に負担がかかっているのではないかと、新たな心配をかけている。開発部の仕事は俺がステージに立てなくなった時の居場所にするためだった。最近になり、歌の仕事が一気に増えたことで、黒崎製菓を辞めるか?という話も出てしまった。
ありがたいことに、多くの出番でスケジュールは埋め尽くされている。レコード会社も芸能事務所も、こんなに売れるとは思わなかったそうだ。楽曲提供者の久弥でさえも、自分より売れているじゃないか、ショックだと冗談を飛ばしていた。
すると、以心伝心だろうか。黒崎が俺の頭をくしゃくしゃと撫でて言った。
「夏樹。開発部の仕事は続けるのか?辞めても良いんだぞ。二足のわらじ状態だ。お前は歌手だ。他に物にはなれないだろう。お前を見ていて、よく分かった」
「ありがとう。でも、今の仕事は続けさせてもらうよ。レポートを書くのは好きなんだ。新製品にかかわれる事って、いい経験になるよ。インタビューでも、その話が出るんだ。ウケているよ。アルバムを出して、ディスレクトサイドゼロのツアーが始まった後でも続けるよ。俺が留守の間は、お義父さんの家にいてもらうけど……」
「ああ。お前のように、アンを連れて食事を食べに行って来る。お前が俺に一人で外食をさせないからな」
「それはそうだよ。俺と一緒じゃないとダメだよ。お昼ご飯は別だよ~。悠人だって、そうしているんだ。寂しいからさ。それにあんたはモテるから、心配なんだよ」
「何も心配いらない。もうモテていない。何かの幻想だったんだろう……」
黒崎が笑っている。モテていたのは32歳までだったと言っている。それ以降は、社交辞令だということだ。本当だろうか。黒崎の肩を揺すった。吐けよと言いながら。
「黒崎さんっ。何かあるだろ。何もないってことはないと思うんだ。俺は何もないよ。いつも誰かがそばにいるし、忙しいし、怒られてばっかりだし……」
「お前のことを怒るのは高宮さんだろう。歌が上達したと褒めてもらえたんじゃなかったのか?」
「うん!褒めてもらえたよ。朝の5時から叩き起こして、レコーディングに付き合ってもらったんだ。あんたが夜中から朝までのレコーディングはやめてくれって言うからさ。俺も悠人も同じ意見だし、久弥だってそうなんだ。早朝のラジオ体操で、疲れた身体を癒やすそうだよ。久弥は……。朝陽を浴びるのはいいことなんだ。でもなあ。大和と聡太郎君が夜型なんだよ。折り合いを付けて、たまに夜型にしたレコーディングにするかって話が出ているんだ」
「そっちの方が集中できるんだろう。気持ちは分からないことはない」
「あんたは夜、ピアノを弾きたがるもんねえ。俺に付き合って、すっかり朝が好きになったみたいだけど、元々は夜行性だよね?夜になったら元気が出るタイプだね」
「何か想像しているだろう?」
「かつてのデート相手との食事の光景を想像したんだ。やめようよ、喧嘩をしたくないよ~」
黒崎と話していると、どうしてもその話になってしまう。俺が口を閉じて、キッチンカウンターの置いてあるサンドイッチを取ってきた。俺の昼ご飯だ。俺がしっかり食べているのを見て、黒崎が安心しているようだ。
ちゃんと完食した後、後片付けをして、寝ているアンの身体を撫でた。こうすると癒やされるからだ。そして、悠人から贈られてきた楽曲を聴いた後、パーティーは始まる夕方まで、歌詞作りをすることにした。
黒崎が黒崎が黒崎が俺に負担がかかっているのではないかと、新たな心配をかけている。開発部の仕事は俺がステージに立てなくなった時の居場所にするためだった。最近になり、歌の仕事が一気に増えたことで、黒崎製菓を辞めるか?という話も出てしまった。
ありがたいことに、多くの出番でスケジュールは埋め尽くされている。レコード会社も芸能事務所も、こんなに売れるとは思わなかったそうだ。楽曲提供者の久弥でさえも、自分より売れているじゃないか、ショックだと冗談を飛ばしていた。
すると、以心伝心だろうか。黒崎が俺の頭をくしゃくしゃと撫でて言った。
「夏樹。開発部の仕事は続けるのか?辞めても良いんだぞ。二足のわらじ状態だ。お前は歌手だ。他に物にはなれないだろう。お前を見ていて、よく分かった」
「ありがとう。でも、今の仕事は続けさせてもらうよ。レポートを書くのは好きなんだ。新製品にかかわれる事って、いい経験になるよ。インタビューでも、その話が出るんだ。ウケているよ。アルバムを出して、ディスレクトサイドゼロのツアーが始まった後でも続けるよ。俺が留守の間は、お義父さんの家にいてもらうけど……」
「ああ。お前のように、アンを連れて食事を食べに行って来る。お前が俺に一人で外食をさせないからな」
「それはそうだよ。俺と一緒じゃないとダメだよ。お昼ご飯は別だよ~。悠人だって、そうしているんだ。寂しいからさ。それにあんたはモテるから、心配なんだよ」
「何も心配いらない。もうモテていない。何かの幻想だったんだろう……」
黒崎が笑っている。モテていたのは32歳までだったと言っている。それ以降は、社交辞令だということだ。本当だろうか。黒崎の肩を揺すった。吐けよと言いながら。
「黒崎さんっ。何かあるだろ。何もないってことはないと思うんだ。俺は何もないよ。いつも誰かがそばにいるし、忙しいし、怒られてばっかりだし……」
「お前のことを怒るのは高宮さんだろう。歌が上達したと褒めてもらえたんじゃなかったのか?」
「うん!褒めてもらえたよ。朝の5時から叩き起こして、レコーディングに付き合ってもらったんだ。あんたが夜中から朝までのレコーディングはやめてくれって言うからさ。俺も悠人も同じ意見だし、久弥だってそうなんだ。早朝のラジオ体操で、疲れた身体を癒やすそうだよ。久弥は……。朝陽を浴びるのはいいことなんだ。でもなあ。大和と聡太郎君が夜型なんだよ。折り合いを付けて、たまに夜型にしたレコーディングにするかって話が出ているんだ」
「そっちの方が集中できるんだろう。気持ちは分からないことはない」
「あんたは夜、ピアノを弾きたがるもんねえ。俺に付き合って、すっかり朝が好きになったみたいだけど、元々は夜行性だよね?夜になったら元気が出るタイプだね」
「何か想像しているだろう?」
「かつてのデート相手との食事の光景を想像したんだ。やめようよ、喧嘩をしたくないよ~」
黒崎と話していると、どうしてもその話になってしまう。俺が口を閉じて、キッチンカウンターの置いてあるサンドイッチを取ってきた。俺の昼ご飯だ。俺がしっかり食べているのを見て、黒崎が安心しているようだ。
ちゃんと完食した後、後片付けをして、寝ているアンの身体を撫でた。こうすると癒やされるからだ。そして、悠人から贈られてきた楽曲を聴いた後、パーティーは始まる夕方まで、歌詞作りをすることにした。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる