青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
115 / 938

6-17

しおりを挟む
 すると、棚に置いてあるデジタルフォトフレームが視界に入った。この家で撮った写真が次々と表示されている。今日の記念写真もアルバムに入るのだろう。その中には、この家に来たばかりのユリウスの写真があった。まだ小さくて、今の半分のサイズの時だ。 

「懐かしいなあ。ユーリっていう名前にするって、カズ兄さんが言っていたときの写真だよ」 
「今さっき、早瀨専務が着いたよ。悠人君の前でデレデレしていたよ」 
「やっぱりねえ。まだ好きなんだよ。そういう所が引っかかるんだって、藤沢が愚痴っていたんだ。あ、黒崎さん……」 

 部屋のドアがノックされた後、黒崎が入ってきた。俺達の姿がなかったからだ。ユリウスを寝かしつけていたんだと話すと、壁の写真を見て、一瞬だけ驚いた顔をした。まるで本人が立っているかのように見えたのかも知れない。 

「うひゃひゃひゃ。これ、本人が見たら嫌がるかな?」 
「宣伝用のものだろう。持って帰って良いのか。強引なことをしたんだろう」 
「そうかも知れないね。俺達の写真も飾ってくれているよ。お客さん達、もう揃ったかな?」 
「ああ、全員無事に到着した。庭に出るぞ……」 
「はーーい」 

 部屋の電気を消した後、ぎょっとした。藤沢の写真には特殊加工がされていて、ぼんやりと光ったからだ。これは一貴さんがやったことだろう。一瞬、何かと思った。隣にはTDDの写真がある。コーンロウスタイルで髪をアップにした俺が写っている。さすがはスタイリストさん達だ。俺がかっこよく写るように考え出されている。こういう髪型や服装は、全て会議で決められる。事前にカメラテストもするから、何パターンも写真を撮っている。 

「夏樹。今回の髪型はどうするんだ?2パターンで意見が分かれていたんだろう」 
「そうなんだよ。今のままのヘアスタイルにしたいっていうことになったよ。悠人は髪をトゲトゲにするんだ」 
「どれもかっこいいよ。君なら、もっと長いヘアスタイルでも良いんじゃないかな?」 

 二葉が俺の髪の毛に触れた。その意見もあるというと、是非とも伸ばしてくれと言われた。黒崎もそう言っている。2年半前は少し長かった時代があり、よく似合っていたそうだ。 

「でもさーー、お風呂が大変だと思うんだ。久弥が、長いままだと便利なこともあるって教えてくれたけどさ。髪の毛を後ろでまとめたら涼しいぞって。ドライヤーに時間がかかりそうだよ」 
「そうかなーー。今みたいに寝癖が付きにくいんじゃないかな。寝てたの?珍しく」 
「そ、それは……」 

 二葉からのツッコミに、しどろもどろになった。俺は昼寝をすることが滅多になくて、常に何かをしているタイプだ。寝ているときは具合が悪いときだけと言ってもいい。二葉に何をしていたのか話すことはできなくて、うたた寝をしていたんだということにした。 

「2人とも。ユリウスが起きるぞ……」 
「あ、いけない。お兄ちゃん、待ってよーーー。閉めるなよーー」 
「早く来い」 
「黒崎さーーん。俺もまだ部屋の中だよ~」 

 黒崎からドアを閉められそうになり、さっさと部屋から出た。すると、廊下にはこの間の心霊スポット探索のメンバーがいて、ユーリーと一緒に家の中を探索していた。その中には会社の人も居た。その中の女性が俺に声を掛けてくれたから、咄嗟に頭を下げた。すると、彼女が俺の前に来て、キャーッと悲鳴を上げた。

「夏樹君だ~!」
「こんにちは!」 
「こんにちは。かっこいいなあ。今月、コンサートがありますよね!私、3列目の真ん中の席です!」 
「わあーー。手を振ります!」 

 ユーリーから彼女のことを紹介して貰った。今野さんという人だ。出版社ではミュージカルの本を出している部署にいるそうだ。さっそく握手をして、一緒に写真を撮った。黒崎も二葉も笑顔だ。 

「これ、インスタにはアップしない方が良いんですよね?」 
「そうだった……。写真はダメだったんだ。家の中だと、すっかり忘れるんです」 
「そうなのかーー。消しますよ。……いいんですか?」 
「残しておいてください。せっかくなので……」 
「ありがとうございます!やったーー」 

 今野さんが笑った。ユーリーが写真を見て、ステージの写真と同じイメージだと言ってくれた。コンサートを数日後に控え、緊張感が伝わってくるそうだ。 

「よかったーー。家の中だと、だるだるだからさ、俺……。ねえ、黒崎さん……」 
「さあ、庭に出よう。腹が減った」 
「そうだね~。あんたは大食いだから、お腹が空いただろ~」 

 ここから見える窓からは、外が見える。日が傾き始めていて、ライトがつき、昼間のように明るく照らし始めた。バーベキューセットも置かれている。たき火もある。この間、庭でバーベキューをやったら楽しくて、今日もセットを置くことにした。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...