青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 俺のナーバスさが黒崎に影響したのだろうか。そうだったら、ごめんなさいと謝るしか出来ない。アンがいて、安らぎになるだろう。その彼女が寝息を立て始めた。だから俺も横になり、アンの身体を撫でながら、目を閉じた。すると、背中がまるごと温かくなった。黒崎の腕が巻き付いてきたからだ。 

「もう起きたのかよ?」 
「ああ。はっきりと目が覚めた。カーテンを付けて良かったな。寝やすいだろう?」 
「うん。セキュリティーライトって、結構強く光るんだねえ。あんたが増やしたライトのシステムが、うちの近所で導入されたって話、言ったっけ?」 
「ああ。朝の見送りで聞いた。安斎さんのご主人が散歩で出てきていた。物騒なことがあったからだろう」 
「そうそう。別れ話のもつれで、旦那さんが奥さんを刺した事件だよ。うちの近所まで追いかけてきて、刃物を振り回して、見かけた結城さんが警察に通報したんだよ。朝の4時前だもん。まだゴミ出しもしていない時間だからさ。一番早起きの結城さんが見つけたわけだよ。怪我が回復して良かったよねえ」 
「ニュースにはなっていなかったぞ」 
「そうなんだね……。地面に血の跡が付いててさ。雨で薄くなったけど、通る度に、ここかーーって、思うんだ」 
「泥棒も入ったそうだ。その結城さんの家だ」 
「マジで?怪我はないの?」 
「なかったそうだ。奥さんが気がついて声を上げたら、玄関から逃げたそうだ。昨日の話だ」 
「そうなんだね。災難だったねえ。奥さんは合気道を習っているもんね。いつもピシッとしとしているから、かっこいいよ」 
「あの優しい雰囲気の人がな……。お前も習い事を増やすか?卒業した後で良い」 
「そうだね。習いたいよ。伊吹お兄ちゃんが、柔道が良いって言うんだ。マッチョになるらしいよ」 
「それなら習わなくて良い……」 
「なんだよ。自分の好みじゃなくなるってわけ?」 

 黒崎の頬をつねってやった。昨日はリハーサルスタジオで、お弁当とケーキを食べた。お気楽亭というすき焼き店が始めたお弁当のテイクアウトを使って、みんなで食べた。ケーキはうちの近所のカンテールというお店の商品だ。お義父さんが差し入れで、スタッフみんなに買ってきてくれた。 

 ちょうど甘い物が欲しくなる時間帯だったから、みんなが飛びつくようにして食べた。ケーキの箱は何箱もあった。お義父さんが見学していくと思っていたのに、ケーキを置いたら、さっさと帰ってしまった。明日は本番であり、午前中にホールでのリハーサルを見学することになっている。 

 晴海さんと一貴さんも一緒だ。聖河さんはステージドクターとして、ステージ脇に待機してくれる。もちろん、リハーサル中も診察してくれる。俺の身体にはトラブルがなく、悠人も大丈夫だ。久弥は数々のステージをこなしてきているから、ほんの少ししか息の乱れがないそうだ。 

「はあーーー。とうとう明日と明後日が本番だよ~。悠人が味噌汁のコマーシャルの第4弾の撮影に入るんだ。ローザーさんがヘアメイクを担当するから、いつもの顔ぶれのスタッフさんばかりで、緊張していないんだってさ」 
「あの人には不思議な力がある。お前の健康運が、この季節は最悪だと聞いておいて良かった。対策が練られる。いいか?あの野菜を使って料理をしてくれ」 
「ショウガとニンニクだよね?両方とも、金曜日の夜か土曜日に食べる方が良くないかな……。俺達のラッキーフードってやつ。うひゃひゃひゃ。あんたまで占いを信じるなんてねえ……。ううん。ローザーさんの占いは、とにかく当たるって評判だもん。そうだよねえ……」 

 足のつま先で黒崎の肩を押してやった。くすぐったいようで、俺の足首を掴んで噛みついてきたから、バタバタと足を動かしてやった。すると、アンがパタパタと尻尾を振って、枕元に来た。遊びに参加するそうだ。 
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