青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 いくらなんでもそれは俺達の心を踏みにじるというか、宣伝に使うのは良くないのではないかと思った。それに、久弥が最も嫌がる事だ。それを言うと、IKUの強い要望もあるのだと聞かされた。雑誌記事は小さなスペースであり、文章量も少ないという。とにかく、次のバンドへのステップになるからやれということだそうだ。 

「分かる?夏樹君が嫌がる話だよーーーー。でも、俺は引き受けた方が良いと思う。今日来てくれる3人の子は、君と悠人君に会いたがっている子達なんだ。大学で出会ってバンドを組んで、輝いている先輩だからね。今日と明日授業を休んで来てくれる。行事扱いなんだけどね。そういうわけだから、頑張ってね」 
「聡太郎君が引き受けてくれたんだね。俺達のことを。分かった。やるよ。うん。大丈夫!変なところは見せないからね!」 
「そうだよ。強くなろう。こういうことばかりかも知れないけど、バンドは動いているんだ。歌うためだよ。ボーカルを辞めるだなんて言わないでね」 
「うん。俺、ボーカルを続けるよ。じゃあ、今日はホールで合流だね。じゃあまた後で……」 

 電話を終えた後、黒崎の背中を突いてやった。とっくに知っている話だと思ったからだ。以前なら、まずは黒崎が話を聞いて、俺にタイミングを見計らって教えてくれる。しかし、今回はバンドメンバーでカバーされた。前進したということだ。黒崎がそう判断したということだ。お義父さんもそうだろう。俺がきちんと立てるようにしてくれている。 

「アン、黒崎さんに噛みついてやりなよ。俺が守るって言ったくせに、聡太郎君に説得させたんだよ」 

 アンに話しかけると、黒崎が振り向いた。笑ってもいないし、嘆いてもいない。普段通りだ。ただし、アンが口を開けて黒崎の指で遊ぼうとしているから、彼が笑った。俺もだ。 

「アン、俺の指を噛むのか?お前は本当に賢い子だ。言葉を理解しているじゃないか。今日、検診があることも知っているようだ。尻尾が下がっている」 
「そうだね……。なんとか病院好きにならないかな。先生はよく話しかけてくれる人なんだ。大丈夫だって分かっていると思うんだけどね……。そういえば、遠藤さん家のフリージア、病院では大人しいんだって。湿疹が出来ていて、先生が触っても、注射しても、きちんと我慢するんだって。しかも、震えずにいるんだって。まだ小さいのに……」 
「そうか。分かっているんだろう。アンの方も、次は何があるんだろうと恐怖があるのかも知れない。夏樹、お前が診察して貰っているところを見せてみるか?検査にも立ち会わせる」
「そんなことが出来るのかよ?なんだーー、あんたの冗談なのかーー。ビックリした。そういうシステムが出来上がったかと思ったよ。ペット同伴可の診察室っていうやつ」 

 黒崎が笑った。そのうちそういうことも起きるかも知れないと言った。そして、俺の胃の具合はどうかと聞いた。随分と楽になったと答えた。しかし、胃薬を飲んだ方が良さそうだ。時々、胃の中のお茶が喉まで上がってくるときがある。薬を飲めば、すぐに良くなる。 

 そこで、黒崎が俺の胃薬と水を取ってきてくれた。俺が横になったままそれを飲み、ふうっと息をついた。家を出るのは午前10時だ。長谷部さんが迎えに来てくれる。その車には大和と聡太郎が載っている。悠人は味噌汁コマーシャルの衣装合わせがあり、お昼頃、ホールに到着する。その時は事務所の車で送迎されてくる。黒崎と早瀬さんは観客席でリハーサルを見守ることになる。 
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