青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 そのお義父さんは、毎朝6時頃にアンを散歩に誘いに来てくれる。そろそろ来る頃かと、アンが出窓に上がり、外を見始めた。お義父さんが来ると玄関に走って行くから、インターフォンが鳴る前に来たのが分かる。俺が寝ていると心配を掛けそうだ。しかし、そういうところを直せと言われているから、寝転んだままでいることにした。 

「アンーー、お義父さんはまだ来ないよ。こっちにおいでよ~。少し寝ようよ~」 
「連れてきてやる。アン、すまないが、こっちに来てくれ」 

 黒崎の電話を置いた。そして、アンの頭を撫でた後、抱き上げて、俺の隣に寝かせた。アンが身体を伸ばして寝転がり、お腹を見せてきた。撫でろというわけだ。そこで、黒崎が撫でてやると、すぐに満足して、お腹を下にして、寝そべった。俺が掛けてある毛布の匂いを嗅いでいる。黒崎が伊吹にとの電話を続けている。 

「……夏樹が胃が痛いと言って寝ている。リビングでだ。たまにある。……ああ、薬は持っている。もう飲ませた方が良いのか。……俺は何もしていない。大人しくしている。喧嘩もしていない。夏樹は元気だ。泣いてもいないし、怒ってもいない。週刊誌を見せた時は静かだった。……桜木君にかわるのか?分かった。夏樹、電話をかわってくれ。桜木君だ」 
「うん。……もしもし、聡太郎君。おはよう」 
「……おはよう」 

 スマホのスピーカーから、涼やかな声が聞こえてきた。聡太郎の声だ。ハスキーだった久弥の声とは少し違う印象だ。優しくて、眠りそうになる声なのは共通点だ。話題は開明高校のことだ。生徒が3人、コンサートを観に来るそうで、控え室訪問があるのだと、マネージャーの長谷部さんと加藤さんから聞いたところだという。俺にもラインが入っていた。そこで、雑誌記事に訪問時の写真を載せたいのだと、出版社から申し出があり、また事務所内で協議中だ。今回のことがあったから自粛しておこうかという意見が上がったという。 

「それはそうだよね。遠藤さんもそう言っていたんだ。え?載せる方になるの?俺と悠人で載るの?」 
「そうだよ。君と悠人君と久弥さんで生徒3人を挟んで写る構図だよ。長谷部さんから電話が入ると思うけど、泣いたり、怒ったりしちゃダメだよ。次のバンドの宣伝にするっていう意見でまとまったんだ。開明高校の生徒との絆っていうタイトルになると思う。生徒の親御さんは3人とも了承済みだ。生徒会のメンバーだ。開明高校の支援団体のメンバーが決定したことでもある。夏樹君、君の入学前の心を閉ざしていた頃の話にも触れられることになる。君と同じ立場の子を救うためでもある。だから笑顔で写真に写って欲しい。これ、俺が言うことじゃないんだけどね。はっきり言うと、事務所の方から、俺の方から先に伝えてくれって、昨日頼まれたんだ。長谷部さんは自分が言いますって言ったけど、彼女も忙しいからね。君が泣いたら、前に進まないんだ。悠人君だって、立ち止まる。そういうわけで、俺が代表して伝えることにした。分かる?君のところのお父さんが眉をひそめたら、何もかもが止まるんだよーー」 
「うひゃひゃひゃ。そんなことはないよーーー。でも、俺の話を載せても、仕方ないよと思うよ?え?うちのお父さんも了承済みなの?万理もなんだね……」 

 これは大きな事になってきた。過去に変な男のせいで人生を変えられて、心が不安定になり、街でたむろしている子達と喧嘩三昧だった話を質問されて、俺がそれに答えるのだという。俺のそばには悠人がいて、手を握っているという構図も求められているのだという。 
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