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夏樹とこの家のことでは、もっと不思議なことがある。俺達がこの家に来る前に父が倒れて入院したのだが、回復した。もう持たないと思っていた父が息を吹き返し、その心臓が良くなっている。神経痛があり、夜中に痛み止めを飲んでいたのが収まり、もう飲むことがない。今朝は杖無しでアンの散歩に出ていた。念のために持っているという程度だった。
庭のナツツバキが枯れていたが、夏樹が触れると息を吹き返し、どの木も太陽の光を浴びて成長している。そして、毎年沢山の花を咲かせている。泥が詰まっていた側溝は何度掃除しても詰まっていたが、それも改善された。
カビ取りのために業者を呼んで作業をしていた大広間があるが、そこで作業員が脚立から落ちて怪我をしたことがあった。夏樹が出入りするようになった後は風通しが良くなり、カビは数カ所発生したのみで済んでいる。毎年春にカビ取りを依頼し、高い場所での作業になったのだが、怪我人が出ないで済んでいる。
セキュリティーシステムを導入した際も事故が起こらず、夏樹が作業員のメンバーに出す菓子類と飲み物を持って待機していた。父がそうしてくれと頼んだのは頷けた。
そっと、2冊目のアルバムを開いた。写真に写っている父の家は改装前だ。この間のガーデンパーティーで集まった同じ場所で、黒崎家の一家とバーテルス家のメンバーが写っている。男性4名と女性3名だ。
「ユーリー。君と似ている人の写真を見つけた。バーテルス家のメンバーだ」
「この人が曾お祖父さんだよ。兄貴と同じ、アレクシスという名前だ。長生きしたんだよ。なんと、106歳だった」
「そうなのか。黒崎家の寿命は84歳が最高だった」
「そうだったね。君の家はみんなが早い」
「親父が越すだろう。あと20年は粘るそうだ。104歳になるぞ」
「そうなりそうだ。君はその時、何歳だ?」
「ああ……、58歳だ。そこまで生きるか……」
「親より早く逝くつもりか?なくはないか。拓海の幽霊は出ないみたいだ」
「やっと教えてくれたのか。気になっていた」
ユーリーは拓海兄さんの話題を出さなかった。数々の幽霊を見るというなら、きっと兄さんの幽霊も見ただろうと思っていた。しかし、彼は首を横に振った。
「きっと君が泣くから、出てこれないんだろう。今だって泣きそうだ。僕には分かる。君の感情の動きが……。嘘だよ。はははは」
「泣いていないぞ。いや、そうでもないか。この家では子供の頃、散々な目に遭った。兄さんが居たからよかった。たまに会う親戚からは眉をひそめられていた。父に、子供を作っていたのかと言ったのを思い出す。そいつは法事の時、俺を見て、普通に挨拶してきたぞ」
「嫌な人がいる。僕達がドイツに帰らなかったから、兄弟のように暮らせていただろう。すれ違いになったな」
「いや、十分だ。遊んでいたそうだな?あの親父と……」
「ああ。チェスをして遊んでくれた。隆さんは強くて、全然叶わなくて、兄貴にも負け続けだ。でも、腹は立たない。俺は気楽だった。学校の成績が悪くても、兄貴のように叱られずに済んだ」
「俺は末っ子だったが、親父には叱られていた。アヤノを飼ってもいいと言われた時は嬉しかった。何がきっかけだったのかは、もう忘れた……」
アヤノの母犬は迷い犬だった。しかも、妊娠していた。親戚が海岸で放浪しているところを保護し、飼い主を探していた。しかし、見つからず、親戚の家で子犬を出産した。2匹いて、モミジとアヤノという名前が付けられた。そして、アヤノが俺の元に来た。
庭のナツツバキが枯れていたが、夏樹が触れると息を吹き返し、どの木も太陽の光を浴びて成長している。そして、毎年沢山の花を咲かせている。泥が詰まっていた側溝は何度掃除しても詰まっていたが、それも改善された。
カビ取りのために業者を呼んで作業をしていた大広間があるが、そこで作業員が脚立から落ちて怪我をしたことがあった。夏樹が出入りするようになった後は風通しが良くなり、カビは数カ所発生したのみで済んでいる。毎年春にカビ取りを依頼し、高い場所での作業になったのだが、怪我人が出ないで済んでいる。
セキュリティーシステムを導入した際も事故が起こらず、夏樹が作業員のメンバーに出す菓子類と飲み物を持って待機していた。父がそうしてくれと頼んだのは頷けた。
そっと、2冊目のアルバムを開いた。写真に写っている父の家は改装前だ。この間のガーデンパーティーで集まった同じ場所で、黒崎家の一家とバーテルス家のメンバーが写っている。男性4名と女性3名だ。
「ユーリー。君と似ている人の写真を見つけた。バーテルス家のメンバーだ」
「この人が曾お祖父さんだよ。兄貴と同じ、アレクシスという名前だ。長生きしたんだよ。なんと、106歳だった」
「そうなのか。黒崎家の寿命は84歳が最高だった」
「そうだったね。君の家はみんなが早い」
「親父が越すだろう。あと20年は粘るそうだ。104歳になるぞ」
「そうなりそうだ。君はその時、何歳だ?」
「ああ……、58歳だ。そこまで生きるか……」
「親より早く逝くつもりか?なくはないか。拓海の幽霊は出ないみたいだ」
「やっと教えてくれたのか。気になっていた」
ユーリーは拓海兄さんの話題を出さなかった。数々の幽霊を見るというなら、きっと兄さんの幽霊も見ただろうと思っていた。しかし、彼は首を横に振った。
「きっと君が泣くから、出てこれないんだろう。今だって泣きそうだ。僕には分かる。君の感情の動きが……。嘘だよ。はははは」
「泣いていないぞ。いや、そうでもないか。この家では子供の頃、散々な目に遭った。兄さんが居たからよかった。たまに会う親戚からは眉をひそめられていた。父に、子供を作っていたのかと言ったのを思い出す。そいつは法事の時、俺を見て、普通に挨拶してきたぞ」
「嫌な人がいる。僕達がドイツに帰らなかったから、兄弟のように暮らせていただろう。すれ違いになったな」
「いや、十分だ。遊んでいたそうだな?あの親父と……」
「ああ。チェスをして遊んでくれた。隆さんは強くて、全然叶わなくて、兄貴にも負け続けだ。でも、腹は立たない。俺は気楽だった。学校の成績が悪くても、兄貴のように叱られずに済んだ」
「俺は末っ子だったが、親父には叱られていた。アヤノを飼ってもいいと言われた時は嬉しかった。何がきっかけだったのかは、もう忘れた……」
アヤノの母犬は迷い犬だった。しかも、妊娠していた。親戚が海岸で放浪しているところを保護し、飼い主を探していた。しかし、見つからず、親戚の家で子犬を出産した。2匹いて、モミジとアヤノという名前が付けられた。そして、アヤノが俺の元に来た。
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