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11月29日、金曜日。12時半。
朝はいつも通りに起きて朝ご飯を食べた後、ホールに入る2時間前まで寝ていた。そして、シャワーを浴びて寝癖を直した後、アンをお義父さんの家に連れて行った。今月に入ってからはこの家で過ごすことが増えて、アンの荷物も増えている。置き場所は黒崎が使っていた部屋と、リビングだ。
一日のほとんどをリビングで過ごし、お義父さんや山崎さんからご飯やおやつを食べさせてもらい、ハンモックで寝ているユリウスの隣で、ゲージに身体をくっつけて寝ているそうだ。寂しいからだと思った山崎さんが家事の合間に声をかけると、尻尾を振って答えるから、言葉が分かるみたいだと言ってくれた。
「俺、頑張っているからね。今日はユーリーが休みだから、一緒にいてくれるって言っていたな。良かったなあ……」
お義父さんは今日、黒崎製菓に出かけている。脅迫メールの件でだ。お義父さんの社長時代にもあったそうで、社長と副社長、役員達の会議に参加している。25年前にも封書で届いたこともあり、もしかすると、犯人は他にもいるのかも知れないという考えだという。黒崎家のトラブルかも知れないということも言っていた。
「物騒だな……。ますますユーリーに居てもらえて良かったよ。あの人、武道の達人だなんて、見えないよ。空手と柔道の有段者だなんて……。うっうっ。今朝のユーリー、怖かったなあ。マジで瓦を割っていたんだ……」
黒崎家に不審者が入り込むかも知れないという事情を聞いたユーリーが、空手の稽古を始めた。場所は庭だ。上半身裸になり、ジョギングと筋トレを済ませた後、瓦や板を割り始めた。俺は大学で蹴りで板を割った経験があるが、瓦はない。本当に割れるのかとドキドキしながら見守っていると、本当に一度に何枚も素手で割っていたから驚いて、言葉を失ってしまった。
「気合いだって言うんだ。こうして割っている人がいると、悪い人が近づかないんだって言っていたな。おかげで近所の人が観に来て、人気者になったな……」
ユーリーはこう言った。トレーニングをしていることが近所で広まると良いのだそうだ。防犯に効果的だという。そこで、うちの近所ではジョギングを始めると言い出す人が一気に増えたのだと、佳代子さんから教えてもらった。
そして、ユーリーに向けて、庭で育てている花や、美味しい物が届くようになった。その中には、ユーリーが気に入っている粉末のプロテインもあった。ご主人が勤めている会社の関係で、たくさん貰ったのだという。
「もうこの近所で溶け込んだし、ドイツには帰らないと思うんだ。でも、向こうだって物騒なことがあると思うんだけど、家の方は大丈夫なのかな。アレクシスさんも武道を習っていたのか。お義父さんって、スパルタだよねえ……」
ユーリー達が空手などを習い始めたのは、日本にいる間に、お義父さんから勧められたからだという。勉強だって、たくさんさせられていた。その上で空手や柔道を習っていたら、身体がいくつあっても足りないのではないかと心配になった。そして、ホッとした。喘息のある黒崎には一切習わせていないのだという。興味を持たなかった晴海さんには、少しだけさせてみたという。しかし、拓海さんには有無を言わさず習わせたそうだ。お義父さんだってそうだった。長男が必ず何かを習得するのだという。
こういう家だから、養子が来るだろうか。妻だって来ない気がする。跡取り息子になったあかつきには、お義父さんからのスパルタ教育が待っている。しかし、みんながそうさせないだろうから、安心している。俺の方こそ、無理矢理させるのは反対の意見だ。
朝はいつも通りに起きて朝ご飯を食べた後、ホールに入る2時間前まで寝ていた。そして、シャワーを浴びて寝癖を直した後、アンをお義父さんの家に連れて行った。今月に入ってからはこの家で過ごすことが増えて、アンの荷物も増えている。置き場所は黒崎が使っていた部屋と、リビングだ。
一日のほとんどをリビングで過ごし、お義父さんや山崎さんからご飯やおやつを食べさせてもらい、ハンモックで寝ているユリウスの隣で、ゲージに身体をくっつけて寝ているそうだ。寂しいからだと思った山崎さんが家事の合間に声をかけると、尻尾を振って答えるから、言葉が分かるみたいだと言ってくれた。
「俺、頑張っているからね。今日はユーリーが休みだから、一緒にいてくれるって言っていたな。良かったなあ……」
お義父さんは今日、黒崎製菓に出かけている。脅迫メールの件でだ。お義父さんの社長時代にもあったそうで、社長と副社長、役員達の会議に参加している。25年前にも封書で届いたこともあり、もしかすると、犯人は他にもいるのかも知れないという考えだという。黒崎家のトラブルかも知れないということも言っていた。
「物騒だな……。ますますユーリーに居てもらえて良かったよ。あの人、武道の達人だなんて、見えないよ。空手と柔道の有段者だなんて……。うっうっ。今朝のユーリー、怖かったなあ。マジで瓦を割っていたんだ……」
黒崎家に不審者が入り込むかも知れないという事情を聞いたユーリーが、空手の稽古を始めた。場所は庭だ。上半身裸になり、ジョギングと筋トレを済ませた後、瓦や板を割り始めた。俺は大学で蹴りで板を割った経験があるが、瓦はない。本当に割れるのかとドキドキしながら見守っていると、本当に一度に何枚も素手で割っていたから驚いて、言葉を失ってしまった。
「気合いだって言うんだ。こうして割っている人がいると、悪い人が近づかないんだって言っていたな。おかげで近所の人が観に来て、人気者になったな……」
ユーリーはこう言った。トレーニングをしていることが近所で広まると良いのだそうだ。防犯に効果的だという。そこで、うちの近所ではジョギングを始めると言い出す人が一気に増えたのだと、佳代子さんから教えてもらった。
そして、ユーリーに向けて、庭で育てている花や、美味しい物が届くようになった。その中には、ユーリーが気に入っている粉末のプロテインもあった。ご主人が勤めている会社の関係で、たくさん貰ったのだという。
「もうこの近所で溶け込んだし、ドイツには帰らないと思うんだ。でも、向こうだって物騒なことがあると思うんだけど、家の方は大丈夫なのかな。アレクシスさんも武道を習っていたのか。お義父さんって、スパルタだよねえ……」
ユーリー達が空手などを習い始めたのは、日本にいる間に、お義父さんから勧められたからだという。勉強だって、たくさんさせられていた。その上で空手や柔道を習っていたら、身体がいくつあっても足りないのではないかと心配になった。そして、ホッとした。喘息のある黒崎には一切習わせていないのだという。興味を持たなかった晴海さんには、少しだけさせてみたという。しかし、拓海さんには有無を言わさず習わせたそうだ。お義父さんだってそうだった。長男が必ず何かを習得するのだという。
こういう家だから、養子が来るだろうか。妻だって来ない気がする。跡取り息子になったあかつきには、お義父さんからのスパルタ教育が待っている。しかし、みんながそうさせないだろうから、安心している。俺の方こそ、無理矢理させるのは反対の意見だ。
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