青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 20時半。

 コンサートが終了した。無事に全ての曲目を歌い終えて、ステージから観客席に大きく手を振り、ステージサイドに戻ってきた。俺は珍しく上半身裸ではなく、衣装の青い花のついたTシャツを着たままだ。汗でぐっしょり濡れている。しかし、さらさらの生地だから肌に張り付かず、快適だ。これはプラセルで作ってもらった衣装だ。一貴さんがこだわった生地であり、来年のブランド展開で主力商品にしたいと言っていた。

 俺達の周りでは拍手が起こり、仙頭さんのカメラが回っている。観客席も賑やかだ。みんな帰り支度を始めて、順番にホールから出るように案内のアナウンスが流れている。

 俺のそばに聡太郎と大和が来た。それぞれとハイタッチして、今夜の成功を祝った。悠人は蘭さんと高山さんとで写真を撮り、久弥はスタッフからの拍手の波に埋もれて、本人が見えなくなっている。

「ひさやーー、おーーい!大丈夫ーー?」
「おおーーー!」

 久弥はラストの曲で髪の毛を振り乱しっぱなしであり、俺にこっそりと、肩が痛いと言っていた。それは観客席にも気づかれてしまい、久弥コールが巻き起こっていた。

 その久弥が笑顔で俺達に手を振り、ギターを弾きすぎて手首と指が痛いと言い出した。後で聖河さんに診てもらうそうだ。そして、俺はその聖河さんの診察が始まり、椅子に腰掛けた。控え室まで歩けそうにない。それは観客席から声援がすごすぎて、感動して泣けてきたからだ。

「聖河さん、俺の身体、どうかな?」
「大丈夫だよ。あんなに動き回っていたのに、もう身体が落ち着いている」
「やっぱり神社に行ったからかな。なんだか違うんだよ。昨日も今日も機材トラブルが起きなかったし、ホールでの転倒事故とかもなかったっていうことだし、良かったあ……」
「メンバー、集まってくださーーい!」

 俺達に集まるように指示がされた。まずは3人で写真を撮り、高山さんと蘭が入っての5人の写真、そして、最後は聡太郎と大和が入った写真を撮ることになる。それぞれまだ汗をかけているところで、肩からタオルを下げている。悠人はメイクが少し崩れている部分があり、ローザーさんが直していた。

 そして、悠人には、よくやったという褒め言葉が沢山掛けられている。さらに、そばにはキシヤマ味噌の商品が置かれており、一緒に写真を撮ることになっている。だから、ローザーさんが少しでも写真映えするように悠人の脇や肩に保冷剤を当てて、髪の毛のセットも調整している。キシヤマ味噌がアーティスト支援の仕事に仲間入りすることになった関係だ。

「なつきー、大丈夫ーー?」
「俺なら平気だよ。酸素吸入器も使っていないよ」
「ふむふむ。泣いているのは、どこか痛いからじゃないんだね。控え室に黒崎さんが待っていると思うから、泣き止めよーーー」
「おーーー……」

 俺の両目からポタポタと涙が落ちてきた。悠人は衣装チェンジをするために今着ている服を脱ぎ、キシヤマ味噌のCMで着ている衣装に着替え始めた。和服だ。これでみんなで写真を撮るし、キシヤマ味噌のSNSにも出ることになる。

「ゆうとー、君は忙しい男だねえ……」
「季節限定のフリーズドライのカボチャ入り味噌汁の宣伝だよ。CM作成監督の希望でさーー。ごめんね。しらけない?」
「そんなことあるわけないよ。ファンの子達だって、悠人が出ているCMを観ているんだ。かえってウケるんじゃないかな?うひゃひゃひゃ」
「ふうーー。お腹が苦しいよーー。よいしょっと……」

 悠人が帯を締められて、苦しいと言い始めた。そして、椅子に座り、足袋に履き替えている。衣装係のスタッフがひざまずき、ささっと準備を進めている。俺達はその間に顔や身体の汗を拭き取り、新しいタオルを首から下げた。保冷タオルだ。冷たくて気持ちが良くて、呼吸や心拍数が落ち着いていくようだ。
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