青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 18時半。

 2日目のコンサートが始まった。幕が下りた後、俺達の姿が登場すると、歓声が上がった。まだ照明は暗い方だ。それがだんだんと明るくなってきて、一筋の光線が差し込まれて、それが観客席もさしていった。

「こんにちはーーー!」

 ワーーーーーー!

 俺の挨拶と同時にドラム音が鳴り響き、曲名を伝えた。悠人が作曲した、80年代のアイドルの楽曲をイメージしたポップな曲だ。ベテルギウスが発表した曲だが、俺達のコンサートでも人気が高く、一番最初に持ってきた。そこで、ベテルギウスのメンバーの名前も呼ばれたから俺が笑うと、観客席からも笑いが起こった。それは歓声に包まれて消えそうになっていたが、久弥がブーイングをする仕草をしたことで沸き立ち、大きな笑い声に包まれた。

「ベテルギウスのメンバーは控え室にいまーーす!」

 おーーーーーー!

「俺達が倒れたら登場してくれるそうでーーーす!」

 だめだだめだーーーー!

 観客席から笑いとブーイングが起きた。みんな笑顔だ。すると、蘭さんのベース音が鳴り始めて、観客がジャンプを始めた。そして、悠人のギター音と久弥のギターが重なり、その久弥がステージ中央でギターテクニックを見せると、大きな拍手が起きた。

 今夜のスポットライトは、久弥だけのものにしてもらいたい。俺はマイクを持ってメンバーの紹介を始めた。それぞれの名前が呼ばれる度に歓声が起こり、観客席にウェーブが起こった。

「ギターー!ひさやーーーー!」

 ワーーーーーーー!

 久弥がギターを持ち上げて、観客席をあおった。今日の衣装もディアドロップ時代をイメージしたものだ。俺は悪い男風の衣装で、悠人はトゲトゲのついたジャケット姿だ。髪型にも特徴があり、俺も悠人も全体的にトゲトゲしている。久弥は長い髪を下ろしたままだ。赤い色に染め上げられており、その髪が宙を舞うようにして動いている。久弥が頭を振りながらギターを弾いているからだ。

(久弥、いかないでよ。最後だなんて言わないでよ……)

 久弥の勇ましい姿に目頭が熱くなった。すると、俺を呼ぶ声が大きくなった。モニター画面でアップで映し出されているようだ。仙頭さんのカメラが近くに来ていたからだ。

(泣いているのかな、俺……)

 どうして俺は、ディアドロップ時代の久弥の楽曲を聴いていなかったのだろう。最初からファンでいれば良かったと思った。初めて会ったとき、ごく普通の人だという印象だった。しかし、ギターも曲もとてもかっこよくて、本人もかっこよかった。そして、接するうちに彼の魅力の虜になり、優しさをもらって、俺と悠人は歩いて行けた。

 わーーーーー!

 ナツキーーーーー!

 観客席から俺の名前を呼ぶ声が聞こえている。歌声にかき消されることはなくて、しっかりと耳に届いている。そして、悠人を呼ぶ声が大きくなった。俺のそばに来たからだ。トゲトゲスタイルの髪の毛を振り乱すことはなく、クールなスタイルを貫いてステージに立っている姿を見つめた。今、悠人はギターソロ中だ。俺は観客をあおるようにしてステージの中を歩き回る予定なのに、涙がポタポタと落ちてきて、汗を一緒に床に流れ落ちていった。

(夏樹って呼んでくれている。みんな、ありがとう……)

「みんな!一緒に歌って!」

 おーーーーーー!

 俺の声に応えるようにして、観客席から歌声が届き始めた。それはホールの中をうねっていき、振動が起こる錯覚が起きた。

(すごいよ……。ああ、久弥……)

 すると、久弥が俺のそばに来た。泣いている俺に笑顔を向けてくれた。それは大型モニターにも映っているようで、2階席からの歓声も届いてきた。みんな、ジャンプをして腕を振り上げている。そして、スポットライトが久弥に当たった。それは天から降り注ぐ光のようで、久弥が笑いながら嫌がっていた演出だ。まだ俺は天国に行かないぞと言っていた。

「夏樹。聞こえるか?俺はまだまだ生きている。だからお前も頑張れ!」
「うん!」

 俺が返事をした後、二手に分れた。久弥がドラムの方に移動して、一緒にコーラスをしている。スポットライトは久弥に当たったままだ。今日でお別れだなんて、嫌だ。俺はまた往生際が悪くなり、泣きながらステージを歩き回り、歓声と拍手をもらって、歌い続けた。
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