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そういえば、俺達はまだ黒崎に誕生日プレゼントを渡していない。特に用意していないという理由もある。黒崎が嫌がるからだ。この家で暮らすようになり、誕生日プレゼントと言えば、お義父さんに連れられていったお寺で説法を聞くことや、宿坊体験だったそうだ。物なんて貰っていないという。だから、毎年の誕生日になると、苦手なお義父さんと出かけることになるから、嫌だったそうだ。しかし、俺達が宿坊体験をするなら付き合ってくれると言っている。
「黒崎さーーん。7歳の子が護摩たきの前に座っていたのかよ?」
「ああ。座らされた。周りには大人しかいない。たまに顔を合わせる”おじさん”と2人で出かけるなんて、嫌な思い出に決まっている。業だらけの人が護摩たきの前に座って、何を考えていたのやら……」
黒崎が眉間に皺を寄せた。そして、お寺の中で誘拐されそうになったことを思い出したと言って、笑い出した。俺とユーリーは、ちっとも笑えない。それは沢山の人が訪れていた日のことで、黒崎家の法事だったそうだ。黒崎は6歳の時で、知らない男の人から手を引かれて歩き出して、拓海さんが連れ戻したという。相手の人は、間違って手を引いてしまったと言い訳をしていたそうだ。それ以来、法事の時は、お義父さんがそばについていることになったという。そして、拓海さんが黒崎の手を引いて歩いていた。中学生になるまでだ。
「なんだかなあ。ちゃんとネクタイをしてズボンを履いている黒崎さんなのに、娘だと思って手を引いたんだって言い訳をした人だったんだっけ?」
「ああ、そういう奴だ。警察が調べたら、娘なんていなかったそうだぞ。よくやっていたんだろう。そういうことを……。ユーリー、そういう顔をするな。悲しまなくていい。俺は無事だった」
「いや、怖かっただろうなと思ったんだ。さっと遠くに連れて行かれて、親以外の人と一緒にいる状況だろう。それに君は喘息があるから、走って逃げることが出来なかっただろう。苦しくなるからね」
「それは兄さんから心配されていた。ユーリー、君とアレクシスはそういうことがなかったそうだな?」
「ああ。どうしてだろうな。結構可愛い子だったんだぞ?日本語が理解できないんじゃないかと敬遠されたんだろうか。はははは」
「親父さんから贈り物が届いていたんだろう?誕生日の前に……」
「そうだったよ。僕や兄さんに、車のおもちゃや、パズルだ。それ以外にもあった。母さんにも送ってきていたよ。でも、一目会えば、喧嘩が起きていた……。はあ……」
今度はユーリーがため息をついた。エミリアさんがフェリックスさんに髪の毛を掴まれて引きずられていく光景や、その反対に、エミリアさんがフェリックスさんの頬を打つ光景を見たのは、ドイツに一時帰国した後すぐだという。そして、エミリアさんが彼のことを、ばしばしと叩いていたそうだ。ユーリーは4歳ぐらいの時で、両親が仲が悪いのだと、胸を痛めていたそうだ。可哀想だと思う。その時、アレクシスさんがユーリーの手を引き、見えないところまで連れて行ってくれた思い出があるという。
「ごめんね。圭一の誕生日だっていうのに……」
「気にするな。俺が両親の喧嘩を見たのは、一度ぐらいだ。あの人だって気を遣っていたに違いない……」
あの人とは、ママのことだ。黒崎が”ママ”と呼ぶことは無くなっている。もし今度会った時に、なんて呼ぶのだろうか。いつも通りに呼んでもらいたいなんて、俺の口からは言わない方が良いだろう。黒崎が願いを叶えてくれようとするに決まっている。だから、もう一度話してくれとは言えない。
「黒崎さーーん。7歳の子が護摩たきの前に座っていたのかよ?」
「ああ。座らされた。周りには大人しかいない。たまに顔を合わせる”おじさん”と2人で出かけるなんて、嫌な思い出に決まっている。業だらけの人が護摩たきの前に座って、何を考えていたのやら……」
黒崎が眉間に皺を寄せた。そして、お寺の中で誘拐されそうになったことを思い出したと言って、笑い出した。俺とユーリーは、ちっとも笑えない。それは沢山の人が訪れていた日のことで、黒崎家の法事だったそうだ。黒崎は6歳の時で、知らない男の人から手を引かれて歩き出して、拓海さんが連れ戻したという。相手の人は、間違って手を引いてしまったと言い訳をしていたそうだ。それ以来、法事の時は、お義父さんがそばについていることになったという。そして、拓海さんが黒崎の手を引いて歩いていた。中学生になるまでだ。
「なんだかなあ。ちゃんとネクタイをしてズボンを履いている黒崎さんなのに、娘だと思って手を引いたんだって言い訳をした人だったんだっけ?」
「ああ、そういう奴だ。警察が調べたら、娘なんていなかったそうだぞ。よくやっていたんだろう。そういうことを……。ユーリー、そういう顔をするな。悲しまなくていい。俺は無事だった」
「いや、怖かっただろうなと思ったんだ。さっと遠くに連れて行かれて、親以外の人と一緒にいる状況だろう。それに君は喘息があるから、走って逃げることが出来なかっただろう。苦しくなるからね」
「それは兄さんから心配されていた。ユーリー、君とアレクシスはそういうことがなかったそうだな?」
「ああ。どうしてだろうな。結構可愛い子だったんだぞ?日本語が理解できないんじゃないかと敬遠されたんだろうか。はははは」
「親父さんから贈り物が届いていたんだろう?誕生日の前に……」
「そうだったよ。僕や兄さんに、車のおもちゃや、パズルだ。それ以外にもあった。母さんにも送ってきていたよ。でも、一目会えば、喧嘩が起きていた……。はあ……」
今度はユーリーがため息をついた。エミリアさんがフェリックスさんに髪の毛を掴まれて引きずられていく光景や、その反対に、エミリアさんがフェリックスさんの頬を打つ光景を見たのは、ドイツに一時帰国した後すぐだという。そして、エミリアさんが彼のことを、ばしばしと叩いていたそうだ。ユーリーは4歳ぐらいの時で、両親が仲が悪いのだと、胸を痛めていたそうだ。可哀想だと思う。その時、アレクシスさんがユーリーの手を引き、見えないところまで連れて行ってくれた思い出があるという。
「ごめんね。圭一の誕生日だっていうのに……」
「気にするな。俺が両親の喧嘩を見たのは、一度ぐらいだ。あの人だって気を遣っていたに違いない……」
あの人とは、ママのことだ。黒崎が”ママ”と呼ぶことは無くなっている。もし今度会った時に、なんて呼ぶのだろうか。いつも通りに呼んでもらいたいなんて、俺の口からは言わない方が良いだろう。黒崎が願いを叶えてくれようとするに決まっている。だから、もう一度話してくれとは言えない。
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