青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 フェリックスさんからすると、アレクシスさんは一家の当主になる子供だという認識で育ててきた。その兄を支えるのは弟の役目であり、今からでも子供を作ってこいと、26歳のユーリーに言ったことがあるそうだ。今、彼はその時の思い出が蘇り、泣き伏せている。

 男が泣いているのは恥ずかしいとは思わない。俺だって泣くからだ。しかし、二葉はそうではいけないという考えを持っている。それはお義父さんや晴海さん、そして、黒崎の影響もある。そこで、彼女がユーリーのことを無理にベッドから起こし上げて、叱咤した。

「しっかりしろ!男は泣くな!」
「無理だ……。子供の自由を奪うのは罪なことだ。僕はいい大人だ。もう40歳になった。でも、あの人の子供だ。父さんは罪を犯している。いくつもある。きっと地獄に落ちるんだ。死んだ後で魂が天国の花畑に誘われた後、冷たい床のある場所に連れて行かれて、死んだばかりなのに、行だと言って、氷水を掛けられるんだ。きっとそうなんだ。そして、地獄で苦しむんだ……。日本に言い伝えがあるだろう?仏教の不邪婬だ。享楽に溺れることをいう。まるで父さんのようだ。夫のある人と付き合ったこともある。そんな罪深い人が、さらに罪を犯しているなんて……」
「ユーリー……、そうだよね。誰だって好きな人と結婚したいし、子供だって欲しいかも知れないんだ。でも、同性同士は授からないんだ。お父さんのフェリックスさんはあんたに無理を言ったんだね。可哀想に……。地獄はどうか分からないけど……。人は亡くなった後、どこに行くんだろうね……」

 俺はユーリーの額の汗をタオルで拭いた。お湯で湿らせてきてある。そばにいる二葉は椅子に掛けてあるシャツを取ってきて、ユーリーに着替えさせようとした。背中に大量の汗をかいているからだ。

「ユーリー。着替えようよ。シャワーは後で良いと思うよ。ひとまず、風邪を引くからさ……」
「ありがとう……」

 ユーリーは弱々しく返事を返し、ニットを脱いだ。そして、俺達に手伝われながらシャツに着替えた。この方がベッドで寝やすいだろう。背中の汗は濡れたタオルでふいてあげた。首筋もだ。少しはさっぱりしただろうか。そして、体温計を取ってきて、脇に挟んだ。20秒ぐらいで計測完了だ。

「ああ、36度8分だよ。平熱は36度ぐらいだなんだよね?」
「そうだよ……」
「可哀想に。身体に影響が来ているよ……。熱が上がったら、解熱剤があるからね。持っている?」
「ああ、部屋に置いてあるよ。コントックだ」
「それは風邪薬だよ。イフにしたら?」
「それも持っている。僕はこれでも身体が弱い方でね……」
「嘘つきだなあーーー」

 二葉が呆れ顔になった。寒空の下で上半身裸でジョギングをして、瓦割りをするくせにと言って、黒崎そっくりの意地悪そうな顔をした。そして、爆弾発言をさせてもらうと言い出して、ユーリーが顔を上げた。いけないことだと言っている。

「二葉、それはいけないことだ」
「いいんだよ。俺はあなたと結婚して、もし授かるなら、子供を産んでも良いと思っているんだ。それだけ、あなたには感謝をしているからさ。3人産んで、バーテルス家の跡取りにして、当主である叔父さん夫婦の養子にして、一人はこの家の養子にして、最後の一人は一緒に育てても良いんだよ」
「二葉……」
「そういう覚悟はできているんだ」
「僕、ドイツに戻るよ……。僕が来たから、そんなことを思うようになったんだろう……」
「だめだよ!出て行くな!」

 そう言って、二葉がユーリーの肩を揺さぶった。そして、そんな夢みたいなことが起きると良いねと言った。意志に背く結婚は魂の蹂躙だと二葉が言い、ユーリーは強く頷いた。そして、お義父さんが言い出したことは恨まないと言ってくれた。

「隆さんは幸せになる方法を探しているんだ。二葉、君が笑顔になれる環境を探している……」
「それは分かっているんだよ。俺達、仲間だね!あなたのことだって、おじいちゃんは幸せにしたがっているんだよ……」
「そうだね……」

 俺達は頷き合った。そして、ユーリーにジュースを飲ませて、ベッドに身体を横たえさせた。額には濡れたタオルを乗せてあげた。ほてっている熱を冷ますためだ。
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