260 / 938
10-2
しおりを挟む
一貴さんの希望としては、藤沢にやってもらいたいのだという。彼ならベテランだし、イメージに合わないことはないそうだ。そして、藤沢は、髪の毛を切って、広告に出ることは可能だと言ったそうだ。しかし、プラセルのジュエリーブランドのモデルを務めているから、そっちを主力に目立って貰いたいというのが、藤沢の所属事務所とプラセルの意見だという。
それに、オンライズは20歳から25歳までの年齢層をターゲットにしているから、藤沢の見た目では年齢が上過ぎるのだという。そこで、髪の毛を切って若くするのだという考えが浮かんだそうだ。今のジュエリーブランドは、40歳までの人をターゲットにしているから、広告の藤沢は実年齢よりも上に見える。そのために髪の毛を長くしているのだという。
藤沢としては、一貴さんの力になりたいと言っている。恩があるからだという。去年、女性物の着物を来てファッションショーに出演するという仕事が入ったが、彼はメンズモデルだから断りたかった。しかし、事務所もデザイナーも、彼が良いと言った。そこへ、一貴さんが藤沢の説得に入り、たった一度だけで良いからと、藤沢に首を縦に振らせた。そして、そのショーは成功し、藤沢はまた大きな階段を上がった。
最近受けたインタビューでは、藤沢は、その当時のことを恥ずかしいやら、今でも恨みに思っているやら、笑いを取って話していた。そのおかげもあってなのか、テレビに出演する機会が出てきて、仕事の幅が広がっている。藤沢の希望としては、ずっとモデルをしたいことと、イベントの司会の仕事をしたいということだった。それが叶うようにと頑張っている。
しかし、一貴さんが独占欲を出してしまい、藤沢のことをモデルの世界から引退させようかと思っていると言い出した。藤沢にはデザイナーになってもらいたいのだという。それには怜さんも賛成であり、藤沢のセンスを好んでいるという。藤沢は怜さんのファンだから喜んでいた。しかし、一貴さんの独占欲の発言を嫌がり、また連絡が取れなくなりそうだと思った。
「ふうーーー。どこまで見たっけ……。ここだ、黒崎栄三さん。次は、黒崎みかさん。享年64歳……」
テーブルの上に置いてある、来月に開かれる法事で使う、黒崎家で亡くなった人の名前が書かれた紙を広げた。たくさんいる。次の法事から晴海さんが施主になり、行われる。俺はその手伝いをしている。お寺が保管している家族の名前と、俺達が持っている家族名一覧に間違いないかどうかの確認だ。もちろん、カトリックに改宗した拓海さんの名前もある。そして、黒崎みかさんの名前のところで指を止めた。黒崎から聞いた名付けエピソードが印象に残ったからだ。
「みかさんのお母さんが漢字で名前を付けて、お見舞いに来た旦那さんに伝えて、役場に届けて貰おうと頼んだら……、旦那さんが役場に着いたときに漢字を忘れて、いいや、ひらがなで届けようって届けて、みかさんになったんだって……」
そんなこともあるのかと驚いた。奥さんは呆れていたそうだ。まさか忘れるだなんてと。それなら病院に戻ってきてメモを書いて、また役場に行ってもらいたかったと言ったそうだ。当時はスマホがなく、旦那さんが役場から電話を掛けたとしても、奥さんは病院のベッドから起きて、電話機がある場所まで移動しなくてはならない。だから、旦那さんとしては電話で聞くことをやめて、かといって、もう一度病院に戻ることもやめて、ひらがなで届けたのだった。
「面倒だったからだよって言われたんだって……。みかさんは大人になった後、笑っていたんだって。良かったなあ。お父さんらしいってさ……」
一覧表には黒崎家の歴史がある。俺の育った家でも法事がある。来年5月だ。うちの母は帰ってこなくて良いと言っていたが、お墓参りがしたいから、伊吹も一緒に帰ろうと思っている。
それに、オンライズは20歳から25歳までの年齢層をターゲットにしているから、藤沢の見た目では年齢が上過ぎるのだという。そこで、髪の毛を切って若くするのだという考えが浮かんだそうだ。今のジュエリーブランドは、40歳までの人をターゲットにしているから、広告の藤沢は実年齢よりも上に見える。そのために髪の毛を長くしているのだという。
藤沢としては、一貴さんの力になりたいと言っている。恩があるからだという。去年、女性物の着物を来てファッションショーに出演するという仕事が入ったが、彼はメンズモデルだから断りたかった。しかし、事務所もデザイナーも、彼が良いと言った。そこへ、一貴さんが藤沢の説得に入り、たった一度だけで良いからと、藤沢に首を縦に振らせた。そして、そのショーは成功し、藤沢はまた大きな階段を上がった。
最近受けたインタビューでは、藤沢は、その当時のことを恥ずかしいやら、今でも恨みに思っているやら、笑いを取って話していた。そのおかげもあってなのか、テレビに出演する機会が出てきて、仕事の幅が広がっている。藤沢の希望としては、ずっとモデルをしたいことと、イベントの司会の仕事をしたいということだった。それが叶うようにと頑張っている。
しかし、一貴さんが独占欲を出してしまい、藤沢のことをモデルの世界から引退させようかと思っていると言い出した。藤沢にはデザイナーになってもらいたいのだという。それには怜さんも賛成であり、藤沢のセンスを好んでいるという。藤沢は怜さんのファンだから喜んでいた。しかし、一貴さんの独占欲の発言を嫌がり、また連絡が取れなくなりそうだと思った。
「ふうーーー。どこまで見たっけ……。ここだ、黒崎栄三さん。次は、黒崎みかさん。享年64歳……」
テーブルの上に置いてある、来月に開かれる法事で使う、黒崎家で亡くなった人の名前が書かれた紙を広げた。たくさんいる。次の法事から晴海さんが施主になり、行われる。俺はその手伝いをしている。お寺が保管している家族の名前と、俺達が持っている家族名一覧に間違いないかどうかの確認だ。もちろん、カトリックに改宗した拓海さんの名前もある。そして、黒崎みかさんの名前のところで指を止めた。黒崎から聞いた名付けエピソードが印象に残ったからだ。
「みかさんのお母さんが漢字で名前を付けて、お見舞いに来た旦那さんに伝えて、役場に届けて貰おうと頼んだら……、旦那さんが役場に着いたときに漢字を忘れて、いいや、ひらがなで届けようって届けて、みかさんになったんだって……」
そんなこともあるのかと驚いた。奥さんは呆れていたそうだ。まさか忘れるだなんてと。それなら病院に戻ってきてメモを書いて、また役場に行ってもらいたかったと言ったそうだ。当時はスマホがなく、旦那さんが役場から電話を掛けたとしても、奥さんは病院のベッドから起きて、電話機がある場所まで移動しなくてはならない。だから、旦那さんとしては電話で聞くことをやめて、かといって、もう一度病院に戻ることもやめて、ひらがなで届けたのだった。
「面倒だったからだよって言われたんだって……。みかさんは大人になった後、笑っていたんだって。良かったなあ。お父さんらしいってさ……」
一覧表には黒崎家の歴史がある。俺の育った家でも法事がある。来年5月だ。うちの母は帰ってこなくて良いと言っていたが、お墓参りがしたいから、伊吹も一緒に帰ろうと思っている。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる