青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 すると、また外の方から話し声が聞こえてきた。今度はうちの玄関からだ。夏樹、助けてとか、社長、やめてくださいとか言っている声だ。朝陽に違いない。相手は一貴さんだろう。今日は二葉のところに遊びに来る予定だった。南波さんの番組にも興味があるからでもある。さっそく俺は玄関に行き、ドアを開けた。しかし、2人の姿がない。

「あれーー?どこだろう?あ、いた……」

 2人の姿を見つけた。お義父さんの家の方に向かっているようだ。しかし、一貴さんが立ち止まり、朝陽にカメラを向け始めた。そばには夏椿の木があり、影になるからこっちに立てと言い、朝陽のことを広い場所に立たせた。

「朝陽君。こっちを向け!」
「社長!やめてください!」
「だめだ。君に社運が掛かっているかも知れないんだ。良いだろう?今まで散々、女の子と遊んできたんだ。イケメン大学生と言われて、チヤホヤされてね……。顔を出すぐらい、どうってことはないはずだ!」
「だめです!俺、そういうのは苦手です!」
「どうしたんだよ?」

 俺が外に出て行くと、一貴さんがこっちを向いた。朝陽は大人しく立ったままだ。社長命令だからだろう。六槍さんは居ないようだ。朝陽が居るところには、いつも居るのに。秘書と、秘書のお手伝いコンビという関係だ。一貴さんから泣かされて、その度に六槍さんから励まされて、朝陽はプラセルの中を歩いている。しかし、来年4月から医学生に戻る。もうそろそろ朝陽のことを解放しても良さそうだと思うのに、黒崎が復学ギリギリまで使ってくれと言い、朝陽の修行の日々は続いている。

「ああ、夏樹君。おはよう。朝陽君をモデルに使う案が出ているんだ。オンライズの広告だよ」
「へえーーー。イケメンだもんね。いいんじゃないのかな?」
「なんだよ、夏樹!俺、嫌って言っているの、聞こえていただろ?助けてくれよーーー!」
「いいじゃん。女の子と自撮りしたり、プリクラとか撮ったりしていたんだよね?知っているんだよ。10人ぐらいと遊んでいたんだろ?黒崎さんが調べたんだ……」
「たったの2人だよ!たまに会うのは5人ぐらい……。どの子とも男女関係は無いんだ!俺、これでも医学生なんだ!ちゃんと考えていていたんだよ。お姉ちゃん、えーーっと、二葉兄ちゃんが心配しすぎたんだよーーー」
「今更だよ。カメラ嫌いだなんて、通用しないよ。人前に出るのも嫌だとかさ……」
「わーーーー、社長、脱がす気ですか?」

 一貴さんが朝陽の上着を取り、ニットに手を掛けた。そして、外は寒いのに、さっさと脱がせて、アンダーシャツ姿にさせた。なかなか引き締まった身体をしていると思った。けっこう痩せている。プラセルでの修行がつらいのだろう。

「そのまま立ったままだ。……はい、撮れたぞ。良い体をしているじゃないか。これは褒め言葉だぞ……」
「もう……」

 写真を取り終えたと言われて、朝陽が地面に落ちたニットと上着を着始めた。俺に渡してくれたら持っておくのに、一貴さんは急いで撮りたいから、地面に落としたのだろう。デジカメの画面には、朝陽の足下に脱がされた上着がばっちり映っている。これを資料にして会議するのだろうか。

「カズ兄さん。撮り直したら?今度は俺が服を持っているからさ……」
「そうか。そうした方が良いか。朝陽君。すまないが、もう一度、脱いでくれ」
「嫌ですーーーー。わーーーん!」

 朝陽が必死に抵抗を始めた。本気で嫌なのだろう。そこで、俺は広告のモデルの契約金や、給料の額を聞くことにした。けっこう大金ではないだろうか。朝陽の貯金になるだろう。

「カズ兄さん。契約金とお給料はいくら出すの?」
「そうだなあーー。安いだろうなあーー。それはそうなんだ。だって、社員だからな。仕事の一環でやってもらうなら、契約金は無しだ。でも、僕はそういうのは嫌だから、そこそこ出してやる」
「へえーー。藤沢なら、かなり出すんだろ?」
「ああ。彼のクラスなら……。朝陽君、45万の契約金と5万のボーナスで、50万円でどうだ!」
「この間のモデルさんは、200万だったでしょう!それと、時間ごとに給料が発生していたはずです!」
「いいじゃないか。君はプラセルの人間なんだよ。ああ、よかった。これでモデル探しは終了だ。ほぼ決まると思ってくれ。至急、会議をしておく。契約しよう」
「無茶ですーーーー。どうせ、長時間の撮影になるんでしょう?」
「その通りだ。君はモデルの経験が無い。撮影に時間が掛かるだろう。カメラマン達の人件費もかかる。契約金を半分にしようか。ボーナス込みで、30万円でどうだ?」
「そんなーーーー」
「モデルでの名前も決めないといけない。そうだなあ。本名でどうだ?」
「嫌ですーーー」
「決まりだな!」

 朝陽が嫌がっているのに、asahi karasumaruという名前で出すと一貴さんが言い、カメラを収納して、歩き出した。お義父さんの家の方に向かっている。俺達も付いて行き、アンが一貴さんのそばに行き、抱っこされていた。
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