青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 12時半。

 南波さんの番組が始まって1時間が経つ。しかし、その間、お義父さんが番組に出て、話をしている。池に落ちた南波さんがお風呂に入って髪の毛を乾かしている間に放送を止めても良いと言っていたが、どうして南波さんが画面から居なくなったのかという説明を黒崎がして、美形な男性が出てきたことで視聴者が沸き、そこで、放送を続行させることにした。しかし、黒崎はなんだか恥ずかしかったようで、途中からお義父さんに出させておき、その間に二葉と朝陽のことを呼びに行き、彼らにも喋らせていた。

「ここが現場です……。大人の男性の膝の高さの池ですが、ぬかるみがあり、底は滑りやすくなっています。春と秋に掃除をしているのですが、現在ではコケが生え放題です。そこに、この家の息子が落ちたのです。それを救ってくれた南波君も落ちました……」

 お義父さんが南波さんのスマホを持って移動して、落ちた池を映し出した。そして、実況中継を始めた。二葉も隣にいる。普段は恥ずかしがり屋なのに、黒崎製菓の看板を背負っているとなると真剣になり、恥ずかしさが飛んだと言い、お義父さんや朝陽にツッコミを始めたり、時々、会話を始めたりした。彼女はとても真面目だ。南波さんの番組を潰すわけにはいかないという顔をしている。そして、それを見た黒崎が、広報部に異動させてもいいかと言い始めた。

「なかなかいい顔をしている。それに引きかえ、朝陽は何だ。しどろもどろになりやがって……」
「いいじゃん。得意不得意があるんだってば……」
「いいや、もっと度胸が欲しい。プラセルの広告に出ることに決まりそうなんだぞ」
「それはカズ兄さんが強引に決めたんだよ~。朝陽はそういうのは苦手だって言っていたんだよ~」

 胸を張って歩いている二葉とは対照的に、朝陽は背中を丸めて俯きがちにしている。俺はその気持ちが分かるから、しっかりしろなんて言えない。それには理由がある。アクシデントが起きたことで視聴者が集まり、なんと、5000人になったからだ。画面にはカウンターが表示されていて、それを見た朝陽は驚き、カチコチになってしまった。それに、悠人がSNSでツイランドの番組に出るという投稿をしたことでも集まったのだと思う。そして、ついさっき、久弥のSNSも動いた。1時間後ぐらいに出るという告知がされたところだ。すると、朝陽が俺達のところに走って来た。

「夏樹!7000人になったぞ!どんどん人が増えている!」
「朝陽、まずは落ち着こうよ。俺だって緊張しているんだよ。君と同じだよ」「そっか。そうなんだな。久弥さんが出たら、もっと増えるだろうな……。悠人君も出るし……」
「うん。ああーー、15000人だって!すごい数だねえ……」

 画面にはお義父さんが映っている。そして、池の前でリポートして、黒崎家のリビングの窓を映した。そこにはユーリーがいて、絵を描いている姿が映し出された。一貴さん達のことを助け出してお風呂に連れて行き、後は彼らが出てくるまで、のんびり待つことにしたそうだ。

「コメントに、何人家族なのかって書いてあるよ。ああ、滞在中のドイツ人のユリウスですって紹介しているよ~。二葉も映ったよ~」
「なんだよ……。二葉兄ちゃん、元気だな。俺が庇ってやらないといけない人だと思っていたのに……」

 朝陽が肩を落とした。それに対して黒崎が笑い声を立てて、彼の背中を軽く叩いた。そして、お前も、もう一度出てこいと言った。

「お兄ちゃん。俺はいいんだって……」
「男になってこい」
「うひゃひゃひゃーーー」

 俺も朝陽の背中を叩いた。すると、誰かに呼ばれたのか、ユーリーが立ち上がり、俺達に手を振ってきた。そして、南波さんが髪の毛を乾かして、一貴さんの服を借りて出てくると言った。

 その声も放送されているが、ユーリーは平気そうだ。しかも、画面に向かって手を振っている。そして、大きめの服を着た南波さんが彼の後ろに立ち、ユーリーが南波さんの髪の毛を拭いてあげる仕草をした。まだ少し濡れているのだろうか。
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