青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 今、小瀬さんと南波さんの放送はブレイクタイムということで、テントのみが映されている。俺達は少しだけ会話が放送で聞こえるぐらいの距離に移動して、ストーブを囲っているというわけだ。従兄弟2名の片割れが早瀬さんの肩を揉んでいる。もう片方は、久弥の肩を揉んでいる。かなり凝っているそうだ。

「いたたた。ああーー、気持ちが良いなーー。裕理、俺達も恋愛のことでは揉めたよなーー?」
「そうだったか?」
「揉めたぞーー。付き合うまで年数が掛かって、別れた後の再会までにも5年かかって、今はこの距離に居る。人生は分からない物だなーーー。お前が作詞した曲を次のバンドでやりたい。いいだろう?」
「だめだ。この間も返事をしただろう。お蔵入りにしてくれないか……。悠人が居る。それを弾かせるつもりか?」
「裕理さん。俺は良いんだよーーー」

 今、久弥が持ちかけているのは、次のバンドで発表する楽曲のことだ。早瀬さんがインディーズバンドで発表した曲のうち、いくつかをアルバムに入れたいというのが、久弥の意見だ。ディスレクトサイドゼロの一発目の曲を、早瀬さんが作詞した曲にしたいという。

 それは二人が付き合う前に書いた曲で、君のことを失いたくないという気持ちが込められた曲だ。I don't want to lose youという。その後で付き合うことになり、照れくさいながらもステージで演奏して、結局二人が別れてしまい、今はお互いにパートナーがいるという状況だ。その曲に、悠人がアレンジを加えるということで、IKUの中では会議が進められている。後は作詞者の早瀬さんの返事が必要だ。

「ゆうちゃん、うんと、頷いてくれたらいい。後は俺達で勝手にやらせてもらう」
「恥ずかしいから……。悠人だって、良いと言っているけど、引っかかるだろう」
「そんなことはないよ。俺の腕に任せてよーー。まあ、たしかに、一発目の曲が夏樹の作詞じゃないのは引っかかるといえば、そうなんだけど……。でも、その後、ドンドン出していく予定だもん。桜木さんだって、興味を持っているんだよーー」
「それは……」
「早瀬さん、耳が痛いだろーーー」

 早瀬さんは悠人と付き合う前に、インターンで来ていた聡太郎に出会い、恋をして、ちょっかいを掛けていたことがある。そして、伊吹と付き合っていることを知って驚き、手は出していない。気になる子に触るというぐらいで済んでいる。俺としては、久弥に似ているから、一目惚れしたのではないかと想像している。

 人の恋路はそれぞれだ。そこで、朝陽にはいい人がいないのか気になっている。プラセルで出会った人の中で、良いと思った人はいないだろうか。

「あさひーー、君の恋の話を聞きたいんだけど。二葉が居る前で言えよーーー」
「居ないよ。そんな気持ちの余裕はないよ。今だって、恐ろしくてたまらないよーー」
「黒崎さん。見過ぎだよ」
「そうか?朝陽、堂々と言っていいんだぞ。誰が好きだとかいう話は聞いておきたい」
「何もないってば。二葉兄ちゃん、泣き止めよーー。黒崎製菓には遊びに行っているっていうことでいいんだって、お兄ちゃんが言っただろ。おじさんもさ……」
「そうだよ、二葉。そういうことだ」

 会社で何かあったに違いない二葉に対して、さっき黒崎がこう言った。しかも、それを復唱させていた。黒崎製菓には遊びに来ているのだと。お義父さんは苦笑いをしていたが、反論せず、頷くことにしたようだ。

「二葉、もう一度言え。黒崎製菓には遊びに来ています、だ」
「言えないよ!」
「なんだと?お飾りの二葉ですと言え」
「ひどいよーー。あ、ユーリー。なんだよー、まだ南波さんの手を握っているわけ?」
「いいじゃないか。僕に恋をしていたのか?本当に?」
「違うよ!」

 ばし!二葉がユーリーのことを叩いた。そして、泣き笑いをした。何が何だか分からないと言いながら。俺にも分からない。こういう時には万理がいるといいのにと思った。後で電話をして聞いてみようと思った。女の子の気持ちってどんなの?と。変態と言われるだろうか。

 ユーリーはというと、イチャイチャと南波さんと寄り添い、明日はどこに行く?部屋においでよとか話している。小瀬さんは失恋真っ只中であり、良い出会いがあるといいのにと思い、朝陽のことを紹介しようと思った。女の子が好きだというが、そうでもないかも知れないからだ。六槍さんとの仲を噂されていると、一貴さんから聞いてある。
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