青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 それに対して、南波さんは呆れた顔をして、ユーリーの相手をしている。運命の出会いなんかないですよねと肩を落としていたが、ついさっきから立ち直り、ユーリーのことをイジるようになった。それは彼にとって、この恋は絶望的という結果だと感じたようで、考え直してくれと、南波さんのことを説得中だ。

「南波君!僕は君に一目惚れをしたんだ!」
「だめですよ。ユリウスさん。もう聞いたんだから……。僕達、友達から始めましょう。それが良いと思います。だって、ドイツに帰らないといけないかも知れないでしょう?遠距離恋愛になりますし……」
「君がドイツに来てくれ!」
「だめですってば。バーテルスビスケット会社に転勤になったら、あなたと一緒にドイツで暮らしてもいいけど……。月島さんがいるでしょう。付き合ったらどうですか?」
「僕は君がいい。好きなんだ!」
「ふうん。その言葉、遠藤さんの会社の人にも言ったんですよね?IKUの営業課の彼に……」
「それは……」

 ユーリーが言葉に詰まった。今月に入り、遠藤さんの家にIKUの営業課の人が訪ねてきていて、散歩中のユーリーが出会い、紹介された。そこで、二人は意気投合し、お茶を飲みに行き、少しだけイチャイチャと話したそうだ。指にキスをするなどしたのだろうと思う。月島さんにはその映像が見えて、だから、ユーリーに同じことをしたのだという。もちろんその彼とは連絡先の交換は済んでいて、デートの場所を打ち合わせていたのだと思う。そこへ、南波さんと出会ったわけだ。

 遠藤さんは今、長谷部さんと一緒にお義父さんや黒崎と話をしている。佳代子さんが帰って来た後、新しい家族のリリーにミルクを飲ませて、フリージアとリクに晩ご飯を食べさせて、眠くなっている3匹を見届けた後、ここに来てくれた。

「夏樹君。ユリウス君には困ったね。営業課の多々良たたら君だって、出会いが欲しかったんだろう。ユリウス君のことを好きになっているかも知れない。そこまで進んでいたんじゃないかなあ……」
「うーーん。ユーリーが言い訳するから分からないよ。出会ったその日にイチャイチャと話して、連絡先の交換をしたのが10日前だから……。まだ待ち合わせデートはしていないって言うけど……。本当にそうかなーー?月島さん、どう見える?」
「まだデートはしていないと思うよ。僕は間に合った。ああ、よかった……」
「ふうん……」

 月島さんの目が冷たい。ユーリーに対してだ。そして、必死に弁解している姿はかっこ悪いぞと、声を掛けている。それに対して、久弥と早瀬さんが肩を震わせて笑いだし、小瀬さんと従兄弟2名に声をかけた。恋が上手くいくといいねと。

 小瀬さんと南波さんが恋に発展するなら、それは良いと思う。小瀬さんは悪い人に見えないからだ。ユーリーのように、じっと見つめて口説くなんてしていなくて、南波さんのことを追いかけつつも放送の手伝いをしていたというからだ。それは南波さんから聞いた。小瀬君は手伝ってくれたんだよと。

「ユーリー。そこまでにしたら?月島さんの目が冷たいよ~」
「月島!君のせいだ!」
「はははは」

 ユーリーが怒っている姿を月島さんが笑って見ている。とても恋をしているようには見えない。俺がそんなことを思っていると、彼が立ち上がり、ユーリーのそばに行った。そして、南波さんの手を取り、イチャイチャとし始めた。

「南波君。是非とも、会食の席に来てくれ」
「喜んで。高野さんが中山社長と釣りに行くとき、一緒にどうですかって、小瀬君に連絡が入ったそうです。僕、月島さんと行きたいな」
「僕も喜んで。君に恋をしそうだよ」
「ユリウスさんのことが好きなんでしょう?」
「そうだよ。僕だって一目惚れだ。二股を掛けようとする男でも良いんだよ。僕が奪うからね」
「はははは。かっこいい!」

 南波さんの番組では、ユーリーと一瞬付き合ったが、友達から始めることになったと、彼から報告がされた。そして、ユーリーは月島さんから一目惚れをされて、口説かれているところだということも報告していた。そして、さっき、月島さんに電話が掛かってきていた。キシヤマ味噌の部長さんからだ。ほどほどにしてくださいというメッセージだった。そんな月島さんに、ユーリーが恨みがましい視線を向けた。

「月島!僕と付き合う気があるなら、口説いてこい!」
「いいよ。どんな言葉にしようかな?今、読み取ってあげる。今までのことをね……。色々と読んだけど、その時に忘れたんだ。へえーー。“僕の家はオバケが出るんだ。見たいだろう?おいでよ”、か。そんなことで誘いになるのか?」
「なるよ!」
「ずっと恋人がいないくせに……。ほんのひとときの恋の相手なら、星の数ほど居るんじゃないか?」
「げええええっ」

 さすがに悠人が反応した。ずっと冷静だったのに、嫌な顔をしてユーリーのことを見ている。悠人だって、ユーリーのことは良い人だと信じていた。真面目で、恋に奥手だという印象だ。しかし、南波さんを口説いているところを見て、違うかも知れないと思ったそうだ。そして、一貴さんのように、あれこれと手を出す印象に変わったそうだ。
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