青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 二葉は都内に来る前の大学在学中に、地元の市役所の採用試験に合格したことがある。結果は新聞に載り、倉口二葉という名前があったそうだ。それは11月のことで、その2ヶ月後に訪れたお正月では、高校時代の仲良しグループからの年賀状が1通も来なかったそうだ。そして、その中の1人からはラインで、親からあんたもしっかりしなさいと叱られてツラいということが語られていたという。二葉が会って話そうよとラインの返事をしようとすると、志乃さんが止めたそうだ。一緒に合格した志乃さんには、こう届いたそうだ。お恨み申し上げると書かれていたそうだ。志乃さんは気味が悪くなったし、二葉もそうだった。

 そして、中学時代の友達の一人から届いた年賀状には、どうして試験を受けることを何も言ってくれなかったのかという言葉が殴り書きでされていたそうだ。そして、二葉は市役所には入らずに、大学卒業を目指すことになった。それは倉口さんやママと話し合った結果、選んだ道だった。決して、脅しに屈したわけではない。志乃さんも大学に残った。

 そして、成人式に出席することになり、二葉は中学時代の友達からの誘いで、仲良しグループの4人と待ち合わせをして会場に向かうことになったそうだ。すると、朝陽と同じ大学の当時医学生だった友達から、二葉の試験結果のことに触れられて、二葉は立派だと母から嫌みを言われたのだ、どうしてくれると言われたそうだ。しかし、その時は冗談のような感じだったから気にせずにしていた。

 その後、二葉がママ達と都内に来た後、その子以外の友達3人は、兄である黒崎のことに興味を持った。しかし、ママや黒崎から詳しいことは話すなと言われていたから、そうしてあった。そして、友達に年賀状のやり取りのために新住所を伝えた後、遊びに行ってもいいかと聞かれて、その度に断るしか無かった。当時の二葉には時間が無くて、行動も制限されており、全てママが決めていた。友達は怒っていたようだ。

 しかし、医師を目指す友達だけは分かってくれて、二葉としては打ち解けた存在に変わった。それに、二葉がまだ地元に住んでいた頃、悩んでいることがあると言われて話を聞いてみると、彼氏との子供を妊娠したかも知れなくて、結局そうではなかったが、それが分かるまで鬱だったことや、性行為を断ることで見捨てられるのではないかという恐れがあるのだと打ち明けられたそうだ。それは父親のことが引っかかっているからだという。父親が彼女が小学1年生の時に失踪し、7年経って母と離婚し、今は勝手に認知した子供が居るのだという話だったそうだ。倉口さんに話すと、首を傾げる感じだったそうだ。彼女の家は近所にあり、小学1年生の時に、名前が母親の旧姓になっていたと思うと言っていたそうだ。

 そこで、友達に戸籍謄本を見せてもらうと、彼女が言っていることとは別の事実が記載されていたそうだ。失踪したとされる日に両親が離婚しており、そのお父さんは再婚しており、再婚相手との間に子供が生まれて、戸籍に名前が載っていたのだという。それを指摘すると、友達はこう言ったそうだ。自分の記憶が正しいはずなのだと。お父さんは失踪しはずだと。そこで、市役所まで行って聞いてこいと勧めたそうだ。そして、二葉と同じ事を言われたそうだ。しかし、友達は納得しようとしない。今でもそうなのだと思うと言っていた。二葉が、お母さんに聞けと言っても、話したくないと言ったそうだ。そして、不安定な気持ちなのだという彼女のことを二葉は心配し、たまに連絡を取り合っていた。

 その後、彼女が医師国家試験に合格したという知らせを聞き、もちろん、二葉はおめでとうというラインを送った。すると、最近になり、彼女が結婚を考えている人が現われて、結婚式に来てくれるだろうかというラインが入ったそうだ。その文面には、二葉のために、二葉のことをいじめていた、自分にとっては親友の男子生徒を呼ばないことや、あなたを選ぶから結婚式に出席してくれと書かれていたそうだ。そして、本当は彼の方を選びたいのだとも書かれていた。だから、もし二葉が出席しないのなら、その子を呼ぶのだろう。

 そのラインがきたのは昨日のことだ。黒崎は二葉に返事を保留にさせている。いじめていた男子生徒というキーワードが引っかかったそうだ。そして、まさか成人式での話や親との記憶の話があるとは思わず、月島さんとの話で判明し、朝陽を退学させて、聖アルテマ学園大学への入学を考えさせて良かったと言い出した。今、朝陽が休学している大学は先輩後輩の関係が密であり、その友達との関係が密になると困るのだという。嫌な予感しかしない。そう言っていた。

 さらに、まだ問題はある。色々と詮索してきた友達の一人で、高校も同じだったその子の前で、高校2年生の時に、進路希望調査用紙に、なりたい職業を“栄養士”と書いたら、その子が真似をしたそうだ。その子は二葉とは別の地元の短大に入学して栄養士を目指したそうだ。そして、22歳で結婚した。

 その後、今年に入って彼女が旦那さんと建てた家が、倉口家の家の外壁の色や間取り、階段の位置も床の色まで、そっくりそのままだったそうだ。それは友達が送ってきた動画や写真で分かったことだ。特に、二葉の居た部屋の床の色が特徴的で、それも同じ色にしか見えなかったという。ポスターを自分の部屋の壁に貼ったままで家を出てきた二葉だったが、そのポスターの位置まで同じだという。

 もちろん、その友達は、二葉がママ達と都内に来た理由を知っている。そして、あなたと何でも同じにしたいのだというラインも添えられていたそうで、最後の写真には、二葉が地元に居たときに気に入って、よく着ていた服とそっくりな格好をした彼女が写っていたそうだ。

 俺はその話を聞いて驚いた。そこで、やっぱり万理に聞いてみたくなった。女の子の気持ちってどんなだろうかと。黒崎とお義父さんは眉をひそめて話を聞き、まだありそうだねと月島さんが言ったことで、二葉がもうないよと言ったが、俺もまだありそうだと思った。

 やれやれと思いながら空を仰ぐと、月が出ていて、なんだか胸が痛くなった。二葉や朝陽には、今は幸せに暮らしていると思ってくれているといいのにと思った。

「黒崎さん。あのさ、お医者さんになった子って、そんなに悪い子かな。気持ちがグラグラなんだろ?そう時ってあるからさ……」
「いや……。ん?電話だ。出る……。裕理にも掛かってきたようだ……」
「うん……」

 すると、黒崎と早瀬さんのスマホに着信が鳴った。黒崎製菓の役員からだった。それは、黒崎製菓に爆破予告メールをしてきた犯人が捕まったという情報だった。
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