青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 朝陽がモデルをするなんて、ママは想像していなかったそうだ。だから、急なことですごく驚いていた。二葉だって引っ込み思案な性格をしているのに、ママは彼女にモデルの仕事の誘いが会った時、やらそうとしていた。ほとんど強引にだ。しかし、朝陽にはさせようとはしなかった。それは、朝陽は性格が大人しいからだと言っていた。

 それを黒崎はこう言い返した。反対だと。二葉は気が弱い性格をしていて、どちらかというと、朝陽の方が勝ち気な性格をしているのだと。そして、ママが、こう言った。二葉はしっかりしているのだと。それを、黒崎が言い返した。しっかりしないといけなかったのだろうと。そして、その時、俺は2人の電話を止めた。

 朝陽と二葉はママと直接会っていないし、電話でも話していない。二葉は一言だけ、ママと電話で話した。黒崎が電話をかわったときだけだった。ママは今回の事件のことを心配していた。だから、会いたいと言っていた。しかし、黒崎がまだ会わせないと決めた。俺としては、会わせてあげたら良いのにと思った。

 倉口さんからの連絡は来ていない。そこで、黒崎の方から電話を掛けた。家には何も無かったそうだ。警察が事情を聞きに訪ねてきたかと聞くと、言いたくなそうにしていたから、詳しく聞かなかったそうだ。事件の前に、お義父さんに脅迫まがいの言葉を言ったことがあるからだと思うと言っていた。

 しかし、その後で、土地と家は二葉には譲らないと電話を掛けてきたぐらいだから、こっちに何か連絡してきても良いとは思った。二葉のことが心配ではないのだろうか。朝陽によると、倉口さんは、逮捕された子が二葉の友達だと知っていると思うと言っていたからだ。もう彼女は黒崎姓になったから、関係ないと思ったのか、それとも、遠慮しているのか。

 お義父さんは連絡が来なくて良いと言いながらも、二葉には連絡してきたら良いのではないかと言いたそうだった。事件を起こした子が彼女と同じ年だから、友達関係があったのではないかと想像していないわけがない。だから、俺達は寂しくなった。もうお金のことは親戚の叔母さんが解決してくれたから、二葉は用済みなのかと思ったからだ。腹が立つやら、静かで良いやら、複雑な気持ちだ。

 その二葉は今日は会社に行っている。南波さんと話ができるようになり、嬉しそうだった。敷島さんには彼の方からお付き合いを断ってくれたそうだ。敷島さんとしては残念だと言っていたそうだ。そして、友達づきあいをしたいと思うが、事件のことでバタバタしているだろうから、こっちからは連絡しないと言っていたそうだ。落ち着いたら、また連絡をすると良いと思うと、南波さんが言ってくれたと聞いてある。

「ただいまーーー」

 家の中に入ると、アンが迎えに来てくれた。もう拗ねていないようだ。単に、外に出るのが寒かったということなのか。ユリウスを床に下ろすと、アンと一緒にリビングへ走って行った。

「黒崎さん。カズ兄さん。ゆず湯を入れるけど、飲む?あれ?もう入れてあったんだね。これ、俺の分?」
「そうだ。ちょうどいいぐらいに冷めているだろう」
「うん。昨日、少し舌を火傷したからね。カズ兄さんがお湯を注いでくれたの?」
「いや、圭一だ」
「え?黒崎さん、そんなことが出来るの?ゆずペーストをマグカップに入れて、お湯を注がないといけないんだよ?」
「それぐらいなら出来る」

 黒崎が言い返してきた。俺としては驚きだ。今年に入って、こういうことは2回目だ。そうだ。たったの2回しか、こういうことがなかった。お義父さんの家で紅茶を煎れたのを目撃したことがあるが、この家に帰った後は、自分でポットを触ろうとしないのに。

「黒崎さん。どうしたんだよ?」
「冷ましておきたかったからだ。こっちに来て飲め」
「うん」

 マグカップを持ってリビングに行くと、一貴さんがいくつかの写真を見せてくれた。朝陽と六槍さんが写っている、広告撮影現場での休憩中のものだ。秘書チームの中からモデルが出ることになり、会社では話題になったそうだ。それは、朝陽が出るとなれば、六槍さんもいう空気だったそうだ。それだけ2人は息が合っていて、いいコンビなのだという。
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