青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
320 / 938

11-3

しおりを挟む
 プラセルの中で六槍さんが朝陽のことを連れて歩いているのはお馴染みの光景であり、その姿が春になると無くなるのが寂しいと言ってくれた人達がいたそうだ。一貴さんからこき使われて、泣きそうになった朝陽のことを包み込むようにして守っているのが、六槍さんなのだという。

 その彼は朝陽のことが好きだと言ってくれている。そして、撮影の当日に告白してくれた。朝陽の返事としてはNOではなかった。本当はNOだと言いたかったようだが、六槍さんを前にすると本音が出てしまい、NOじゃないんだけどという答えを出したそうだ。その現場に居た一貴さんは驚き、カップル成立かと声を上げて、こっそりしていた告白と返事がオープンになってしまった。

「カズ兄さん。告白後の写真なんだろ?二人とも、良い感じだね」
「ああ。僕が声を上げたことで、告白したのが周囲にバレたんだけど、それが良かったみたいだ。無かったみたいになったって、二人が言ったんだ」
「それ、だめじゃん。無かったことには出来ないよ~」
「夏樹。こぼれるぞ。ちゃんと持て」
「あ、いけない……」

 気がつくと、俺はマグカップを倒すようにして持っていた。これでは一貴さんのことを言えない。俺は持ち直して座り、写真を見た。六槍さんが朝陽の隣に立ち、ニコッと笑っている。そして、朝陽は半袖姿で寒そうな顔をしている。ほとんどを室内のスタジオで撮ったが、広告に出す写真の大きな物は外で行われた。そこは沿岸添いの公園で、朝陽が走り回っているところを撮影されている。

「朝陽、良い顔しているね。撮影の合間は寒そうな顔をしているけど……」
「ああ、この日は寒かった。朝の空気の方が良い写真が撮れるから、7時からスタンバイした。朝焼けの中で撮った物を大きなポスターにして、店頭に貼る。これだよ……」
「へえーー。まるでプロのモデルさんみたいに写っているだね!」

 写真の良さに驚いた。朝陽はカメラを前にしてカチコチになっていたというのに、自然な笑顔をしている。クールな真顔は、目元がママに似ている。キリッとした目だ。真っ黒い瞳が俺達を見つめているようだ。

「この写真は加工してある」
「どこを?」
「背景と、朝陽君の目だ。瞳を真っ黒にさせた。光が入ると薄く見えたから、印象を強くしようと思って、黒にした。圭一に似ているか?」
「ううん。ママに目元が似ているのは共通しているけど、顔が違う風に写っているから、兄弟だとは分からないなあ」
「そうだろう。僕もそう思った。朝陽君に、実のお父さんらしき高校の先生の写真はないのか聞いたら、持っていないという話だった」
「なんてことを聞くんだよ~」
「悪かったか?」
「悪いよ~。朝陽は気にしているんだ。親子鑑定はした方が良いって思っているそうだよ……」
「しないといけないことはないだろう。このままでも良いんじゃないのか?」
「へえーー。カズ兄さん。珍しく、優しいことを言うんだね。朝陽はママが先生と繋がっているから、落ち着かないんだよ……」

 朝陽が気にしていることだ。いくら自分の子供だと言い張ってきたとはいえ、先生がママに振り込みをするのをやめさせないのはいけないことだと言っている。しかし、黒崎が聞いたママの率直な言い分としては、“私は彼とはよりを戻すつもりは無いことは伝えてあるの。それでも振り込みをするって言うなら、止めない”ということだった。

 その時、黒崎がDNA鑑定が先だろうと言うと、そうでないと先生が納得しないからだと言うから、黒崎が切れた。ばかやろうと言っていた。朝陽は目の前に居た。二葉もだった。黒崎が嘆いていて、背中をさすってくれていた。俺はやっぱりママはそう答えたのかと予想が当たり、落ち着かない気分になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...