青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 お義父さんの家では、お手伝いさんがご飯を作ってくれている。お義父さんの家の洗濯物もやってくれている。しかし、今日の昼ご飯は俺が用意するということで、山崎さんが手伝ってくれている。ネギを切ったり、食器を用意したりしてくれた。

「山崎さん。休んでいてよ。朝ご飯、大変だったんだろ?」
「そうでもないのよ。一貴さんが手伝うって言ってくれて、一緒にキッチンに立てて面白かったのよ」
「かえって面倒だっただろ~。ふむふむ。昨日のメニュー表はこうなっていたんだね……」
「ええ。見事にお蕎麦ばかり……」

 壁には1週間の献立表が貼ってある。みんなの分だ。急に出かけることになった時は翌日にそのメニューにしたり、来客が会ったときなどは出前を取ったり、臨機応変に変わる。冷蔵庫にあるもので作って貰うこともある。そこで、買い物の量が多いことから、宅配で食材を用意している。その方が時間の効率がいいからだそうだ。俺の家では黒崎と2人だから、スーパーに行ったり、宅配を頼んだりと、色々選んでいる。

 しかし、今はお義父さんの家の家族数が増えたし、こうして時々俺がキッチンに立ったり、おかずを差し入れすることがあり、そのお返しということで、何か美味しい物を作って届けてくれることもある。そういうわけで、冷蔵庫には食材がぎっしりと詰まっている。食品棚には蕎麦乾麺だらけだ。

 今週は一貴さんの好きな物をメインで作るという週だから、献立表は蕎麦ばかりだ。今朝はそうではなかった。ごく普通に、パンと卵料理とサラダとスープだ。水曜日ということで、週の真ん中だから、蕎麦は無しにしたそうだ。そこで、俺が用意することになった。ということで、毎日が蕎麦ばかりだ。

 山崎さんが部屋で休んでくると言い、休憩に入った。俺は鰹と昆布で出汁を取り、ほんのりとした匂いを嗅いだ。

「うーーん。良い匂いだなあ。醤油はキシヤマ製麺の出汁醤油だね。良いのが出て良かったなあ。しかも、減塩だから、カズ兄さんが喜んでいたっけ……」

 一貴さんはとにかく蕎麦が好きだから、醤油を使うことが多い。そこで、塩分の取り過ぎになっていると、病院で注意されている。ぶっかけ蕎麦が好きだからだ。わりと味の濃いめんゆつだ。そこで、月島さんが新商品をプレゼントしてくれた。キシヤマ製麺で作った出汁醤油だ。塩分を控えめにしてあるが、十分に醤油の味がするのだという。昨日うちで使ったら、とても美味しかった。そこで、今日の昼ご飯でも使うことにした。黒崎も美味しいと言っていた。

「お醤油をどれぐらい入れたら良いかな~。どぼどぼっと……」

 味見をしながら味を調整して、めんつゆが出来上がった。後は六槍さんの到着を待って、麺を茹でるだけだ。彼もお蕎麦が好きだから、一貴さんと食の好みが合っている。ただし、六槍さんは温かい蕎麦派で、一貴さんはざるそば派だ。

「それにしても……。カズ兄さんってば、すごいことをするよねえ。久弥と知り合ったばかりの頃に招いた立食パーティーで、ざるそばを食べていたなんて……」

 それは今から数年前のパーティーでのことだ。久弥から聞いてある。ディアドロップ時代にプラセルが衣装提供をした関係で、久弥がプラセル主催のパーティーに招かれた。そこで、ゆっくりと一貴さんと会う機会ができたわけだが、周りは立食パーティーらしい食べ物と飲み物を楽しんでいるのに、一貴さんだけが椀を持って箸を使っていたからどうしたのかと思って久弥が近づき、ざるそばを食べていたことが分かったそうだ。

 その時、彼のことを、変わった人だと思ったそうだ。しかし、久弥も蕎麦が好きだから意気投合したところ、パーティーの終わり際で壁に押しやられて口説かれてしまい、なんとか断って逃げてきたという。その時の久弥は早瀬さんのことは忘れられず、蔵之介さんと付き合う前だったから、ますますそうなった。
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