青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 二葉はどうだったかというと、やっぱり1人で寝ていたそうだ。3歳までは両親と同じ部屋だったと思うとは言っていた。ちょうどその頃、ママが朝陽のことを妊娠中だったから、上の子になるから、独り立ちしたのかも知れない。朝陽はママから添い寝されていたそうだ。二葉はそれを見て、寂しかったそうだ。だから、町野先生から習った体操をやる度に、お母さんの腕ってどんなだろうと思ったそうだ。

「黒崎さん。ユーリー。それを言ったら、ママへの嫌みになるから、やめておけよーー」
「いや、少しぐらい話しても良いだろう。母親が居るのに、温もりが何か知らないと言いたい」
「いや、圭一。僕はそう言わないよ。そういう体操を習ってきたんだって、ありのままを報告する。嘘だよ、言わないよ」
「よかったよ……。俺、恥ずかしいよ。俺なんかさ……」

 俺の小さいときは、いつも母に抱かれていた。1歳年下の万理の方が自立が早かったと思う。俺は伊吹と小学6年生まで一緒にお風呂に入っていたが、万理は3歳から1人で入っていた。万理が1人で入るというからだ。もちろん、最初の頃は母が浴室のドアのそばに立ち、見守っていた。そして、大丈夫そうだと分かり、一人にさせた。そして、万理はごく普通にお風呂から出てきて髪の毛を乾かし、大人びていた。漢字だって、万理の方が書き始めるのが早かった。俺は兄として情けない。

「夏樹、どうしたんだ?」
「万理のことだよ~。なんでも俺より早くできるようになってさ~。喧嘩は無かったけどね」
「そうだろう。万理ちゃんは大人だからな。お前のことを馬鹿にすることなんかなかっただろう。お兄ちゃんのくせにできないのかなんて、言わないだろう」
「うん……」

 その万理は春から大学4年生になる。社会科の教員を目指して頑張っている。てっきり、国語かと思っていたのに。本を読むのが好きだし、色んな漢字を覚えているからだ。しかし、開明高校では生徒指導の方に力を注ぐようになるだろうから、田中先生が言うには、担当教科以外の用事が沢山あるだろうということだった。そして、女子生徒のメンタルケアを重点に置いてやっていくだろうということも聞いた。

「万理がさ。大学生のうちに、ここに遊びに来たいって言うんだ。呼んで良いだろ?」
「もちろん構わない。いつでも来てもらいたい。ユーリーも会いたがっている」
「そうだよ。もう一度会いたい。ずっとここに居るんだけど、いつか再会したいというのは、なかなか実現しないこともある。中山家の新居選びはどうなったかな?」
「もう決まりつつあるそうだよ。結局、車で5分の距離にあるマンションになったんだ。そこなら駅が近くなるから、お父さん達が車を運転しなくなった後、便利だからって。あ、電話だよ」

 黒崎のスマホに着信が入った。相手は月島さんだった。黒崎が電話に出ると、あけましておめでとうございますという挨拶と、今日は予定通りに神社前で待ち合わせして、参拝の後で、お義父さんの家に来てくれるという予定で変わりないそうだ。

「月島さん。すみません。せっかくの正月なのに。聖河も予定通りです。もう分かるんですか?一体、どういう風にして、離れた相手の行動が分かるんですか?はい。ここには夏樹とユーリーがいます。はい。たった今、母と電話で話していました」
「わあ~~~~」
「ああ……」

 黒崎の会話から、月島さんがこっちのことを見ているのだと分かった。どうやったら見えるのだろう。ユーリーはため息をついている。二股したらバレるということへの嘆きだろうか。

「ユーリー。二股恋愛なんてだめだよ。すぐに分かるよ」
「もうしない。いや、この間はそうじゃなかったんだ。だめかなって思っていた。だから、南波君のことを見たときに心が動いて……」
「はいはい。アン、元気だね。そのセーター、温かいだろ?」

 アンが俺達の足下で遊び始めた。厚いニットを着せてある。ちょこまかと歩き回り、また俺達の足下に戻ってきた後、門の方を見て小さく吠えた。誰か来たのだろう。俺とユーリーが門のそばに行くと、ご近所さんがお菓子を持って来てくれていた。遠藤さんの家にはリクが遊ぶためのボールと、フリージアとリリーのための猫じゃらしだ。俺達は年始の挨拶をして、お正月だなあと言った。
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