368 / 938
12-20
しおりを挟む
18時。
俺達は今、聖加世病院の救急センターの待合に居る。処置室では目を覚ましたばかりの一貴さんが点滴の針を怖がり、真っ青になっているとお医者さんから報告を受けたばかりだ。月島さんも付き添って、俺達と一緒に来てくれている。心配なのだという。このまま帰ったとしても気になって落ち着かないから、目を覚ますまで一緒に居たいと言ってくれた。
ここに着いた後も一貴さんの顔色は悪く、頭やお腹など、いろんな場所のCTを撮り終えて、異常なしという診断を黒崎が聞いた。お義父さんも来ているが、足が痛くなってしまい、ソファーで休んでいる。俺達はその周りにある椅子に座り、一貴さんが目を覚ますのを待った。顔色が元に戻らず、お腹が鳴りっぱなしだったという報告もお医者さんから受けて、本当に空腹なんだろうと思った。そうだと良いと思った。他に何もない方が良い。
そして、ついさっき一貴さんが目を覚まして、お腹が空いてフラフラすると言ったそうだ。血液検査にはその様子がしっかりと出ていたそうで、血糖値が低くて、血圧なども低いそうだ。
「ああーー、そっとしておいてくれないか!」
「カズ兄さんの声だ……」
俺が立ち上がり、処置室の方をのぞき見るようにすると、ベッドから起こされた一貴さんが体重計に乗せられようとしているのが分かった。点滴の針が刺さったままだ。だから、わめいているのだろう。同じ部屋には黒崎がいて、早く乗れと急かしている。そして、ここの精神科に転院してきたときの体重が、たった2週間で4キロも落ちていることが分かった。
「マジで?」
「夏樹か?」
「うん。俺だよ……。入ったらだめだよね……」
部屋の中は忙しそうだ。黒崎も出てこようとしている。しかし、一貴さんがそばに居てくれと言うから、黒崎が立ち止まった。そして、嫌そうな顔をした。
「一貴。点滴が終わった後で来る。それまで寝ていろ」
「嫌だ。怖い。お父さんはいないのか?」
「来ている。足が痛むから待合室で休んでいる。聖河は町野さんと話をしている。月島さんも来てくれている。二葉も夏樹もいる。ユリウスとアンは家で留守番だ。ユーリーが付き添っている。お前、腹が減っているのか?」
「ああ、すごく空腹だ。何か食べたい。甘い物がいい。え?僕は今夜はここに居ないといけないのか?」
「ああ。念のためだ。どうしても帰るというなら、そうしてもいいそうだが……。危ないからここにいろ。俺が一晩付き添ってやる。親父達は帰す。まだ食べられないそうだぞ。まずは点滴を受けておけ」
「僕はお腹が空いているんだ……」
一貴さんが泣きそうな声を出した。すると、担当のお医者さんが入ってきて、一貴さんに最近の食事の内容を聞き始めた。ざるそばばかり。そう答えるだろうと思っていたら、ちゃんとした内容が出てきて、驚いた。
「カズ兄さん。嘘だろ?お蕎麦しか食べていないんだよね?」
「ああ、夏樹君。僕は会食の席で色々と食べてある。フレンチとイタリアン、鮨もあった。でも、27日からは食欲が無くて、かりんとうを食べていた。ほら、ちゃんとそば以外のものを食べてあるだろう?」
「嘘だね。それ。会食の席は和食系だろ?お蕎麦を食べていたんだろ?ちゃんと話さないといけないよ」
「あ……」
「六槍さんに聞いたら分かるよ。どの店だったかなんて……」
「ああ……。あの……。僕は偏食がありまして、12月の中旬から、蕎麦しか食べていません。肉類ですか?鴨南蛮蕎麦を一度食べました。肉はそれっきりです。卵ですか?あったかなあ……。野菜の栄養は青汁で摂っています。毎朝飲んでいます。そうです。食事は、ざる蕎麦と温かい蕎麦と、青汁だけです」
「はあ……」
一貴さんが正直に話し始めて、ため息をついた。すると、お医者さんが、これは栄養失調だと言った。何かの紙を見て、そう言った。月島さんが言ったとおりになり、もう驚かなくなった。一貴さんが目を覚ますタイミングも当てられたからだ。それと、一貴さんの額が強く光り始めているだろうということも教えてくれた。
俺達は今、聖加世病院の救急センターの待合に居る。処置室では目を覚ましたばかりの一貴さんが点滴の針を怖がり、真っ青になっているとお医者さんから報告を受けたばかりだ。月島さんも付き添って、俺達と一緒に来てくれている。心配なのだという。このまま帰ったとしても気になって落ち着かないから、目を覚ますまで一緒に居たいと言ってくれた。
ここに着いた後も一貴さんの顔色は悪く、頭やお腹など、いろんな場所のCTを撮り終えて、異常なしという診断を黒崎が聞いた。お義父さんも来ているが、足が痛くなってしまい、ソファーで休んでいる。俺達はその周りにある椅子に座り、一貴さんが目を覚ますのを待った。顔色が元に戻らず、お腹が鳴りっぱなしだったという報告もお医者さんから受けて、本当に空腹なんだろうと思った。そうだと良いと思った。他に何もない方が良い。
そして、ついさっき一貴さんが目を覚まして、お腹が空いてフラフラすると言ったそうだ。血液検査にはその様子がしっかりと出ていたそうで、血糖値が低くて、血圧なども低いそうだ。
「ああーー、そっとしておいてくれないか!」
「カズ兄さんの声だ……」
俺が立ち上がり、処置室の方をのぞき見るようにすると、ベッドから起こされた一貴さんが体重計に乗せられようとしているのが分かった。点滴の針が刺さったままだ。だから、わめいているのだろう。同じ部屋には黒崎がいて、早く乗れと急かしている。そして、ここの精神科に転院してきたときの体重が、たった2週間で4キロも落ちていることが分かった。
「マジで?」
「夏樹か?」
「うん。俺だよ……。入ったらだめだよね……」
部屋の中は忙しそうだ。黒崎も出てこようとしている。しかし、一貴さんがそばに居てくれと言うから、黒崎が立ち止まった。そして、嫌そうな顔をした。
「一貴。点滴が終わった後で来る。それまで寝ていろ」
「嫌だ。怖い。お父さんはいないのか?」
「来ている。足が痛むから待合室で休んでいる。聖河は町野さんと話をしている。月島さんも来てくれている。二葉も夏樹もいる。ユリウスとアンは家で留守番だ。ユーリーが付き添っている。お前、腹が減っているのか?」
「ああ、すごく空腹だ。何か食べたい。甘い物がいい。え?僕は今夜はここに居ないといけないのか?」
「ああ。念のためだ。どうしても帰るというなら、そうしてもいいそうだが……。危ないからここにいろ。俺が一晩付き添ってやる。親父達は帰す。まだ食べられないそうだぞ。まずは点滴を受けておけ」
「僕はお腹が空いているんだ……」
一貴さんが泣きそうな声を出した。すると、担当のお医者さんが入ってきて、一貴さんに最近の食事の内容を聞き始めた。ざるそばばかり。そう答えるだろうと思っていたら、ちゃんとした内容が出てきて、驚いた。
「カズ兄さん。嘘だろ?お蕎麦しか食べていないんだよね?」
「ああ、夏樹君。僕は会食の席で色々と食べてある。フレンチとイタリアン、鮨もあった。でも、27日からは食欲が無くて、かりんとうを食べていた。ほら、ちゃんとそば以外のものを食べてあるだろう?」
「嘘だね。それ。会食の席は和食系だろ?お蕎麦を食べていたんだろ?ちゃんと話さないといけないよ」
「あ……」
「六槍さんに聞いたら分かるよ。どの店だったかなんて……」
「ああ……。あの……。僕は偏食がありまして、12月の中旬から、蕎麦しか食べていません。肉類ですか?鴨南蛮蕎麦を一度食べました。肉はそれっきりです。卵ですか?あったかなあ……。野菜の栄養は青汁で摂っています。毎朝飲んでいます。そうです。食事は、ざる蕎麦と温かい蕎麦と、青汁だけです」
「はあ……」
一貴さんが正直に話し始めて、ため息をついた。すると、お医者さんが、これは栄養失調だと言った。何かの紙を見て、そう言った。月島さんが言ったとおりになり、もう驚かなくなった。一貴さんが目を覚ますタイミングも当てられたからだ。それと、一貴さんの額が強く光り始めているだろうということも教えてくれた。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる