青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 18時。

 俺達は今、聖加世病院の救急センターの待合に居る。処置室では目を覚ましたばかりの一貴さんが点滴の針を怖がり、真っ青になっているとお医者さんから報告を受けたばかりだ。月島さんも付き添って、俺達と一緒に来てくれている。心配なのだという。このまま帰ったとしても気になって落ち着かないから、目を覚ますまで一緒に居たいと言ってくれた。

 ここに着いた後も一貴さんの顔色は悪く、頭やお腹など、いろんな場所のCTを撮り終えて、異常なしという診断を黒崎が聞いた。お義父さんも来ているが、足が痛くなってしまい、ソファーで休んでいる。俺達はその周りにある椅子に座り、一貴さんが目を覚ますのを待った。顔色が元に戻らず、お腹が鳴りっぱなしだったという報告もお医者さんから受けて、本当に空腹なんだろうと思った。そうだと良いと思った。他に何もない方が良い。

 そして、ついさっき一貴さんが目を覚まして、お腹が空いてフラフラすると言ったそうだ。血液検査にはその様子がしっかりと出ていたそうで、血糖値が低くて、血圧なども低いそうだ。

「ああーー、そっとしておいてくれないか!」
「カズ兄さんの声だ……」

 俺が立ち上がり、処置室の方をのぞき見るようにすると、ベッドから起こされた一貴さんが体重計に乗せられようとしているのが分かった。点滴の針が刺さったままだ。だから、わめいているのだろう。同じ部屋には黒崎がいて、早く乗れと急かしている。そして、ここの精神科に転院してきたときの体重が、たった2週間で4キロも落ちていることが分かった。

「マジで?」
「夏樹か?」
「うん。俺だよ……。入ったらだめだよね……」

 部屋の中は忙しそうだ。黒崎も出てこようとしている。しかし、一貴さんがそばに居てくれと言うから、黒崎が立ち止まった。そして、嫌そうな顔をした。

「一貴。点滴が終わった後で来る。それまで寝ていろ」
「嫌だ。怖い。お父さんはいないのか?」
「来ている。足が痛むから待合室で休んでいる。聖河は町野さんと話をしている。月島さんも来てくれている。二葉も夏樹もいる。ユリウスとアンは家で留守番だ。ユーリーが付き添っている。お前、腹が減っているのか?」
「ああ、すごく空腹だ。何か食べたい。甘い物がいい。え?僕は今夜はここに居ないといけないのか?」
「ああ。念のためだ。どうしても帰るというなら、そうしてもいいそうだが……。危ないからここにいろ。俺が一晩付き添ってやる。親父達は帰す。まだ食べられないそうだぞ。まずは点滴を受けておけ」
「僕はお腹が空いているんだ……」

 一貴さんが泣きそうな声を出した。すると、担当のお医者さんが入ってきて、一貴さんに最近の食事の内容を聞き始めた。ざるそばばかり。そう答えるだろうと思っていたら、ちゃんとした内容が出てきて、驚いた。

「カズ兄さん。嘘だろ?お蕎麦しか食べていないんだよね?」
「ああ、夏樹君。僕は会食の席で色々と食べてある。フレンチとイタリアン、鮨もあった。でも、27日からは食欲が無くて、かりんとうを食べていた。ほら、ちゃんとそば以外のものを食べてあるだろう?」
「嘘だね。それ。会食の席は和食系だろ?お蕎麦を食べていたんだろ?ちゃんと話さないといけないよ」
「あ……」
「六槍さんに聞いたら分かるよ。どの店だったかなんて……」
「ああ……。あの……。僕は偏食がありまして、12月の中旬から、蕎麦しか食べていません。肉類ですか?鴨南蛮蕎麦を一度食べました。肉はそれっきりです。卵ですか?あったかなあ……。野菜の栄養は青汁で摂っています。毎朝飲んでいます。そうです。食事は、ざる蕎麦と温かい蕎麦と、青汁だけです」
「はあ……」

 一貴さんが正直に話し始めて、ため息をついた。すると、お医者さんが、これは栄養失調だと言った。何かの紙を見て、そう言った。月島さんが言ったとおりになり、もう驚かなくなった。一貴さんが目を覚ますタイミングも当てられたからだ。それと、一貴さんの額が強く光り始めているだろうということも教えてくれた。
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