青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 それにはローザーさんが謝った。しかし、彼にも言いたいことがあった。聖河さんの方だって勤務中で忙しいだろうから、そんなにすぐには返事をしなくても良いだろうと思ってのことだ。

 ローザーさんからすれば、デートは1週間後であり、それまでの間は、何か面白いことがあったら知らせておくという感覚の付き合いが良かったそうだ。今までそうだったのだという。どちらかというと、今までのローザーさんは相手を束縛するタイプだったから、それできっかけで別れてしまうことがあり、それではいけないと学んだそうだ。

 しかし、聖河さんはいつでも繋がっていたいという考え方をしているから、今のローザーさんからすると、束縛男なのだという。連絡が密であり、彼がどこの誰と食事に行くのかということも知らせて欲しいと言われてしまい、忙しい中、そんなことは難しいとローザーさんが言った。そこで、聖河さんとの考え方の違いが出てしまったそうだ。

 しかし、付き合ううちにお互いのことが理解できてきて、ちょうどいい距離感になるのではないかと思ったローザーさんは、1週間の予定の中で、食事をするスタッフのことを話しておくことにした。すると、聖河さんから頻繁にラインが届き、朝はモーニングコールが入ったそうだ。ローザーさんはとっくに起きていたから良かったが、そこまでしてくれなくて良いわよと言ってしまったそうだ。

 それを聞き、俺はローザーさんの方が聖河さんにベタ惚れだったばすだと耳を疑った。だから、俺からすると、モーニングコールは嬉しい行為だ。しかし、ローザーさんは聖河さんのことを束縛男だと断定したから、ほどよい距離感を保って恋人同士の形を作っていきたくて、つれない態度を出した。そこで、聖河さんは機嫌を損ねてしまった。もちろん、モーニングコールの朝に軽く言い合いをしてしまうという結果になった。

 しかし、価値観のすりあわせをしたいと思っているのは2人も同じで、夜のデートをして、ローザーさんが聖河さんの家に行こうとしたが、やめておいたそうだ。ディナーの間も束縛男であり、これはいけない、逃げないといけないと思ったそうだ。そういうちぐはぐな状態が続いたところへ、町野先生の登場というわけだ。

 町野先生の何が良かったかというと、ローザーさんと好きな映画のジャンルが同じで、今行きたいと思っている場所が共通していたのだという。話も合ったそうだ。ローザーさんはキャンプもインドアも好きだ。町野先生も同じなのだという。そして、両方が寒さに強くて薄着であり、町野先生は裸足で診察室にいる。暑いのだそうだ。そして、それはローザーさんも同じであり、家の中の暖房の設定温度が同じだという共通点まで分かったそうだ。さらに、町野先生の笑顔が可愛くて、ローザーさんはキュンとしてしまった。優しくて穏やかな話し方が、厳しそうな顔とのギャップがあり、ときめいたのだという。

 そこまで聞いて、これは聖河さんの失恋ということかと思って、心が痛くなった。聖河さんは僕がついていないといけないというタイプが好みであり、頻繁に連絡を取りたい人だと分かった。その一方で、ローザーさんはどうやら反対のタイプのようだ。

 お互いに忙しくて会う時間がないなら同居すれば良いというのが2人の共通の意見になったが、まだそこまで深い関係ではなく、喧嘩までしてしまったし、聖河さんとしてはローザーさんのことを束縛するのは悪いと思い始めている。だから、同居はできない。そんなことを考えていた矢先にフラれるという事態になり、聖河さんには、別の誰かが必要だと思った。

 それは黒崎も考えている。誰か良い人はいないかとつぶやいていた。俺も同じだ。どうしたらいいのだろうか。すると、聖河さんがスマホを取り出した。ローザーさんからの連絡が入ったのだという。さっき、これから家に帰るのだと連絡をしておいたそうだ。まだ付き合っている感じがあるそうだ。

「今日のことで心配をかけているんだ。今日はテレビ番組の出演者のヘアメイクで、明日の朝までスタジオにいるそうだ。あれ?彼だ……」
「本当だ。ローザーさんだ……」

 見間違えではない。たしかにローザーさんが、あるマンションの前に立っていた。そばにはミカさんがいる。テレビ番組の仕事はどうしたのだろうか。待機時間に来てくれたのだろうか。

 その答えは、黒崎が彼らのそばに車を停めた瞬間に分かった。聖河さんがもうすぐで帰ってくるということで、心配と恋愛感情が爆発してはいけないから、ミカさんをお伴にして、聖河さんの様子を見に、マンションに来たのだと言っていた。
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