青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 もう帰るよと言いたいところだが、俺の頭にはこんなことが浮かんだ。お義父さんがママのことを結婚相手に選んだのは、ママに霊能力があるからだけじゃなくて、愛情があったからだということだ。例えば、面白いからとか、家の役に立ちそうだからとか、そんなことでママのことを選んでいないと思う。

 黒崎が言っていたことも頭の中に浮かんだ。ママがお義父さんの元を離れる前に、お義父さんは何度もママと話をしていたようだという記憶だ。そして、お義父さんは黒崎のことを片時も離さなかった時期でもあったそうだ。犬のアヤノちゃんがお義父さんにもママにも懐いていたから、今ここにママもいたら楽しいのにと思っていた記憶もあるそうだ。それも伝えたい。黒崎がどんなにママのことを必要としていたかを。

「ママ、俺達、もう出ないといけないんだ。でも、もっと話がしたいから、今から黒崎さんに連絡を取って、待っていて貰うよ」
「今度にしましょう。志乃ちゃんのお母さんが元気なら良かったわ。気になっていたのよ。あら、ユリウス君。どうしたの?」
「二葉に起きたことを話したいんです。夏樹、僕から圭一に連絡をする」
「うん。分かったよ」

 俺が返事をすると、ユーリーが黒崎に電話をかけ始めた。ちょうど病院を出るところだったそうだ。一貴さんの身体は落ち着いていて、ふらつきも無く、朝ご飯を食べてお腹いっぱいになり、歩いても平気だということだった。そして、俺はママに聞いてみたいことを、いくつかに絞って思い浮かべた。

「ママ、聞きたいことが沢山あるんだ。志乃さんとお母さんのことをどう思う?志乃さんは苦しんでいるんだ。お母さんのことが大嫌いで、どうにかなりそうだって言うんだ。こういうことがあったそうだよ。志乃さんのお母さんは……」
「志乃ちゃんが怒っているのは、正義感からだと思うわよ。人の旦那さんを取ろうとすることは褒められたことでは無いもの。でも、私が読んだのは違うメッセージもあるわ。相手の男に問題があるっていうことね。だから、志乃ちゃんは普通の反応をしたのよ。志乃ちゃんのお母さんと前の人のことは、知り合いから聞いてあったのよ。14歳の時に26歳の男性と付き合い始めて、17歳で妊娠して子供を産んだんだって。前の人はお母さんと同じ市内に住んでいて、ずっと同じ家なの。しかも、お互いの家が車で10分も掛からない場所にあるのよ。だから、スーパーでばったり会うこともあったと思うわよ。相手の人と奥さんは、お母さんの結婚と、志乃さんが産まれたことを知っているのよ。今回のことでは志乃ちゃんは怒ったわけだけど、そのうちに、相手の男への憎悪が生まれると思うわ。こう言ってはなんだけど、無事では済まされない。志乃ちゃんが分かる形で、ああ、天罰が下ったんだっていうことが起こるはずよ。でも、お母さんにも何かあると思うの。お兄さんにもね。生まれた子供に何かあるなんて嫌よね。子供は悪くないのに。それは志乃さんとの対立のことよ。遺産相続の時に揉めないように話し合いをする頃になった時に、志乃さんの隣に立っている大きな釜を持った人が動くというのが見えたわ。お母さんが志乃ちゃんに今、何を思っているかというと、それは嫉妬心。お母さんは子供の頃、成績が優秀な子に憧れがあったみたい。それで、自分が女の子を産んだら、その子が成績優秀だったから、普通のお母さんなら自慢に思うはずなんだけど、志乃ちゃんのお母さんの場合は、私、可哀想とか、娘に嫉妬しているという映像が見えたのよ。それと、お父さんと仲が良いのも嫉妬している。男を取られなくないっていう感情ね。お母さんは生涯変わらないと思うわよ。それと、志乃ちゃんから、お兄さんとの仲の悪さも聞いているけど、お母さんと似ていて、優秀な妹を見て、嫉妬しているわよ。俺、かわいそうっていう言葉が聞こえるわ。お兄さんのお嫁さんとも仲が悪いでしょう?」
「うん。そう聞いているよ」

 俺が返事をしたところで、ユーリーが黒崎との電話を終えたと言った。駐車場で待っているから、あと30分話していても良いということだった。黒崎も来れば良いのにと思った。俺は今、不思議な光景に遭遇している。こんなに短い期間で二人の霊能者に会い、不思議な体験をしている。
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