青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 そこで、何でも相談するのは悪いと思いながらも月島さんに連絡を取ると、拓海さんが生まれ変わるからお別れに来たのではないということだった。推測になってしまうところがあるから、慎重に言葉を選んでいると言っていた。拓海さんは天国に行った後、ずっとそこに存在しており、御魂みたま分けという方法でこの地球に生まれ変わるはずだと言っていた。

 つまりは拓海さんの分身だ。本体は天国にいて、お義父さんや黒崎達が亡くなるときに迎えに来るはずだと教えてくれた。そこで、俺は涙が溢れてきて、疎遠になっている中山家の祖父母と会わないといけないと思った。亡くなった後で会えなくなって後悔はしたくない。父は二度と会いたくないと言っているが、俺だけでも会いに行きたいと思った。

 それを月島さんに話すと、最後のお別れになる辺りでお知らせのような物が、例えば、会ったこともない中山家の曾お祖父さんが夢に出てくるなどの体験があると思うと教えてくれた。その頃には父の怒りが収まり、一緒に訪ねていく光景が見えるそうだ。

 そして、どうしてうちの母が拓海さんが会いに来た夢を見たかというと、ずっと法事に出席していないことで心に引っかかっているから、どうぞ来て下さいと言っているのだろうということだった。母には争い事も、黒崎家からの親戚からも嫌みを向けられることも無いはずだと言っていた。拓海さんと先祖達が守るはずだと教えてくれた。

 しかし、蓮子さんのことは例年通りだと言っていた。あくまでも僕の見られる範囲での話だけれどと前置きしてのことだった。つまり、今年も一貴さんは瑛子さんに喧嘩を売る蓮子さんのことを取り押さえるようにして、別の場所に連れて行って、落ち着かせるということをすることになるだろう。

「カズ兄さん。俺もいるからさ。そんなに落ちこまないでよ~」
「そうか。そう言ってくれるのか。母はちっとも体力の衰えがないようで、力強く俺の腕を振り払おうとするんだ。男手があると助かるとは思っていた。でも、圭一が君の代わりに手伝ってくれるだろう。ところで、圭一の同級生同士の争いのことを、お父さんから聞いたぞ。宮川君と真利奈さんだという名前も聞いてある。それと、もう少しで金槌が身体に当たるところだった、優月さんのこともだ。大変なことが起きたな……」
「そうなんだよ……。昔、中学1年生の時に真利奈さんが宮川さんのことを訴えるって言ったところから、怨恨は始まっているんだ。教室でボール遊びをしたのを止められて、ボールを真利奈さんにぶつけた宮川さんが謝らなかったからなんだ。どうしてそういうことをして宮川さんが許されたのか、お父さんから聞いた?」
「ああ。担任教師が、真利奈さんが、謝らない宮川君のことを訴えると言い出したのに対して、それはやり過ぎだって、まるで真利奈さんが悪いという結論を出したからだと聞いたぞ。宮川君の家が母子家庭だということで、我慢しろと言ったのは教師と真利奈さんのお母さんで、宮川君はわざとじゃなくてたまたま当たったんだと言ったわけだが、僕からすると、当てたんだと思う。教室の後ろから、一番前の席に座っていた真利奈さんの頭をめがけてボールを命中させたわけだ。脳しんとうを起こして倒れた彼女に、隣の席の男子生徒が、ナイスキャッチと言ったそうだな。それもお父さんから聞いた」
「そんなことを言った子がいたのかよ?それは聞いていないよ」
「寺石君というそうだ。偶然にも、真利奈さんが小学1年生の時の同じクラスの友達で、登下校を一緒にしていた子だということだ。それに、宮川君も、真利奈さんが小学1年生の時に斜め後ろに座っていた子で、仲が良かったらしい。それなのに、そんなことをになってショックなのは真利奈さんだ。担任教師は女性だそうだ。思春期の苛立ちを抱えている男子生徒に刃向かうからそうなったと言いたそうだった。それは圭一が感じたことだったそうだ」
「思春期の苛立ちって言ってもさ、俺は女の子には手を出していないよ。うちには万理がいるからさ。そういう面では恵まれていたのかも知れないなあ……」
「僕だってそうだ。男子校だったから、女の子なんて、遠くの存在だった」
「あんたの場合は、とにかく勉強だったんだろ?思春期の苛立ちなんて、鼻で笑うような先生だっただろ?」
「ああ。成績が全てだった。落第しないように頑張るという一心で、教室内はピリピリしていた。みんなそうだった。悠人君の学校もそうだったらしい」

 悠人の卒業した中学と高校は呉羽野学園だ。一貴さんが卒業したところと校風が似ていて、どちらも、成績の良さを重視される。悠人は良い学校生活とは言えなかったと言っていた。

 一貴さんの学校はというと、勉強が出来て当たり前の子が占めている中、クラスで一番になれるのは気の遠い話であり、そういうこともあってストレスから退学者が出そうだが、そういうことが無かったという。生徒達が同じ境遇だからだ。どの子も親が怖くて、親から良い成績を取りなさいと高圧的に言われることの悲しみを分かち合えていたからだそうだ。
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