青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
415 / 938

13-21

しおりを挟む
 まさかこんなことで蓮子さんが瑛子さんに微笑みかけている姿が見られるなんて、思っても見なかった。すると、ユーリーがまた俺にこっそりと教えてくれた。今回の件で黒崎家が愚弄されたと怒っているのが瑛子さんと蓮子さんなのだと。そして、さっき話題に出た由香里さんが二葉のことをとても心配していることや、今日の法事で親しくお話ししたかったと言っていたという。

 その由香里さんが二葉のそばに来た。瑛子さんが彼女のことを向かい入れて、蓮子さんが二葉に彼女のことを紹介し始めた。年齢は36歳で、黒崎家にお嫁さんに来て6年経つということや、元は黒崎家の叔父さんの従姉妹に当たる大内家からのお嫁入りだという話だ。その家の叔母さんはお義父さんの従姉妹に当たる。親族ばかりだ。

 そして、瑛子さんから促されて、由香里さんが二葉の手を取った。そして、こう言った。今回のことは親族みんなで受け止めることですと。だから、できる限りの協力をしたいと言ってくれた。

「二葉さん。私の両親はずっと東京で暮らしているんですが、あちらの方に知り合いがいます。いろいろと評判を聞いておいてありますから、まずはその件を隆さんに伝えると、父が言っていました」
「ありがとうございます。ご心配をおかけしました……」
「いいんですよ。こういうことはみんなで乗り越えましょう。でも、お友達達、どうなるのかしらね……。これから先のことをどうするつもりなのかしら……」
「そうよねえ。由香里さん。あちらの方に知り合いがいるなら、私にも聞かせて頂戴」
「もちろんです。こそこそ……」
「まあ、なんてことなの!……あら、悪口を言うのはいけないわね。でも、そうなってしまうわねえ。おほほほほ」
「……二葉さん。疲れたでしょう。会館でくつろがれると良いですよ」

 良いタイミングで、瑛子さんが女性達の集まりから二葉のことを救い出してくれた。蓮子さんは気を悪くした様子はなく、由香里さんと、その評判とやらの話を熱心にし始めた。そして、ここではゆっくりと話が出来ないから、お昼ご飯を食べにましょうと誘い始めた。もちろん、瑛子さんも一緒にだ。

 その様子を眺めて、女性の結束というのは強いのだなと感慨にふけった。叔父さん達も同じだというなら、味方同士ということだ。不幸中の幸いと言ってもいいのだろうか。そんなことを考えていると、一貴さんが蓮子さんのそばに行った。そして、ごく普通に言葉を交わし始めた。

「お母さん。そんなに笑ってどうしたんだ?」
「あら、おかしくって……。お友達の新しい環境のことで、優しく見守るというのが友達の勤めだと思うんだけれど、そういうことが出来ない人がいることに驚いて、その人達の家の評判を、今、由香里さんから聞いたところなの」
「そうなのか。どういう評判なんですか?」
「こそこそ……」
「へえーー。そういうことがあったんですか。でも、噂だろう……」
「いえ、そんなことはないんですよ。だって、父の学生時代の友人が……。こそこそ……」
「なんということだ!そんな家の人達だったのか!それは驚いた!」
「まあ、一貴さん。おほほほほ!」

 一貴さんの相づちに蓮子さんが笑い始めた。今の彼はいつもの”カズ兄さん”だと思う。9歳の子が警戒していた話はなさそうだ。すると、その話を蓮子さんがし始めた。それを瑛子さんと由香里さんがうんうんと頷きながら聞いている。そして、二股をする男なんて嫌ですねと言い出した。どういうことだろうか。たしか、蓮子さんが二股をしたのではなかったのか。

 すると、ユーリーがこっそりと、また俺に教えてくれた。今日の法事までの間に、蓮子さんが二股をしたという片方の男性との間に何があったのかを親戚に語り、瞬く間に広がったそうだ。お義父さんと付き合い始めた蓮子さんにはもう別れたも同然の人がいたのだと。

 しかし、彼女がお義父さんと付き合い始めたと聞き、僕のことを選んでくれと泣き出したから、蓮子さんは情に流されてしまったと話だった。しかし、その相手に新しい交際相手ができて、蓮子さんよりも出世に有利だということで、乗り換られてしまったのだという。

 そこで、お腹に子供が居るのだと打ち明けると、彼が逃げていったそうだ。ユーリーが言うには、そういうことになったそうだ。あくまでも長い付き合いだった男性からの求愛と情に流されてしまったという過去の失敗だ。だから、そういうことを責めることはできなくて、一貴さんがどちらの子供なのか分からなくても仕方が無くて、もうすぐで親子鑑定をすることになりそうだという話もされて、お義父さんの方の子供だったら良いのにという言葉が囁かれているという。そして、黒崎家が彼に下に見られたと言うことで、親族達は怒っているのだという。

 これで一件落着ということなのか。そうであればいい。俺はユーリーからの囁き声を合図のようにして場所を移動して、母を囲んで話をしているグループの中に入った。そして、笑い合い、短い時間ではあるが、会話を楽しんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...