青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 すると、お父さんの妹さんが、あの女には譲らないと大声を上げたそうだ。そこで、お父さんと付き合い始めたのは、ここの奥さんよりも、うちのお母さんの方が早かったのにと、聖河さんが口にした。とにかく言いたい放題でいいという月島さんからのアドバイスがあったからだ。

 月島さんがこう言っていたそうだ。大事な話し合いだから、霊能者の言うことだと思って信じなくて良いが、天はお母さんの味方をしているのだと。お父さんと交際を始めた時期が早かったのは、お母さんの方なのだと。それを突くと、妹さんが黙り込み、おばあさんがその通りだと言ったそうだ。

 そして、聖河さんは内田家とは関わりたくないから、もう連絡を寄越すなと言った。しかし、内田家としてはそうはいかない。お父さんに認知されている以上、遺産相続などで聖河さんのサインが必要な手続きが出てくるし、お父さんが何も財産がない状態にしておいても良いが、そうはならないだろうから、良好な関係を持っていたくて、ここで財産分与をしたいのだと、おばあさんが言った。そして、お父さんのお兄さんもそう言った。そこで、聖河さんは都内にあるアパートを譲られることにしたのだという。お母さんに渡すためにだ。

 そこまで聞き、お義父さんが聖河さんにお疲れ様と言った。きっとアパートはおばあさんが売って、現金として譲られるのではないかと言った。アパート経営は大変だと聞くよと言う言葉もあった。聖河さんとしても、その方がいいと思ったそうだ。

 学費相当分の財産になる。おばあさんがまたその言葉を言っていたということで、月島さんの話を思い出した俺は恐ろしくなってしまった。こんなことがあるのだと知り、不思議だし、怖いしといった気分だ。

 今の気持ちとしては、聖河さんが話し合いを終えられて、まずはホッとしている顔が見られて良かったというものだ。おばあさんはなるべく聖河さんに面倒を掛けないようにすると言ってくれたそうだ。そして、もう一人存在するお兄さんのことを話してくれたそうだ。静かに話を聞いてくれる人ではなく、今日の話し合いの場には来なかったのだということだった。

 聖河さんとしては会ってみたかったそうだ。自分と同じ境遇であるから、一言だけでも話したかったそうだ。自分と顔が似ているだろうかとか、性格はどんなだろうという興味だ。おばあさんとは打ち解けたようになった聖河さんがそう言うと、おばあさんは言葉を濁したそうだ。そして、聖河さんにこう言った。まるであなたは内田家の血を引いていないようだと。全く似たところがない。しかし、孫であることは分かっているのだと。それは聖河さんが欲しかった言葉だった。似ている顔だったら嫌だったそうだ。

 それはそうだろうと思った。憎い実の父親と顔が似ているなんて、俺だったら嫌だ。その気持ちが分かる。聖河さんはお母さんに似ているというよりも、山岸家のおじいさんの顔にそっくりなのだという。それなら良かったと思った。その方がいい。いかにも親戚だと分かるのは、優しい人だというおじいさんの方がいい。

 俺達が静かにしていると、恒明叔父さんと忠明叔父さんが聖河さんからの話を聞き、そっち方面に強い不動産取引の人を知っているから、紹介すると言った。叩けばまだ埃が出る家だから、もっと叩いて財産を受け取ってこいとまで言い出して、お義父さんが止めた。

「恒明、忠明、やめておいてくれ。もう懲り懲りなはずだ」
「そうは言っても隆君、ショッピングモールができるなら、資産価値は大きな物になるはずだ。そこをどうして受け取らないと言うんだ……」
「月島社長からの勧めだ。彼は霊能者だからだ。病気を貰いがちになるそうだ」
「なんだって……。キシヤマ味噌の社長が霊能者だったのか……」
「そうか……。それなら受け取らない方がいい……」

 霊能者など馬鹿馬鹿しいと言い出すかと思えばあっさりと納得した叔父さん達の様子に、俺も黒崎も驚いた。黒崎まで驚くとは思っていなかったから、ますます驚きが増した。

 黒崎家は奇々怪々。お義父さんがそう言ったことで納得した時、どこからか陰険そうな喧嘩のような会話が聞こえ始めて、ああ、始まったと思った。これで新年を迎えた気がする。そう黒崎が言ったことで、吹き出しそうになった。
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