青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
432 / 938

14-1 アレクシスの来日

しおりを挟む
 2月21日、土曜日。午前6時。

 俺は今、お義父さんの家のリビングに居る。そして、昨日、日本に到着したアレクシスさんと向かい合っている。俺は今、そのアレクシスさんを前にして、こんな人も居るのだと驚いているところだ。てっきりバーテルス家の使いということで、スーツにネクタイ姿をしているものだと思っていたら、ここに着いたときにはラフな格好で、ジーンズを履いていた。しかも、ダメージジーンズで、腰で履いているから、時々パンツが見えている状態だった。日本に入国するときはスーツを着ていたそうだが、入国審査の後で脱ぎ、今もその格好だ。

 昨日の夕方に日本に到着したアレクシスさんは、当日はホテルに泊まってから翌日、この家に来ると言っていた。夜になるから悪いという遠慮からだった。そこで、お義父さんや黒崎達からの強い勧めで、到着日からこの家で泊まることになった。そして、空港にはお義父さんが迎えに行った。アレクシスさんは昨日の20時にここに到着して、数日間、滞在する予定だ。

 遠慮する人。電話で話した時は伊吹に似ていると思ったが、そんなことはなくて、そういう印象を持った俺だったが、彼のラフな格好を見て、そして、昨日の晩ご飯の時から一緒に過ごして、そうでもないのだと分かってきた。アレクシスさんは今、リビングのソファーの上でヤンキー座りをして、さっきは外でタバコをふかしていたからだ。ドイツでは吸わないが、日本に来ると吸いたくなるそうだ。そして、喋っている口調は、ヤンキーそのものだ。

 どうしてそうなったかというと、まだ日本に居るとき、12歳からヤンキーグループとつるむようになり、喋り方が身について、しっくりきたからだという。もちろん、丁寧な話し方も出来ることを知っている。お手伝いさん達にはそうだった。しかし、俺達の前ではそうではない。俺の名前もすでに呼び捨てだ。

「夏樹!タバコはいいもんだな」
「そう?外に行って吸うのはいいことだよ。この家では誰も吸わないからさ~」
「さっき外は寒かった。でも、吸いたくなる。お前もどうだ?」
「俺は良いよ。黒崎さんから叱られるよ。身体に悪いぞって」
「そうだなーー。お前はボーカルだもんなあ」
「ふう……」

 こんなに朝早くからここに居るのは、昨夜泊まったからだ。黒崎が週刊誌の記者から宮川さんのことでインタビューを受けていたから、帰りが遅くなるからだった。取材は都内にある店で行われた。3件あった。どちらも同じ週刊誌であり、その後で別の週刊誌から取材を受けていた。

 なぜ黒崎が聞かれたかというと、二葉の友達の逮捕での取材は黒崎が窓口になっていることと、宮川さんのことでは中学高校の同級生だということで、元同級生を名乗る男性から、黒崎が当時のことを知っているのだという情報が入り、二葉のことで話を聞いていた記者さんが担当するということで、取材の時間が組まれた。テーマとしては、当時の学校現場の闇という内容だ。だから、黒崎が取材を受けることにした。その記者を信頼しているからだ。

 その記者の名前は村越さんという。男性だ。最初は黒崎としては断るという方向で考えていた。自分には子供が居ないから、そんな自分に何が分かるのかという理由だった。

 しかし、村越さんとしては国会議員のおじいさんの振る舞いと、宮川さんがボールをぶつけたことを不問にしたと言える当時の担任教師の判断に疑問を抱き、また、宮川さんがこの間、警察官に暴行したことで逮捕されたとき、押しただけだと供述したことでも疑問があり、村越さんとしては、当時中学生だった子供達が親になる年齢を迎え、今教育現場で起きていることと検証して記事を書きたいという事だった。そこで、黒崎が引き受けた。何か役に立つことがあればという思いからだ。

 ボールは当たっただけ、交通事故でも当たっただけ、金槌を振り回した息子が壊したクラスメイトの防犯ブザーも当たっただけ、そして、警察官の身体を何度も強く押したのは、押しただけ。そんな今までのことを刑事さんに話しているという宮川さんは麻薬の影響で精神が混乱し、数日間、入院をすることになった。その間も黒崎は会えない。彼としては、本気でこう言いたいそうだ。しっかりしろと。

 逮捕された時に宮川さんは黙秘していたそうだが、最近になって、こういうことを言うようになったそうだ。僕にお父さんがいれば完璧だった。僕はクラスで一番の成績を取ったこともあるし、クラス中では一番身体が大きかった。そんな僕にどうしてお父さんがいないのかと。そして、息子が壊した防犯ブザーのことを刑事さんから聞かれると、謝る気は無いのだと言ったのだという。そこで、精神鑑定を受けることになったそうだ。そう報道されていた。

 そこで、かつての同級生達からはこんな声が上がっているそうだ。片親だということで、片親だからあなたの子はこんなことをするんじゃないですかと、クラスメイトと喧嘩をした生徒の親が学校に呼び出されて、担任教師からそう言われた経験があるという声だ。宮川さんとは反対だと言いたいそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...