青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
445 / 938

14-14

しおりを挟む
 南波さんが訪ねてくる。その知らせを聞いたアレクシスさんが、今から着替えてくると言って、椅子から立ち上がった。今のラフでダルダルな格好でいいのに。それをお義父さんも言うと、いいやと言って、首を横に振った。

「ユリウスが恥ずかしいだろうから、もっとマシな格好をしておく。二葉も帰ってくるだろう」
「そうだね。お見合い相手だもんね」

 そういうことか。俺達は納得して、アレクシスさんがキッチンに食器を持って行く姿を眺めて見送った。彼もまたここに住んでいるときに、お手伝いをしていたということが分かった。アレクシスさんは穏やかな性格をしていると思う。気難しい性格なのはユーリーの方だ。しかし、どちらも優しいという点では同じだ。

 この家で暮らしたというからには、どんなに性格が曲がって育ったことだろうかと、黒崎に連れられてこの家に住み始めたときは、そう思っていた。それだけ黒崎の話す内容がどんよりしていたし、お義父さんだって同じ事を言っていた。しかし、アレクシスさんとユーリーと話してみると、曲がったところが無くて素直に育った気がしている。お義父さんが愛情を掛けていたのだと分かる。

 しかし、晴海さんのことが思い浮かんで、そうでもないのかと思い直した。出会った頃の彼は疲弊していて、どうしたら良いのかという迷いとネガティブな感情に支配されていたという。だが、今ではすっかり良いお兄さんの部分を出してくれているから、元から優しいのだと思う。お義父さんの教育は厳しかったと言うから、アレクシスさん達に対する話し方とはまた違っていたのだろう。

「ねえ。お義父さん。晴海お兄ちゃんとアレクシスさんとユーリーに対しては、話し方を変えていたの?ユーリーってわんぱくじゃん。お義父さんが怖かったら悪戯が出来なかったと思うんだ。優しかったの?」
「ああ。親戚の子と息子では、私の態度は違っていたはずだ。遠い国から来た2人の子供に、しかも、母親が父親から離れてきた事情を抱えている子には、厳しくは出来ない。アレクシスの1人部屋は、父親と相談した結果、用意したんだよ」
「そっか。お義父さん、優しかったんだね。良かったよ。おかげでユーリーは我儘になったけど。言いだしたら聞かなくてさ~」

 そう言って、俺はユーリーのことを見つめた。“お母さんから思い切り可愛がられた子”。そういう面をいろいろを見させてもらっている俺は、最初の頃に彼に抱いていた印象を忘れてしまいそうだ。インテリジェンスな人。優しそう。穏やかそう。そんな印象を彼に抱く人はいると思うが、付き合いが深まっていく度に、言いだしたら聞かない面を見て、これは何でもお母さんから許されてきたんだなということがを感じるようになった。伊吹が俺よりも先にそう言っていた。さすがだ。一貴さんの人格が分かれていることにも、一番最初の会食で気がついている。

 お義父さんがユーリーのことを見て笑った。我儘な面を今、見ているところだ。南波さんの写真を眺めて、絶対に付き合うと言っているからだ。もう無理だと言われているのに、彼が良いと言って言うことを聞かない。

「アレクシスはユーリーの面倒をよく見ていたよ。だから、いい男に育った」
「そうなんだね。勉強ばっかりさせられていたって、ユーリーが言うからさ~。しかも、気難しい性格っていうから、覚悟していた面があったんだけど、全然そんなこと無いね」
「いや、気難しい性格をしているよ。ユーリーよりも難しい。エミリアがよく言っていた。フェリックスのお兄さんに似ているんだと。フェリックスの性格とはまた違う。しかし、あれぐらいでちょうど良いとは思っているよ」
「ここに居る間に、そういう面を見られたらいいな。アレクシスさんって荷物が少ないんだね。大きなスーツケースの中にあるのは、ドイツからのお土産ばかりだったんだ」

 ここに到着したアレクシスさんのスーツケースは2個あった。そして、背負っている荷物もあった。どれもお土産ばかりだった。服は持ってこなくても、一貴さんが用意すると言っていた。そして、アレクシスさんのために用意した服を昨日さっそくプレゼントしていて、今日はそれを着るのだろうか。

 そうしているうちに、アレクシスさんがダイニングに戻ってきた。着ているのは一貴さんがプレゼントした服であり、落ち着いた感じで、ドキッとした。かっこいい。そんな言葉が自然と口から飛び出してしまい、慌てて口を閉じた。黒崎が嫉妬するからだった。しかし、その黒崎は何にも言っていなくて、スマホを見ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...