青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 月島さんからのユーリーへのラブコールは続いている。マメに連絡を寄越してくる。今日などは休みの日だから、お昼には連絡があるのだと思う。一度だけデートしただけだが、次もまた会いたいと言って、月島さんは諦めようとしない。

 そして、ユーリーも南波さんのことを諦めていない。色んなことを的中させる月島さんが、彼は小瀬さんと付き合うのだと聞いても、納得しようとしない。しかし、随分と気にしているようで、2人がいつ頃から付き合う未来が見えているのかと、この間、聞いていた。しかし、月島さんは言えないと言った。ユーリーのことを嫌がらせているのでは無く、言えないことがあるのだという。俺と一貴さんの過去世は何だったかということもだ。

「あ、アンがこっちに戻ってきた。黒崎さん達は居ないけどなあ」
「夏樹。コンタクトの度を変えて、遠くがよく見えるようになったね」
「うん。ユーリーはすごいね。視力がいいもんね。誰も来ていないよね?アンが1人だよ」
「いや、兄さんが追いかけて走って来ている。何かあったのか」
「アンーーー!こっちにおいでーーー!」

 俺はアンのことを呼ぶと、とことこと歩いていた歩みを早めて、走り出した。そこで、俺はポケットに入れておいたアンのおやつを手の平に出した。何も無いのに呼んだら、その次は呼んでも来ないからだ。そういう態度を取るのは俺にだけだ。最近になって、そうなった。なぜかは分からない。

「アンーー。おやつがあるよ!」
「ワン!」

 アンが俺達の側にたどり着いたから、さっそくおやつをあげた。それを美味しそうに食べているアンの背中を撫でてやった。トリミングにそろそろ連れて行かないといけないぐらいに毛がモコモコとしている。

「アン、美容院に行かないといけないね。足の裏の毛が葉っぱだらけになるし」
「トリミングに行くのは億劫なんだろう?寝られないもんなあ」
「一時間も掛からないんだけどね。黒崎さんが店の中で待っている間、アンがずっと外を見ているんだって」

 アンが通っている美容院は、ここから車で20分ぐらいの場所にある。送迎サービス付きだが、最近は黒崎が送り迎えをしている。そして、店の中の待合で待っている状況だ。アンはトリマーさんに慣れているが、最近は美容院の車に乗りたがらなくなり、そういうわけで黒崎が連れて行っている。

 そこで、俺はユーリーに、月島さんにアンの気持ちが読み取れないか聞いてもらうことにした。返事は可能ということだった。そこで聞いた結果には驚いた。美容院に行きたがらないのは、その家で飼っていた犬が亡くなり、家族達の悲しい気持ちが溜まっているからだということだった。犬は成仏が早いと言うことで、ちゃんと天国に旅立っているそうだ。犬はそれが分かるのだという。だから、アンもそれを察知して、色々と考えているとのことだった。

 トリマーさんの家の中には虹があり、それは天国に旅立った犬と、今家の中にいる猫との架け橋になるもので、2匹が交信が出来るのだそうだ。それを聞く限りでは悲しくないと思ったが、悲しい気持ちが溜まっている状況で考えることがあるのなら、アンは物思いにふけっているということだ。

「アン、次のトリミングは、俺も一緒に行くよ。物思いにふけろうよ」
「僕も行きたい。色んな犬が来るんだろう」
「うん。俺も何度か待っていたことがあるんだけど、面白かったよ。嫌がる子は嫌がるんだ。平気な子は平気な感じで奥に入っていくんだよ」

 その美容院での出来事を話していると、両手に紙袋を持った黒崎とアレクシスさんがこっちに来るのが分かった。その後ろを歩いているのが南波さんだ。そして、遠藤さんも居た。それならアンはなおさら、門まで行きそうなのに、どうして中間地点で止まっていたのだろう。黒崎を追いかけるなら、最後までそうするのに。

 そこで、俺のことが心配だったのかという理由に思い当たり、きっとそうなのだと思うことにした。そして、アンのことをなで回して、ふかふかの背中に頬ずりした。アンの匂いだ。これがたまらなく好きで、アンはされるがままになっていた。
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