456 / 938
14-25
しおりを挟む
ユーリーが一貴さんの着ているシャツのボタンを外した。こうすれば呼吸がしやすいだろうと言いながら。一貴さんの顔色はすごく悪くて、病院に連れて行った方が良いかと思った。しかし、彼はそれは必要ないと言った。島川社長の声だった。
「島川社長。あえてそう呼ぶよ。どうして今日は次々と出ていて居るんだよ?前にお義父さんが親子鑑定の話をしたときは、カズ兄さんしかいなかったよ。ああ、嫌っているわけじゃないんだ。そんなに鑑定が嫌かな?お義父さんは、鑑定をするのはあんたのためだって言っているんだ。すっきりするだろうって。お義父さんは、鑑定をせずに、あんたのことを認知するとも言っているんだよ」
「そうなのか?」
「うん。そう言っているよ。だから、鑑定をしたがっているのは、カズ兄さんの方だと思っていたんだけど……。もうやめてもらおうか。鑑定は無しにしようって、お義父さんに言ってくるよ。認知届をするだけでいいそうだよ。戸籍謄本を取り寄せてあるから、月曜日になったら区役所に行こうよ。それがいいよ」
そう言って、俺はユーリーに一貴さんのことを任せて、お義父さんの元に行こうとした。すると、一貴さんから待ってと言われて、呼び止められた。俺が振り向くと、自分で言うと言って、起き上がった。
「カズ兄さん。寝ていると良いよ。今にも倒れそうだよ……。無理することなんか無いんだ」
「僕だってはっきりさせたいと思っているんだ……」
「そうなんだね……」
「誰が父親なのか、僕には分からない。物心ついたときからたまに訪ねてくる男性がお父さんだと分かったのは、3歳の時だった。まだ幼稚園に入る前だよ。普段は家の中にはお手伝いさんと母しか居ないから、家の中に男性がいることが珍しかった。近所には島川家の祖父母が居て、僕のことを可愛がってくれた。おじいさんのことをお父さんなのかと思ってみたことがあったが、どうやら違うと分かって、僕にはお父さんがいないんだと思って、がっかりしたよ。そしたら、母が、明日ここにお父さんを呼ぶから、お父さんと呼ぶと良いと教えてくれた。そして、僕はその男性が来た時にそう呼ぶと、とても喜んでくれて、僕のことを褒めてくれたんだ。今まで隆さんと呼んでいたからなんだ。その後から、僕のお父さんは一人だけだ」
「そうだよ。一人だけしか居ないよ。あのさ。あんたって有名な人になったじゃん。もしも、あんたがお義父さんと血の繋がりが無いことが分かったとして、その本当のお父さんが出てきて、あんたと親子鑑定をしたいって言っても、認知届をされた後なら、もう遅いんだってさ。だからさ、そういうことも考えて、お義父さんは、カズ兄さんのことを認知したいんだって言っているんだよ」
「でも、志乃さんが言っていたんだろう。父親違いのお兄さんのことを、北岡家の人間じゃないって……。僕にも当てはまる話だ」
「それを考えていたのかよ……。志乃さんには志乃さんの事情があるんだよ~~。あんただって、昨日まではそう言っていただろ~~」
昨日、二葉からの電話によって旅行の日程を早めて帰ってくるという報告を聞いたとき、一貴さんは、僕にできることなら何でも手伝うと言ってくれていた。それだけ志乃さんはお兄さんから変な態度を取られているからだ。
また志乃さんが高校生の時に、二葉が志乃さんの部屋でお茶を飲んで話しているときに、お兄さんと奥さんと連れ子の女の子が北岡家に遊びに来たそうだ。そこで、志乃さんが挨拶しようと階段を下りていくと、お兄さんがせせら笑いをしていたそうだ。
そして、お前、今日居たんだなと言って、奥さんと子供さんに挨拶を交わさせること無く家のリビングに入り、お母さんからお金を受け取っていたそうだ。それは、その時、奥さんのお腹に出来ていた子供の出産費用の一部だった。それには、信じられないことだが、志乃さんの名義の貯金が使われていたことを、後々に知ることになる。お兄さんがそのことを知っていたこともだ。
「島川社長。あえてそう呼ぶよ。どうして今日は次々と出ていて居るんだよ?前にお義父さんが親子鑑定の話をしたときは、カズ兄さんしかいなかったよ。ああ、嫌っているわけじゃないんだ。そんなに鑑定が嫌かな?お義父さんは、鑑定をするのはあんたのためだって言っているんだ。すっきりするだろうって。お義父さんは、鑑定をせずに、あんたのことを認知するとも言っているんだよ」
「そうなのか?」
「うん。そう言っているよ。だから、鑑定をしたがっているのは、カズ兄さんの方だと思っていたんだけど……。もうやめてもらおうか。鑑定は無しにしようって、お義父さんに言ってくるよ。認知届をするだけでいいそうだよ。戸籍謄本を取り寄せてあるから、月曜日になったら区役所に行こうよ。それがいいよ」
そう言って、俺はユーリーに一貴さんのことを任せて、お義父さんの元に行こうとした。すると、一貴さんから待ってと言われて、呼び止められた。俺が振り向くと、自分で言うと言って、起き上がった。
「カズ兄さん。寝ていると良いよ。今にも倒れそうだよ……。無理することなんか無いんだ」
「僕だってはっきりさせたいと思っているんだ……」
「そうなんだね……」
「誰が父親なのか、僕には分からない。物心ついたときからたまに訪ねてくる男性がお父さんだと分かったのは、3歳の時だった。まだ幼稚園に入る前だよ。普段は家の中にはお手伝いさんと母しか居ないから、家の中に男性がいることが珍しかった。近所には島川家の祖父母が居て、僕のことを可愛がってくれた。おじいさんのことをお父さんなのかと思ってみたことがあったが、どうやら違うと分かって、僕にはお父さんがいないんだと思って、がっかりしたよ。そしたら、母が、明日ここにお父さんを呼ぶから、お父さんと呼ぶと良いと教えてくれた。そして、僕はその男性が来た時にそう呼ぶと、とても喜んでくれて、僕のことを褒めてくれたんだ。今まで隆さんと呼んでいたからなんだ。その後から、僕のお父さんは一人だけだ」
「そうだよ。一人だけしか居ないよ。あのさ。あんたって有名な人になったじゃん。もしも、あんたがお義父さんと血の繋がりが無いことが分かったとして、その本当のお父さんが出てきて、あんたと親子鑑定をしたいって言っても、認知届をされた後なら、もう遅いんだってさ。だからさ、そういうことも考えて、お義父さんは、カズ兄さんのことを認知したいんだって言っているんだよ」
「でも、志乃さんが言っていたんだろう。父親違いのお兄さんのことを、北岡家の人間じゃないって……。僕にも当てはまる話だ」
「それを考えていたのかよ……。志乃さんには志乃さんの事情があるんだよ~~。あんただって、昨日まではそう言っていただろ~~」
昨日、二葉からの電話によって旅行の日程を早めて帰ってくるという報告を聞いたとき、一貴さんは、僕にできることなら何でも手伝うと言ってくれていた。それだけ志乃さんはお兄さんから変な態度を取られているからだ。
また志乃さんが高校生の時に、二葉が志乃さんの部屋でお茶を飲んで話しているときに、お兄さんと奥さんと連れ子の女の子が北岡家に遊びに来たそうだ。そこで、志乃さんが挨拶しようと階段を下りていくと、お兄さんがせせら笑いをしていたそうだ。
そして、お前、今日居たんだなと言って、奥さんと子供さんに挨拶を交わさせること無く家のリビングに入り、お母さんからお金を受け取っていたそうだ。それは、その時、奥さんのお腹に出来ていた子供の出産費用の一部だった。それには、信じられないことだが、志乃さんの名義の貯金が使われていたことを、後々に知ることになる。お兄さんがそのことを知っていたこともだ。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる