青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 何か一つ良いことをしたかった。その言葉を聞き、一貴が自然と出したとものだと分かった。これはこの星に来た時から思っていたことなのかと考えた。一貴は何者なのだろうか。宇宙の星から来た人物がそばにいて、先程まで俺と話していた。一貴もその星々から来たというのか。

「一貴。お前は他の星から来た男なのか?」
「いや、僕はこの星で生まれたはずだ。過去世では他の星かも知れないが、ヨークも月島君も何も言ってくれないから分からない」
「さっき、何か一つ良いことをしたかったと言ったじゃ無いか。他の星から来たんだろう?」
「生まれたのはお母さんからだ。母だって僕のことを産んだ記憶はあるはずだ。何を馬鹿なことを……」
「……」

 何を馬鹿なことを。一貴に言われるとは思わなかった。俺はただ単に興味があるだけだ。それを言うと、地球人として産まれた自分の体にヨーク達が入り、活動しているのだと言われた。分かるのはそれだけだと。俺としては、赤ん坊の一貴は幻想で、実はここで生まれていないのかと思っていた。

「圭一。君は想像力が豊かなんだな。ある日突然赤ん坊が出現して、宇宙人が思考を操り、地球人に育てさせるなんて思ったのか」
「ない話じゃないだろう。夏樹が観ていたUFOの番組では、地球人に紛れて生活している宇宙人がいると言われていた。お前もそうなのかと思った。だったら、父親が誰かなんて、関係ないんじゃないのかとも思った。遺伝子操作をしているんだろう」
「物語に出てきそうな話だな。僕はずっと島川一貴として生きてきた。母の顔色ばかり窺っていた。しっかりここで育った」
「そうだな。お前は他の誰でもない……」

 俺は一体何を考えていたのか。久弥の声が戻ったという事で夏樹が喜んでいる中、アレクシスがユーリーと驚き合い、空を見上げている。何か見つけたようだ。

 一貴も空を見上げた。俺には暗闇の空しか見えない。コンビニからの灯りと街灯が空を白く光らせている。すると、夏樹が空飛ぶ円盤だと言いだした。俺にはそれは信じられなかった。UFOなんているわけがないと、この期に及んでもまだそう思っている。

「圭一。僕のことを信じていないのか?」
「いや、そういうことじゃない。最近は色々ありすぎた。どうして人の心が読める人が居るのか、1人の身体で数人が話している状態になるのか、それを目の前で目撃している自分のことも不思議だ。今まで生きてきて、こんな体験を立て続けにしたんだぞ。俺の気持ちを分かってくれ。ああ、すまない。一貴。お前の方がずっと悩みは深い。宇宙人の存在がウォークインしている当事者だからな」
「僕だって同じだ。ヨーク達からずっと一緒に居たんだと言われて、僕は孤独じゃ無かったと分かった。でも、今の家に来た後で彼らから言われて良かった。そうじゃなかったら、僕は黒崎家に来ていなかったかも知れない」
「そうか……」

 一貴が涙を流した。それは不思議なことに、結晶化したようになり、石になって地面に転がり落ちた。それを拾ってみると、水晶のようなものに見えた。こんなことが現実に起きてもまだ、俺は夢見心地でいる。

「一貴。水晶のようなものに変わったぞ。持って帰ろう」
「そうだな。部屋に飾るよ。……ああ、久弥君。どうしたんだ。そんなに泣いて……」
「久弥さん……」

 俺達のそばでは久弥が大粒の涙を流し始めていた。何をどう言っても、元の自分の声が出てくるからだという。喉の違和感もかすれもなく、普通に声が出るそうだ。そばで彼の声を聞き続けていた夏樹の笑顔が答えだ。たしかにその通りなのだろう。

「夏樹。久弥さんにハンカチを貸してやってくれ」
「うん。あんた、ちょうど持ってきているなんて偶然だね」

 俺はポケットからハンカチを取り出して、夏樹に渡した。それを受け取った彼が久弥の頰に当てて、彼の涙を拭き始めた。その隣では奇跡を願った一貴が空を見上げて、礼を伝えていた。俺はその光景を見つめて、生涯忘れられない体験をしたことを喜んだ。
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