青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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14-56(夏樹視点)

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 2月25日、水曜日。12時半。

 俺は今、お父さんの家のリビングにいる。さっき、お義父さん宛に親子鑑定の結果が出たという知らせが届いたからだ。それはスマホに表示される。今日のことはあらかじめ分かっていたから、一貴さんは家の中で仕事をしていて、出社していない。六槍さんがそうしてくれと言ったし、一貴さん自身もそうした方が良いと判断したからだ。

 親子鑑定のことでモヤモヤして気ががそぞろになって、何か会社で失敗するということを恐れのことではない。ヨーク達が頻繁に一貴さんの元に来るようになって俺達と食事を楽しむようになり、一貴さんはすっかり落ち着いた人になり、気がそぞろな人ではなくなった。たぶん。

 俺は今、一貴さんのことを呼びに、部屋に向かっている。黒崎は仕事だ。二葉は大学だ。ユーリーも出社していたが、ついさっき帰ってきた。アレクシスさんは自分が暮らしていた庭の部屋の基礎部分を写真に収めて、ドイツに居る親戚や友達にメールで送る作業をしていた。

 俺はというと、大学は今日は休みであり、仕事も入っていない。黒崎製菓の開発部の仕事もない。絵本のコラム連載の締め切りは昨日までだったから仕上げて済んであり、原稿を提出済みだ。つまりは、家の中にいるのは俺、とユーリーとアレクシスさんと一貴さん、お義父さんだ。

 今お義父さんがリビングで一貴さんのことを待っている。俺はユーリーと一緒に一貴さんの部屋のドアをノックした。すると、島川社長といった感じの声の返事が返ってきた。ヨークだろうか。

「カズ兄さん。親子鑑定の結果が入ったよ。リビングにおいでって、お義父さんが呼んでいるよ。一緒に見ようって……。でも、今居るのはヨークなんだろ?」
「そうだよ。僕の方だ。一貴君には寝て貰っている。昨夜は二時間おきに起きて、寝ていないんだ。ヘリコプターになって空を飛んでいる夢ばかり見て、自分で自分を操縦する夢を見続けて、疲れていたんだ」
「それって、ヨークが見せたんだろ?」
「当たり。ウーリも居る。……夏樹君。ユーリー。こんにちは。今朝会ったの、分かっていた?」

 一貴さんがニコッと笑った。今喋ったのが、9歳の島川少年のふりをしていたアルデバラン星人のウーリだ。そして、同じくアルデバラン星人のヨークも存在している。寝ているときはリンさんの意識も入っていて、なんと、4人で寝ているそうだ。ただし、藤沢との電話の時は静かにしていて、3人は宇宙船に帰っているそうだ。電話が終わったところで戻ってきて、また同居生活をしているのだという。

 それを聞いて、俺はホッとした。恋愛しているときも同居して話を聞かれているなんて、恥ずかしいだろうと思うからだ。藤沢には一貴さんの方からウォークインのことを打ち明けた。さすがの藤沢でも驚いていたが、今まで起きたことで辻褄が合うことがあるそうで、信じてくれた。

 そして、一貴さんの“マブダチ”の悠人と早瀬さんにも打ち明けたら、そんな気がしていたと言っていた。色々とおかしな事があり、首を傾げていたそうだ。会社の方では六槍さんと朝陽に打ち明けた。六槍さんは冷静で、すぐに信じてくれた。そして、朝陽は驚いて倒れそうになっていた。

 この件は、聖河さんとローザーさんにも伝えてある。それぞれ驚いていたが、やっぱり彼らも何かおかしいと思うことがあったそうで、すぐに信じてくれた。近いうちに会いに来てくれる。

 月島さんはマカオから戻ってきたばかりだ。親子鑑定の結果は真っ先に知らせたいと思っている。妹さんとマカオの知り合いになった人とのビデオ会議は昨日開かれたばかりで、あの飴がよく効いたと体験を語り合っていた。薬局で買える瓶の酔い止めよりも手軽だし、量が少ないから、毎日舐めても体調に悪い影響は無さそうだと言っていた。

 黒崎が怖がっているのは、俺のことだ。俺も一貴さんと同じく過去世を言えないと月島さんが言っていたから、黒崎が言うには、まさかお前もウォークインされているのではないかと心配している。しかし、俺には人格の交代という感じが無く、黒崎との喧嘩を知られていたところで今更恥ずかしさはなく、俺としては、その時はその時だと言ってある。

 テーブルの上には、この間、一貴さんが涙を流したことで出来上がった水晶のような石を置いてある。それはとても綺麗な石であり、それを撫でながらウーリと話をして、一貴さんを起こして貰い、みんなでリビングに向かった。
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