青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 ぽりぽり。俺はお漬物を食べながら、絵理奈の友達の件を嘆いた。どうしたら良いのだろうか。一体、どこで出会ったというのか。それを聞いていなかった。悠人は知っているだろうか。

「ゆうとーー。絵理奈ちゃんの友達って、そのヒモと出会ったのは、どこだったか聞いてある?」
「聞いているよ。大学のセミナーだよ。恐竜の化石展が開催されたときの講演だよ。カレシが出席者で、友達がスタッフでさ。一目で恋に落ちたんだって言っていたよ。バンドマンだっていうからライブを観に行って、ますます彼のことが好きになったんだって」
「それは分かるよ。ギターを弾いている姿なんてかっこいいと思うよ。でもさ~、50万借りられないかなんて聞く?」
「そういう男なんだよーーー。ライブの開催費用なんて嘘だよ。ヒモっていっても、美容師の仕事をやっているんだよ。まあ、ヒモだけど。食事デートは割り勘するときは一円単位まで割る男で、かつ、ほとんど彼女の方が出しているんだ。私、出すからなんて……。では、月島さんに解説して貰いましょうか」
「そうだねえ。月島さんに聞いてみるのが一番だよ」

 悠人がそばにいる月島さんに話しかけた。紫乙さんとお義父さんとで鍋を囲んでいる。その隣ではアレクシスさんが酔っぱらって早瀬さんに絡んでいる。今日はバーテルス家のネックレスを付けてくれているのかなんて聞きながら、シャツの襟元を広げて肌をのぞき込んでいる。ユーリーは止めない。南波さんに夢中だからだ。一貴さんは俺達の隣に居て、黒崎と二葉とで鍋を囲んでいる。何も問題は無い。

 そう思った後、月島さんが悠人からの話に頷いた。名前を聞かなくても分かるそうだ。どんな人なのかだ。こういうことはヨークやルークさんも得意らしいが、一貴さんや紫乙さんには教えないのだという。ここで暮らしている目的が違うからだそうだ。月島さんの場合は霊能者の仕事をする役目があり、色々と想念というものがキャッチできるのだそうだ。

「どうかな?絵理奈ちゃんの友達は別れないのかな?」
「もう別れたところだ。ついさっきだよ。浮気が原因だ。お金のことではないようだ。貸すつもりがあったようだ」
「ええーーーー、別れる原因がそこじゃないんだねえ。大丈夫かな。次もそんな男と出会うかも知れないよね」
「ははは。これは笑い事じゃないね。よっぽど彼の好きだったようだ。でも、浮気男で、そっちとは結婚話もしているというラインを見て、気持ちを切り替えたようだ。絵理奈ちゃんに聞いてみるか?」
「そうだね。聞いてみようかな……。あ、悠人は彼女の連絡先を聞いているんだね」
「うん。今、ラインを送るよ。バンドマンのカレシとはどう?って……」

 そのカレシと同じくバンドマンである悠人がラインを送る姿を眺めた。すると、電話が掛かってきて、悠人がゆったりとした感じで電話に出た。貫禄を感じられる。やっぱり大学入学当時とは違う。バンドとモデルとコマーシャル。悠人はメディアに露出しまくっているから、しっかりしたのだろう。

「もしもし。結井ゆいちゃん。カレシと一緒にいるの?夏樹がさーー、心配してて。うひぇーーー、別れたのかーー。実はね、この間話した月島さんが、2人が別れたみたいだって言うんだ。……え、ついさっきなのかーーー。今、外なんだろーー?気を付けて帰らないといけないよ。じゃあね!」

 悠人が電話を終えた。俺の方は驚きで言葉を失った。月島さんが的中させたからだ。こんなに当たるなら、南波さんが小瀬さんと付き合うのは本当のことなのだろうと思った。そして、月島さんがユーリーが自分のパートナーなのだというから、それも本当なのだろうと思った。

「月島さん。ユーリーを呼ぶよ。せっかく会えたんだから、もっと近くで話すと良いよ。南波さん、こっちにおいでよ。ユーリーが月島さんのことを避けているんだ」
「オッケー。え、やばい!この人、僕の手を握ったよ。約束はどうしたんだよ!」

 南波さんがユーリーから手を握られて、ツッコミを入れた。その姿にほっこりした。平和な方がいい。湯気が出ている鍋からの匂いと膨れてきたお腹を感じて、なんだか眠くなってきた。

 そんな俺に黒崎は真っ先に気がつき、大丈夫かと声を掛けてきた。それに対して大丈夫だよと返事を返して、悠人が食べ始めたお寿司の量に驚いた。お義父さんが追加で彼の前にあるお皿に置いてくれたお寿司は20貫もあった。鍋一つ分の芋煮を食べきった後なのに。

 そこで俺は、こんなに食べられる悠人がいるのだから、バンドは安泰だと感じて、大丈夫だと言ったくせに、うつらうつらと船をこぎ始めた。
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