青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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15-1 大学の卒業式

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 3月25日、金曜日。午前6時。

 今日は大学の卒業式だ。10時15分からの式典があり、お義父さんが保護者として出席する。実家の両親には家に居てもらうことにした。来たがっていたが、引っ越しの日程と重なってしまったことと、父がまた腰を痛めてしまったからでもある。重い物を持ってしまったのだそうだ。

 俺は今、畑に水やりをしている。トマトとネギとナスだ。それと、アマリリスだ。まだ花は咲いていない。初夏になったら咲くだろうと思っている。花言葉は“おしゃべり”“輝くほどの美しさ”だ。その言葉の通り、俺の隣では、朝の稽古を終えたユーリーが喋っている。相手は月島さんだ。だいたい火曜日の朝か、金曜日の朝のこの時間に電話で話すのが日課になっている。

 今日の話題は、“霊と宇宙人の存在についての会合のこと”だ。研究グループが日本国内にいて、そのグループに入っている月島さんからの紹介で、ユーリーと唐岩さんという出版社の同僚が参加するようになった。ほとんどが、いわゆるオカルト好きの集まりで、月1回、カフェで集まってミーティングを行うそうだ。この間までは会って話すことが多かったが、全国に会員が出来たことでビデオ会議が取り入れられた。来月の幹事は月島さんだ。ユーリーも手伝いをするという。

「月島君。会場は新宿の“アンダーウェア”でOKだ。アキラママにも了承を貰っている。会費は3000円でいいそうだ。焼酎、コーラ、オレンジジュース、紅茶飲み放題、カラオケ歌い放題で、翌朝5時まで居られる。新宿二丁目は安い店があるんだな。もっと高いと思っていたよ。へえーー、ママが出る月曜日だけのサービスなのか」
「へえーー、俺も行ってみたいな」

 ユーリーの話に俺も興味を持った。来月の集まりは月島さんの友達のバーのママが経営している新宿二丁目のお店ですることになったそうだ。アキラママは銀座にも店を持っているが、みんなで騒げて安く出来るから新宿二丁目の店でと、アキラママからの誘いがあったそうだ。

 月島さんとユーリーの関係性は“友達同士”だ。これは譲れないとユーリーが言っている。本当にそうなのかと聞くと怒り出すから聞けないし、からかえない。口を聞いてくれなくなったら悲しいし、何よりも退屈してしまう。すると、テラス窓が開き、黒崎から声を掛けられた。

「夏樹。ユーリー。スープが温まったぞ」
「ありがとう~。ユーリー、中に入ろうよ~」
「ああ、月島君。このまま話していて良いよ。僕はお腹いっぱいだから、お茶だけ飲む。いや、ダイエットビスケットだけが朝食じゃないよ。いや、嘘だ。ごめん。ダイエットビスケットだけにしてある。だって……、1.5キロも太ったんだ。カレーを食べ好きた。おやつもね。君との食べ歩きは美味しいもの揃いだ。君はどうやって体重を維持しているんだ」
「はいはい。入ろうねえ」

 そう言って、俺はユーリーの手を引いた。今月からは黒崎がたまにスープを温めてくれるようになった。昨日作っておいた鶏肉と野菜のスープだ。IHコンロのスイッチを入れるだけでいい。後は吹きこぼれるのを気を付けておくこと、火加減だ。黒崎の様子からすると、上手くいっているに違いない。

 玄関を入ると、アンが走って出てきた。いつもなら俺と外に居るが、今日は黒崎がキッチンに立っているから心配だったようで、黒崎の足下から動かなかった。

「アンーーーー、帰ってきたよ。あ、来たね~。良い子だね。ユーリーもいるよ。おはようって……」
「アン。おはよう。お邪魔するよ。……じゃあ、月島君の方は体重の増減がないということだな。あんなに甘いものを食べたのにか。いいなあ。僕なんか、すぐに変わってしまう。今度、僕の腹を見てくれ。少し肉がついてきた。これ以上は増やせない」
「はいはい。入ろうよ~」

 ユーリーが靴を脱いだ。俺も脱いだ。靴を揃えるなんてしなくていいのに、ユーリーはそれをする。どこでもきちんとしているために習ったことだという。もちろん、この家で習ったことだ。お義父さんの家は土足だ。それぞれの部屋に入るときにはスリッパに履き替える。その時、靴は下駄箱に置く。ユーリーの部屋はいつもきちんと片付けられていて、彼の几帳面さが出ていると思う。

 それに比べて、今、ソファーですやすやと寝息を立てている一貴さんはどうだろうか。昨日はうちで晩ご飯を食べてお酒を飲んで、そのままソファーで寝ていた。家に帰ってベッドで寝た方が肩凝りにはいいだろうに、ここで寝ると言って聞かなかったから、そうさせた。
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