503 / 938
15-1 大学の卒業式
しおりを挟む
3月25日、金曜日。午前6時。
今日は大学の卒業式だ。10時15分からの式典があり、お義父さんが保護者として出席する。実家の両親には家に居てもらうことにした。来たがっていたが、引っ越しの日程と重なってしまったことと、父がまた腰を痛めてしまったからでもある。重い物を持ってしまったのだそうだ。
俺は今、畑に水やりをしている。トマトとネギとナスだ。それと、アマリリスだ。まだ花は咲いていない。初夏になったら咲くだろうと思っている。花言葉は“おしゃべり”“輝くほどの美しさ”だ。その言葉の通り、俺の隣では、朝の稽古を終えたユーリーが喋っている。相手は月島さんだ。だいたい火曜日の朝か、金曜日の朝のこの時間に電話で話すのが日課になっている。
今日の話題は、“霊と宇宙人の存在についての会合のこと”だ。研究グループが日本国内にいて、そのグループに入っている月島さんからの紹介で、ユーリーと唐岩さんという出版社の同僚が参加するようになった。ほとんどが、いわゆるオカルト好きの集まりで、月1回、カフェで集まってミーティングを行うそうだ。この間までは会って話すことが多かったが、全国に会員が出来たことでビデオ会議が取り入れられた。来月の幹事は月島さんだ。ユーリーも手伝いをするという。
「月島君。会場は新宿の“アンダーウェア”でOKだ。アキラママにも了承を貰っている。会費は3000円でいいそうだ。焼酎、コーラ、オレンジジュース、紅茶飲み放題、カラオケ歌い放題で、翌朝5時まで居られる。新宿二丁目は安い店があるんだな。もっと高いと思っていたよ。へえーー、ママが出る月曜日だけのサービスなのか」
「へえーー、俺も行ってみたいな」
ユーリーの話に俺も興味を持った。来月の集まりは月島さんの友達のバーのママが経営している新宿二丁目のお店ですることになったそうだ。アキラママは銀座にも店を持っているが、みんなで騒げて安く出来るから新宿二丁目の店でと、アキラママからの誘いがあったそうだ。
月島さんとユーリーの関係性は“友達同士”だ。これは譲れないとユーリーが言っている。本当にそうなのかと聞くと怒り出すから聞けないし、からかえない。口を聞いてくれなくなったら悲しいし、何よりも退屈してしまう。すると、テラス窓が開き、黒崎から声を掛けられた。
「夏樹。ユーリー。スープが温まったぞ」
「ありがとう~。ユーリー、中に入ろうよ~」
「ああ、月島君。このまま話していて良いよ。僕はお腹いっぱいだから、お茶だけ飲む。いや、ダイエットビスケットだけが朝食じゃないよ。いや、嘘だ。ごめん。ダイエットビスケットだけにしてある。だって……、1.5キロも太ったんだ。カレーを食べ好きた。おやつもね。君との食べ歩きは美味しいもの揃いだ。君はどうやって体重を維持しているんだ」
「はいはい。入ろうねえ」
そう言って、俺はユーリーの手を引いた。今月からは黒崎がたまにスープを温めてくれるようになった。昨日作っておいた鶏肉と野菜のスープだ。IHコンロのスイッチを入れるだけでいい。後は吹きこぼれるのを気を付けておくこと、火加減だ。黒崎の様子からすると、上手くいっているに違いない。
玄関を入ると、アンが走って出てきた。いつもなら俺と外に居るが、今日は黒崎がキッチンに立っているから心配だったようで、黒崎の足下から動かなかった。
「アンーーーー、帰ってきたよ。あ、来たね~。良い子だね。ユーリーもいるよ。おはようって……」
「アン。おはよう。お邪魔するよ。……じゃあ、月島君の方は体重の増減がないということだな。あんなに甘いものを食べたのにか。いいなあ。僕なんか、すぐに変わってしまう。今度、僕の腹を見てくれ。少し肉がついてきた。これ以上は増やせない」
「はいはい。入ろうよ~」
ユーリーが靴を脱いだ。俺も脱いだ。靴を揃えるなんてしなくていいのに、ユーリーはそれをする。どこでもきちんとしているために習ったことだという。もちろん、この家で習ったことだ。お義父さんの家は土足だ。それぞれの部屋に入るときにはスリッパに履き替える。その時、靴は下駄箱に置く。ユーリーの部屋はいつもきちんと片付けられていて、彼の几帳面さが出ていると思う。
それに比べて、今、ソファーですやすやと寝息を立てている一貴さんはどうだろうか。昨日はうちで晩ご飯を食べてお酒を飲んで、そのままソファーで寝ていた。家に帰ってベッドで寝た方が肩凝りにはいいだろうに、ここで寝ると言って聞かなかったから、そうさせた。
今日は大学の卒業式だ。10時15分からの式典があり、お義父さんが保護者として出席する。実家の両親には家に居てもらうことにした。来たがっていたが、引っ越しの日程と重なってしまったことと、父がまた腰を痛めてしまったからでもある。重い物を持ってしまったのだそうだ。
俺は今、畑に水やりをしている。トマトとネギとナスだ。それと、アマリリスだ。まだ花は咲いていない。初夏になったら咲くだろうと思っている。花言葉は“おしゃべり”“輝くほどの美しさ”だ。その言葉の通り、俺の隣では、朝の稽古を終えたユーリーが喋っている。相手は月島さんだ。だいたい火曜日の朝か、金曜日の朝のこの時間に電話で話すのが日課になっている。
今日の話題は、“霊と宇宙人の存在についての会合のこと”だ。研究グループが日本国内にいて、そのグループに入っている月島さんからの紹介で、ユーリーと唐岩さんという出版社の同僚が参加するようになった。ほとんどが、いわゆるオカルト好きの集まりで、月1回、カフェで集まってミーティングを行うそうだ。この間までは会って話すことが多かったが、全国に会員が出来たことでビデオ会議が取り入れられた。来月の幹事は月島さんだ。ユーリーも手伝いをするという。
「月島君。会場は新宿の“アンダーウェア”でOKだ。アキラママにも了承を貰っている。会費は3000円でいいそうだ。焼酎、コーラ、オレンジジュース、紅茶飲み放題、カラオケ歌い放題で、翌朝5時まで居られる。新宿二丁目は安い店があるんだな。もっと高いと思っていたよ。へえーー、ママが出る月曜日だけのサービスなのか」
「へえーー、俺も行ってみたいな」
ユーリーの話に俺も興味を持った。来月の集まりは月島さんの友達のバーのママが経営している新宿二丁目のお店ですることになったそうだ。アキラママは銀座にも店を持っているが、みんなで騒げて安く出来るから新宿二丁目の店でと、アキラママからの誘いがあったそうだ。
月島さんとユーリーの関係性は“友達同士”だ。これは譲れないとユーリーが言っている。本当にそうなのかと聞くと怒り出すから聞けないし、からかえない。口を聞いてくれなくなったら悲しいし、何よりも退屈してしまう。すると、テラス窓が開き、黒崎から声を掛けられた。
「夏樹。ユーリー。スープが温まったぞ」
「ありがとう~。ユーリー、中に入ろうよ~」
「ああ、月島君。このまま話していて良いよ。僕はお腹いっぱいだから、お茶だけ飲む。いや、ダイエットビスケットだけが朝食じゃないよ。いや、嘘だ。ごめん。ダイエットビスケットだけにしてある。だって……、1.5キロも太ったんだ。カレーを食べ好きた。おやつもね。君との食べ歩きは美味しいもの揃いだ。君はどうやって体重を維持しているんだ」
「はいはい。入ろうねえ」
そう言って、俺はユーリーの手を引いた。今月からは黒崎がたまにスープを温めてくれるようになった。昨日作っておいた鶏肉と野菜のスープだ。IHコンロのスイッチを入れるだけでいい。後は吹きこぼれるのを気を付けておくこと、火加減だ。黒崎の様子からすると、上手くいっているに違いない。
玄関を入ると、アンが走って出てきた。いつもなら俺と外に居るが、今日は黒崎がキッチンに立っているから心配だったようで、黒崎の足下から動かなかった。
「アンーーーー、帰ってきたよ。あ、来たね~。良い子だね。ユーリーもいるよ。おはようって……」
「アン。おはよう。お邪魔するよ。……じゃあ、月島君の方は体重の増減がないということだな。あんなに甘いものを食べたのにか。いいなあ。僕なんか、すぐに変わってしまう。今度、僕の腹を見てくれ。少し肉がついてきた。これ以上は増やせない」
「はいはい。入ろうよ~」
ユーリーが靴を脱いだ。俺も脱いだ。靴を揃えるなんてしなくていいのに、ユーリーはそれをする。どこでもきちんとしているために習ったことだという。もちろん、この家で習ったことだ。お義父さんの家は土足だ。それぞれの部屋に入るときにはスリッパに履き替える。その時、靴は下駄箱に置く。ユーリーの部屋はいつもきちんと片付けられていて、彼の几帳面さが出ていると思う。
それに比べて、今、ソファーですやすやと寝息を立てている一貴さんはどうだろうか。昨日はうちで晩ご飯を食べてお酒を飲んで、そのままソファーで寝ていた。家に帰ってベッドで寝た方が肩凝りにはいいだろうに、ここで寝ると言って聞かなかったから、そうさせた。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる