青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
502 / 938

14-71

しおりを挟む
 午前9時40分。

 俺達は今、空港の駐車場に居る。アレクシスさんが乗った飛行機が飛び立ったところを見た。俺の手元のスマホには、その飛行機の写真が収められている。後でアレクシスさんに送るために。

 今回の日本滞在はどうだっただろうか。黒崎家に滞在中、アレクシスさんは日本で出来た幼なじみに会いに行ったり、俺達と出かけたりした。その中でも思い出深いのが、近所のコンビニでの駐車場でのことだ。

 夜中にオバケを見に行ったが何も出なくて、こんなに毎日のように歩いている道だから、オバケの方だって俺達のことが珍しくなくて出てこないのではないかと思った。それを口にすると、アレクシスさんが何かを見てしまい、げえええっと驚きの声を上げた。俺達が11月に見に行った下半身だけのオバケが見えたという。

 アレクシスさんがドイツでもオバケを目撃していたし、黒崎家でも見ていたから驚かないと思っていたのにすごい反応をしていたから俺まで驚き、歌手の声量で悲鳴を上げてしまった。夜中だから近所迷惑だ。そんなことを黒崎から言われて口を手で覆われて、なんとか声を収められた。

 その様子をユーリーが動画に収めていて、俺達に渡してくれた。それはアレクシスさんのドイツへのお土産として、エミリアさんに見せるそうだ。息子達は日本で楽しんでいました。そう伝わるといい。

 俺達は空を見上げて、アレクシスさんが乗った飛行機が見えなくなるまで見送った。次はいつの再会になるだろうか。今は昔と違ってビデオ通話上がり、姿を見ながら話が出来る。昔だったら電話でもなかなか出来なかったと思うから、本当に遠い国から来てくれたのだと分かった。

「黒崎さん。この後、みんなでカフェに行かない?朝ご飯をたくさん食べた後だけどさ」
「そう思って、店を予約しておいた。お前の好きなテル・カフェだ」
「やったーーーー。行きたかったんだ。午前中も予約できるようになったんだね。ランチからじゃ無くて……」
「行列が出来るようになった店だ。予約できるようにしてくれという声が多かったんだろう」

 テル・カフェ。そこは一年前に出来た店だ。最近行ったのは3ヶ月ぐらい前だ。けっこう時間が経っている。そこでは藤沢とバッタリ会うことが2回もあった。向こうは仕事の打ち合わせだった。今回もそうなるだろうか。

「カズ兄さん。もしかしたら、藤沢に会えるかも知れないよ。俺達、2回もそこで会ったんだ」
「修輔君は今日は休みの日だ。家でゆっくりしているだろう。一昨日、会いに来てくれたから、まだ会えないと思う」
「ヨークはなんて言っているの?そう言っているの?」
「いいや。会えるかも知れないよとは言われたところだ。でも、僕は期待しないようにしている。期待して、その結果が違うものだったら、がっかりする」
「そうだね。来週、食事に行けるんだし、会えなくても良いか~」

 一昨日、藤沢がアレクシスさんに会いに来てくれた。その時はローザーさんも一緒だった。撮影で知り合いになり、仲良くなり、一緒に来てくれたわけだ。けっして一貴さんに会いに来たわけではないと言っていたのが印象的だった。

 それはそうだろう。親子鑑定の結果のことで一貴さんのことを心配した藤沢が、いろいろとフォローしてくれていた。そんな好意に調子に乗った一貴さんが恋のポエムをラインで送りつけて、藤沢がドン引きしてしまった。しかし、来週は会ってくれるから良かったと思っている。

「カズ兄さん。君のことを思うと動悸がが収まらないなんて恋のポエムは笑えないよ。やめた方が良くない?そういうのを送るのは……」
「思いつくんだ。……ああ、空が快晴だ。気持ちいいなあ」
「本当にそうだね!」

 俺達はもう一度空を見上げた。すると、目の錯覚なのか、1匹のカモメのような鳥が視界に入った。そこで、カモメが出てくる夢占いのことを思い出した。これからの環境は自由を満喫できるものになるという意味だった。

 一貴さんがもっと自由になるといい。アレクシスさんもそう言っていた。自由奔放に行動しているように見えて、実は違うことを分かっている。いつも人に気を遣い、失敗しないようにと頑張っている。今日はカフェで飲み物をこぼして飲んでいても何も言わないでいたい。

 そんなことを考えていると、ヨーク達から声を掛けられた。今日もここに居る。こんなに家族が多かったんだねと思いながら、それを頼もしいと思いながら、もう見えなくなった飛行機が飛んでいる方向を向いて手を振った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...