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黒崎の元秘書をしていただけあって、早瀬さんは面倒な人の世話をすることが得意だ。意見を曲げない一貴さんを上手に操縦してあやしてくれている。今日だって、我儘を言う一貴さんのことをたしなめてくれていた。藤沢と一緒に行く水族館デートの後、レストランで食事をするというのだが、希望の席が取れなくて、他の店に変えようかと言いだしていたのを、止めてくれた。良いことがあるかも知れないよという一言によって。
「カズ兄さん。レストランのことは解決したの?」
「あ、ああ。叱らないでくれ。行きたい店はキセイだ。予約した日は空きがあって、通常の席になった。僕としては無理に用意してもらうセレンディピティの席がよかったんだが……」
「キセイが取れたならいいじゃん。空きが会った時のジンクスって、たしか、ずっと長く続く縁だっていうことだったよ」
「僕としては恋人同士になる席がいい。だから、次の日を予約してみようとしたら、その日も空きがあった。僕の都合で選んだ日は全て空きがあるんだ……。会食がある日は満席で、その日なら、月島君のツテを頼って特別増設席が用意できると言われた……」
「うひゃひゃひゃ。友達コースってこと?」
「そうに違いない。ユーリー、どうしたんだ?」
「僕と月島君はその特別増設席で食事をしたんだ……」
行かなきゃ良かったと、ユーリーが肩を落とした。あくまでもジンクスというもので、全員がそうではないだろう。そんな慰めの言葉が思い浮かんだが、それだと月島さんに悪いと思ったから、何も言えなくなった。キセイのその席に座った後、たしかに2人の距離が縮まっていると思う。オカルト研究部の集まりに行くようになり、話が合うようだ。
「ユーリー。月島さんとはどう?うひゃひゃひゃ」
「けっこう強引な人だ。僕はアスパラガスが苦手だというのに、運気がいい野菜だからと言って、食べさせようとするんだ。伊吹君の話していた風水だ。同じ鑑定士のことを信頼しているらしい」
「伸びるなんて、良い意味だよ。え?この間はまだ旬じゃなかったから、運気は良くないっていうのかよ?」
「ああ。風水の本は僕も読んだ。旬の野菜が良いそうだ。アスパラガスの旬にはまだ早かったはずだ」
「さすがはあんただねえ。旬の野菜のことを知っているもんねえ……」
ユーリーは大らかで大ざっぱなイメージを持っていた俺だったが、けっこう細かい性格をしていると分かってきている。植物のことに詳しくて、幼少期に黒崎家の庭で植物観察したおかげだと言っていた。何でも食べるが、わりと好き嫌いがある。嫌いでも、きちんと残さずに食べるのは偉いと思う。その嫌いを口にすることは滅多にないのに、月島さんの前では口にするようだ。なんだが嬉しくなった。
「なんだよ、ユーリー。月島さんにはバンバンと本音を言っているじゃん。そういうことが言える相手って貴重なんだよ」
「僕のことが好きだというから、幻滅して欲しかった。それなのに、何を言っても逆効果で、何でも喜ばせている……」
「月島さんのドストライクの好みということか。たしかに君はいい男だ」
一貴さんの言葉に、ユーリーが苦笑した。まさかこんなに愛されるとは思わなかったと言っている。そういう人を大事にした方が良いと思う。ユーリーはたしかにかっこいい。賢いし、優しいし、頼りになる。少々我儘なのはチャームポイントだ。こんな人ならモテそうなのに、今まで恋人がいなかった。ちゃんと付き合った人が居なかったのが意外だ。彼なら色んな人からアプローチがあっただろう。
「ねえ、ユーリー。昔の人が忘れられなくて、誰ともちゃんと付き合ってこなかったんだろ?」
「僕の場合は本気になって貰えないんだ。昔好きだった人もそうだった」
「月島さんと付き合えば良いのに。あんたのことが好きなんだ。何を言っても喜んで貰えるなんて、なかなかいないよ。ねえ、カズ兄さん……」
「ああ、僕もそう思う。ユーリーの場合は、可愛い系の男性が好みだから、月島さんはタイプじゃないんだろう。その気持ちは分かるが、彼はいい男だ。根気強いし、いつもニコニコしている。これも大事なことだ」
「そうだよ~。度の合っていない眼鏡を掛けたままだったけど、今はちゃんと度を合わせているから、ユーリーのことをきちんと見ているよ。それに、ほとんどコンタクトレンズなんだろ?度が合っていないわけじゃないってば」
「うるさい。ふん!」
ユーリーが拗ねてしまった。本当なら南波さんと付き合うことになっていたのに、月島さんが滑り込んできた時のタイミングは驚きだ。南波さんと初デートをした後なら気まずかっただろう。いや、あの場に滑り込むのも十分に気まずいのか。
「カズ兄さん。レストランのことは解決したの?」
「あ、ああ。叱らないでくれ。行きたい店はキセイだ。予約した日は空きがあって、通常の席になった。僕としては無理に用意してもらうセレンディピティの席がよかったんだが……」
「キセイが取れたならいいじゃん。空きが会った時のジンクスって、たしか、ずっと長く続く縁だっていうことだったよ」
「僕としては恋人同士になる席がいい。だから、次の日を予約してみようとしたら、その日も空きがあった。僕の都合で選んだ日は全て空きがあるんだ……。会食がある日は満席で、その日なら、月島君のツテを頼って特別増設席が用意できると言われた……」
「うひゃひゃひゃ。友達コースってこと?」
「そうに違いない。ユーリー、どうしたんだ?」
「僕と月島君はその特別増設席で食事をしたんだ……」
行かなきゃ良かったと、ユーリーが肩を落とした。あくまでもジンクスというもので、全員がそうではないだろう。そんな慰めの言葉が思い浮かんだが、それだと月島さんに悪いと思ったから、何も言えなくなった。キセイのその席に座った後、たしかに2人の距離が縮まっていると思う。オカルト研究部の集まりに行くようになり、話が合うようだ。
「ユーリー。月島さんとはどう?うひゃひゃひゃ」
「けっこう強引な人だ。僕はアスパラガスが苦手だというのに、運気がいい野菜だからと言って、食べさせようとするんだ。伊吹君の話していた風水だ。同じ鑑定士のことを信頼しているらしい」
「伸びるなんて、良い意味だよ。え?この間はまだ旬じゃなかったから、運気は良くないっていうのかよ?」
「ああ。風水の本は僕も読んだ。旬の野菜が良いそうだ。アスパラガスの旬にはまだ早かったはずだ」
「さすがはあんただねえ。旬の野菜のことを知っているもんねえ……」
ユーリーは大らかで大ざっぱなイメージを持っていた俺だったが、けっこう細かい性格をしていると分かってきている。植物のことに詳しくて、幼少期に黒崎家の庭で植物観察したおかげだと言っていた。何でも食べるが、わりと好き嫌いがある。嫌いでも、きちんと残さずに食べるのは偉いと思う。その嫌いを口にすることは滅多にないのに、月島さんの前では口にするようだ。なんだが嬉しくなった。
「なんだよ、ユーリー。月島さんにはバンバンと本音を言っているじゃん。そういうことが言える相手って貴重なんだよ」
「僕のことが好きだというから、幻滅して欲しかった。それなのに、何を言っても逆効果で、何でも喜ばせている……」
「月島さんのドストライクの好みということか。たしかに君はいい男だ」
一貴さんの言葉に、ユーリーが苦笑した。まさかこんなに愛されるとは思わなかったと言っている。そういう人を大事にした方が良いと思う。ユーリーはたしかにかっこいい。賢いし、優しいし、頼りになる。少々我儘なのはチャームポイントだ。こんな人ならモテそうなのに、今まで恋人がいなかった。ちゃんと付き合った人が居なかったのが意外だ。彼なら色んな人からアプローチがあっただろう。
「ねえ、ユーリー。昔の人が忘れられなくて、誰ともちゃんと付き合ってこなかったんだろ?」
「僕の場合は本気になって貰えないんだ。昔好きだった人もそうだった」
「月島さんと付き合えば良いのに。あんたのことが好きなんだ。何を言っても喜んで貰えるなんて、なかなかいないよ。ねえ、カズ兄さん……」
「ああ、僕もそう思う。ユーリーの場合は、可愛い系の男性が好みだから、月島さんはタイプじゃないんだろう。その気持ちは分かるが、彼はいい男だ。根気強いし、いつもニコニコしている。これも大事なことだ」
「そうだよ~。度の合っていない眼鏡を掛けたままだったけど、今はちゃんと度を合わせているから、ユーリーのことをきちんと見ているよ。それに、ほとんどコンタクトレンズなんだろ?度が合っていないわけじゃないってば」
「うるさい。ふん!」
ユーリーが拗ねてしまった。本当なら南波さんと付き合うことになっていたのに、月島さんが滑り込んできた時のタイミングは驚きだ。南波さんと初デートをした後なら気まずかっただろう。いや、あの場に滑り込むのも十分に気まずいのか。
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