青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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15-34(夏樹視点)

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 17時。

 テレビ局から帰ってきたところだ。生放送の収録が終わり、その後のインタビューに答える仕事も終わり、俺達の仕事は終わった。後は休みになる。次の仕事は月曜日までない。バンドの音合わせのために音楽スタジオで集合になる。

 家まではIKUの車で帰ってきた。みんなと一緒にだ。俺が最後になり、この家の前で降ろしてもらった。本当はお義父さんの家の前でないといけないが、今日はそうしてもらった。お土産にテレビ局からスルメを貰ったからだ。アンはスルメが好きだ。しかし、以前にあまりに欲しがるから少しだけ食べさせた結果、消化が悪くて、吐いてしまった。それ以来、我が家ではスルメを焼かなくなった。

 しかし、お義父さんの家で焼いたときに風に乗ってこの家まで匂いが届いてしまい、アンが落ち着かなくなっていた。パックに入ったスルメを見ても、匂いを嗅がせてもいけない。だから、今日はお義父さんの家で留守番をしているアンに見せないようにする。取ってあった発泡スチロールに入れて保管する。それをお義父さんの家に持って行こうと思う。

「これでよしと。これなら匂いがもれないから良いよね。アンってば、お酒を飲んだら強そうな気がするなあ。これでバレないと良いけど……」

 アンにバレたら厄介だ。ずっと、スルメを追いかける。晩ご飯も食べない。それを食べたいのだと主張する。今までに何度か焼いたのに反応がなかったが、去年焼いたスルメはとても匂いが良かったのか、気に入ったようだ。今回のスルメもそうなるだろう。

「クイズに当たって貰ったスルメだもんね。有名な店のやつなのか。黒崎さん、喜ぶだろうなあ。お義父さんも、みんなも食べるし……」

 黒崎家のメンバーはみんなスルメが好きだ。特にユーリーだ。小さい頃に食べ過ぎてアンのように消化不良を起こして、吐いてしまったことがあるという。それ以来、日本にいるときは適量を食べている。

 そのユーリーが家の中にいる。俺が一人で家に居るなんてさせない黒崎の命令に従い、ここに来てもらった。IKUの車から降りるときには彼がいた。在宅勤務が続いて肩凝りがあるから、少し動いた方がいいと言ってくれた。しかし、わざわざ迎えに来て貰うなんて悪いと思っている。

「ユーリー。ごめんね。ちょうど良いときだったんじゃないの?」
「僕は良いんだよ。少し外を歩きたかったし、スルメも欲しかった」
「うん。あんたにあげるよ。みんなで食べてね。風の向きがこっち方向じゃないときに……」
「明日は西の風だ。焼いて貰うことにする。僕が焼くと焦げるから……」
「うん。どうしてだろうね。山崎さんが焼くと柔らかいんだ。火加減かなあ。俺が焼いても焦げるんだ。月島さんを呼んだら?けっこうたくさんあるからさ」
「そうだな。色々と世話になっているから、渡したい」
「お義父さんの家で食べるんだよ。部屋にも呼んであげてよ」
「いやだ。部屋でなんて二人きりになりたくない。僕は襲われてしまう」
「いいじゃん。襲われてしまえよ~」
「いやだ」

 俺の言いように、ユーリーが首を横に振った。来月の会合の手伝いをする仲なのにと思った。オカルト研究部のことだ。彼らはお互いの家を行き来していない。会うのは外のみだ。それでも仲が進展していると思うのは俺だけだろうか。

 ふと、ユーリーが来ているニットの色味を見た。クリーム色のニットだ。彼は柔らかい色味を好んでいるから、こういう色の服が多い。法事の時の喪服姿は別人のようだった。怖さもあった。それは黒崎と似ている感じもあった。だからだろうか。明るい色味を着るのは。

「ユーリーさ。今の色のニットも良いけど、黒とか紺も着てみたら?喪服姿が似合っていたよ。あんな黒一色も良いね」
「僕は兄さんから怖いと言われたことがある。同級生からもだ。でも、君の学位記の受け取りの時には黒い服が良いだろう。着てあげるよ」
「そうだったね。いつもごめんね。俺一人でいいのに、あの人がうるさいからさ~」

 大学の学位記の受け取りが必要だ。卒業式を途中で退席したからだ。今は大学は春休みの期間であり、入学式の準備もあるから大学が忙しくて、受け取りは4月になる。授業が開始された後だ。俺のその時はスーツで行こうと思っている。神仙教授とも話したいから、普段着の方が俺らしくて良いかなとも思っている。

 その時には黒崎も一緒に行きたいと言っていたが、仕事の休みが取れず、ユーリーに付き添いを頼んだ。お義父さんも来ると言っていた。俺とお義父さんだけでいいのに、お義父さんが高齢だから何かあってはいけないと心配した黒崎が、ユーリーも一緒に行ってくれと頼んだわけだ。

 ユーリーは快く引き受けてくれた。その時に学食のビュッフェを食べてこようと思っている。真羽がいるから話が出来るだろう。ノアも居る。大学生活の様子を見ておきたいだろう。
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