青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 祖父からの話はこうだった。台風被害の家が多くて大工さんの数が足りなくて、営業担当者が屋根の上に上がって被害の数を確認したそうだ。それだけ多かったのか。そのうち修理まで担当しそうだと思った。そして、屋根の上に上がったのは6件あったと聞いた。

「わーーー。怖そうだね!おじいちゃん、普段は見ないだろ?」
「そういう流れになったんだ。大工さんが一緒に上がって見てくれって言うからだ。そこで修理代金の見積もりを出して、工事になった。おかげで収入が入ったから、税務署に確定申告しないといけないと思った。でも、そんなに大きな金額じゃなくてな。そこで、税務署に聞いてみたら、申告しなくていいんだって言うんだ。そんなに大きな金額じゃない。そんなことを言われて、がっかりした。これでもおじいちゃんは、10年前は、国税局から調査が入ったし、毎月電話が掛かっていたんだぞ。あんたの会社、儲けているだろうって……。それがなくなって、悲しいよ。二葉君の倉口のお父さんも忙しかったんじゃないか。それと、まだ言いたいことがある。中山のおじいちゃんから電話が掛かってきたか?」
「うん。掛かってきたよ。お兄ちゃんが言ったの?」
「ああ。俺にもお前に電話を掛けてやってくれって言うんだ。向こうは86歳だ。大事にしてやってくれ。こっちは73歳だ。まだ若い。おばあちゃんだって元気だ。それが言いたかった」
「ありがとう。俺と話したいって思っていたって言ってくれたよ。具合はだいぶ良いって……」
「そうか。お前、疲れているだろう。電話を切るよ。ゆっくり休めよ」
「ありがとう。おやすみ」
「おやすみ」

 プツ。祖父との電話を終えた。またねという言葉と共に。向こうには母の妹の沙羅叔母さんが同居しているから安心できる。高齢者だけの家ではない。それがいいのか、祖父は若いと思う。

 さてと。俺はスマホをテーブルの上に置いた。そして、アンのことを撫でた。俺の足下に居て、ハンバーガーのおもちゃで遊んでいる。もこもこの毛が気持ちいい。トリミングすれば、ツルツルといった感じの毛並みになる。もうすぐで美容院に連れて行くから、今のうちに出触りを楽しんでおくことにした。

「アン、もこもこだね。今、おじいちゃんと話したんだ。元気そうだったよ。オモチャを送ってくれたおじいちゃんだよ。そうだ。写真を撮ろうか。中山のおじいちゃんに見せてあげたいから……」
「俺が撮ってあげる。向こうはメールやラインをするのか?」
「それが、聞いていないんだ。両方していないかも。郵便で写真を送るよ」

 俺はアンのことを抱き上げて、椅子に座り直した。その様子をユーリーが写真に撮ってくれた。実はまだメイクをしたままだ。ちょうど良いと思った。普段着姿でメイクをしているから、変わっていて良いと思う。いつもなら控え室で落として貰うのだが、今日は早く帰ってこようと思い、お風呂で落とそうと思って帰ってきた。

「夏樹。落ちないメイクだな。泣いたのに、アイラインはそのままだ」
「ローザーさんのメイクだからね。俺、今は笑顔かな?」
「ああ、ホッとしている顔をしている。夏山のおじいちゃんと話したからだろう」
「うん。中山のおじいちゃんとおばあちゃんとは、これから関係が出きていくんだ。どうなるかな……」
「なんだ、さっきは喜んでいたくせに」
「うん。でも、夢だったかも知れないって思うんだ。万理とは話したかな……。あ、黒崎さんから電話だ」

 すると、黒崎から電話が入った。いつも通りに帰ってくるそうだ。今日の晩ご飯は酢豚だ。ビールによく合うだろう。それを言った後、祖父と話したことを報告した。黒崎の方にはとっくに伊吹から話がされてあったそうで、伊吹に任せると言ったそうだ。

「気を付けて帰ってきてね」
「ああ。そうする。泣いていないんだな」
「泣いていないよ。笑っているよ」

 そんなことを言い返したのに、今になって涙がこみ上げてきて、泣きそうになった。そんな俺のことを、今さっき入ってきたお義父さんが見て驚き、そして事情を思いだしたと言って、俺のことを慰めてくれた。
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