青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
542 / 938

15-40

しおりを挟む
 教授に男ができたぞ!そんな声があちこちから聞こえてきた。ユーリーはまだ教授の手を握っている。引っ込めようとしていない。だから、ますます目撃者の数が増えていった。

「教授。嫌だったら手を引っ込めて下さい……」
「そうですよ。ユーリー、手を離して……」

 俺とノアが2人のことを離そうとした。しかし、彼らは見つめ合ったままで、手を離そうとしない。さらにユーリーが微笑みかけて、教授が俯いた。俺としては月島さんのことも南波さんのことも気になるから、やめてほしかった。こじれてほしくない。

「ユーリー。月島さんと南波さんのことはどうするんだよ~?」
「そうだよ。ユーリー。好きな人が居るんだろ!」
「ああ、そうなんですね……」

 教授がハッとした顔になった。そして、手を引っ込めようとして、ユーリーが引っ張った。

「ああ、困りましたね……」
「困らないでくれ。僕は君に興味を持った。今夜、電話もしてもいい?」
「はい。今日なら家に居ます」
「ふうん。普段は外に居るのか。どこに行っているの?」
「外食です。それと、研究室にいる日もあります。生徒に付き添ってです」
「なるほど」

 ユーリーが微笑み、手を離した。そして、お互いにテーブルの上に手を置き、またユーリーが教授の手を握った。親しくなりたいと言いながら。それには教授が頷いた。

「もちろんです。ユリウス・バーテルスさん。卒業式の日にはゆっくりお話しできませんでした。僕の方も話したいと思っていました」
「本当に?伊吹君という夏樹の兄貴から聞いたんだけど、二股騒動があったんだって?」
「ああ、もうーーー。ユーリー、何を聞いているんだよ~」

 伊吹からの情報によると、教授にはかつて好きな男性が居て、同棲目前になっていたそうだ。しかし、相手にはもう一人好きな人が居て、それを知った教授が仕返しに浮気心を起こし、それが当時同じ大学に居た先生だということだった。伊吹はそれを教授の弱みとして脅し、俺のレポート評価を良くさせたと言っていた。恋のトラブルなんて誰にでも起きる物だ。大学内で知られたからと言って、どうって事は無いと思う。

 ユーリーは何を言いたいのだろうか。伊吹の名前を出されて、教授がはあっとため息をついた。そして、気難しい感じで眉をひそめて、ユーリーのことを見つめ返した。機嫌を悪くさせるなんて良くないことだ。せっかく連絡先の交換までしたのに。普通に友達として接することが出来ないのか。 

 そこで、ノアがユーリーのことを叱り始めた。しかし、ユーリーは気にしない様子で、教授のことを見つめた。お互いに沈黙が漂っている。そして、ユーリーが口を開いた。

「もう終わったことなのか?」
「終わったことではありません。その相手とは友人関係が続いています。もう同棲する気は起きませんが、恋愛関係は無いとは言えません」
「そうか。僕は恋を諦めたばかりだ。さっき夏樹が出した名前の南波君という子だよ。それと、月島さんという人が僕に好意を寄せている。たまにデートのようなことはしているけど、身体の関係はないんだ」
「僕も同じです。彼はまだ僕のことが好きだと言っています」
「僕のこと、ナシじゃないんだろう?」
「ええ。素敵な人だと思います」
「アリかもって立ち位置にしてくれないかな?」
「いけません。お互いに片付いていない相手がいる状態です。はい。もう遊ばないようにしましょう。お互いに落ち着いた方が良い」
「待ってくれ。僕も二股騒動があった。お互い様だ。気が合うね?」
「あちゃーーーー」

 ユーリーの言いようにノアが頭を抱えた。教授はからかわれることを嫌う人だ。プライベートなことをあれこれと詮索されることも嫌う。これから関係を作っていきたい人の発言とは思えない。しかし、ユーリーは悪びれた様子はなくて、ニコッと笑って教授のことを見ている。

 ユーリーの真意とは何だろうか。気が合うねということだけ言えれば良かったのか。そして、今夜電話するというのは達成できるのか。そんなことを思っていると、教授の方から、20時頃の電話が良いと指定が入った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...