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午前10時。
黒崎と一貴さんの車を大学の近くにある駐車場に停めて、のんびりと歩いて聖アルテマ学園大学に入っていった。大きな敷地にはグラウンドがあり、生徒達が走っていた。部活だろうか。その様子を眺めていると、お義父さんが立ち止まった。見たいのか?という言葉とともに。そばにはこの大学の先生がいる。案内役で出てきてくれたそうだ。お義父さんはこれから学長に会う。一緒に朝陽に会った後、一貴さんも学長室に向かう。俺達はそこで帰ることになる。
お義父さんがなるべく俺のことを外に出してくれようとしている気持ちが伝わってくる。そばにいる先生に話しかけて、あの生徒達は授業中なのかと聞き始めた。そして、先生の方から説明がされて、お義父さんが俺の方を向いた。
「夏樹。彼らはテニス部の生徒だそうだ。空手部も走っている。お前が興味あるなら稽古を見学できるよ」
「親父。夏樹は朝陽に会うだけだ。早く帰らせたい」
「圭一。夏樹は外の空気を吸いたいはずだ。家の外に出そうとしないから、気詰まりだろう。全く……。庭も歩かせないとは、どうかしている」
「……」
お義父さんが俺の気持ちを代弁してくれた。卒業式で倒れて以来、仕事以外は黒崎が外に出してくれない。庭も歩いてはいけないと言われている。4月10日のデビュー曲の発表は無事に終わり、一息ついている。来週にはボーカルレッスンがあり、アルバムのレコーディングも始まる。また忙しくなるから、今のうちに休んでおけということだ。だからこそ、俺としては庭を散歩したい。畑の水やりだけしか外に出ないのはつまらない。
「夏樹。こちらの先生は今村先生という。西川先生と親しいそうだ。理学部で天文学を教えているそうだ。口腔外科部長は学長室にいるそうだ。お前に会いたかったそうだ」
「こんにちは。黒崎夏樹です」
「初めまして。今村です。抜歯されたということですが、痛みはどうですか?」
「麻酔が効いていて痛くありません。痛み止めを早めに飲みましたから、麻酔が切れても楽だと思います」
やっと話せた。お義父さんから紹介されて、話しても良いと言われるまでは、俺は口を開いてはならない。これは今までも同じで、今日だけが特別ではない。ニコッと笑顔を作り、ここで歯を抜いてよかったですとお礼を伝えた。
すると、今村先生から微笑み返しを受けて、先生が俺の胸元を見た。そこで、俺は今日の服装が派手だったかも知れないと思って、少し恥ずかしくなった。今日の俺の格好はいつも通りの浅草&大阪ミックスカジュアルだ。今日は特に大きなトラの顔がプリントされたTシャツを着ている。
「このTシャツですか?大阪で買ってきてもらった、トラの顔のTシャツです。パーカーは浅草の物です」
「かっこいいですね。僕も欲しいです」
「そうですか!そう言ってもらえて良かったです」
ニコッと笑顔を作ると、今村先生の顔が赤くなった。最近の俺は押しが強いというから、何か感じたのだろう。そこで、笑うのをやめた。黙っておいた方が良いだろうか。
そこで、黒崎の方を見ると、何も言われなかった。お義父さんもニコニコしている。一貴さんはクールな感じだ。今日は魔術師のような格好をせずに、大人しい格好をしている。俺も派手で一貴さんまで普段通りだと病院で目立ちすぎてしまう。だから、大人しいデザインを選んだのだと思う。
今村先生と何を話そうかと思っていると、お義父さんから助け船が入った。
「今村先生。息子の圭一と一貴です。紹介が遅くなりました。朝陽君は圭一の弟です。一貴の会社で朝陽君がバイトをしてくれていました。モデルもしました」
「はい。存じ上げております。当大学では噂話をする生徒はいませんから、朝陽君が恥ずかしいということは無いと思います」
「それを聞いて良かった。秋冬物でもモデルをするかもしれません。勉強に支障が無いように日程を組ませます」
「当大学では勉強や部活動に忙しくする生徒ばかりです。モデルも大事な仕事だと思います。必ずや、役に立つ経験になるでしょう。当大学では、過去に朝陽君のように他の大学から転学してきた生徒がいましたし、モデルの経験者もいます。彼も転学者です」
「それは在校生ですか?」
「はい。朝陽君とは3つ年上の生徒です。声を掛けさせてあります。キャンパス内の案内を頼んでありました」
「そうでしたね……。そうか、彼が案内役をしてくれましたか」
お義父さんがニコニコしている。朝陽の環境が整っていることに安心した様子だ。優しい感じだが、要望を伝えるときははっきり伝えるから、このように、色々と面倒を掛けてしまう。朝陽は縮こまっていないだろうか。入学式の日に、医学部の先生が正門まで迎えにきたと言っていた。他の生徒からは、どこのお坊ちゃまかと驚かれていたそうだ。
黒崎と一貴さんの車を大学の近くにある駐車場に停めて、のんびりと歩いて聖アルテマ学園大学に入っていった。大きな敷地にはグラウンドがあり、生徒達が走っていた。部活だろうか。その様子を眺めていると、お義父さんが立ち止まった。見たいのか?という言葉とともに。そばにはこの大学の先生がいる。案内役で出てきてくれたそうだ。お義父さんはこれから学長に会う。一緒に朝陽に会った後、一貴さんも学長室に向かう。俺達はそこで帰ることになる。
お義父さんがなるべく俺のことを外に出してくれようとしている気持ちが伝わってくる。そばにいる先生に話しかけて、あの生徒達は授業中なのかと聞き始めた。そして、先生の方から説明がされて、お義父さんが俺の方を向いた。
「夏樹。彼らはテニス部の生徒だそうだ。空手部も走っている。お前が興味あるなら稽古を見学できるよ」
「親父。夏樹は朝陽に会うだけだ。早く帰らせたい」
「圭一。夏樹は外の空気を吸いたいはずだ。家の外に出そうとしないから、気詰まりだろう。全く……。庭も歩かせないとは、どうかしている」
「……」
お義父さんが俺の気持ちを代弁してくれた。卒業式で倒れて以来、仕事以外は黒崎が外に出してくれない。庭も歩いてはいけないと言われている。4月10日のデビュー曲の発表は無事に終わり、一息ついている。来週にはボーカルレッスンがあり、アルバムのレコーディングも始まる。また忙しくなるから、今のうちに休んでおけということだ。だからこそ、俺としては庭を散歩したい。畑の水やりだけしか外に出ないのはつまらない。
「夏樹。こちらの先生は今村先生という。西川先生と親しいそうだ。理学部で天文学を教えているそうだ。口腔外科部長は学長室にいるそうだ。お前に会いたかったそうだ」
「こんにちは。黒崎夏樹です」
「初めまして。今村です。抜歯されたということですが、痛みはどうですか?」
「麻酔が効いていて痛くありません。痛み止めを早めに飲みましたから、麻酔が切れても楽だと思います」
やっと話せた。お義父さんから紹介されて、話しても良いと言われるまでは、俺は口を開いてはならない。これは今までも同じで、今日だけが特別ではない。ニコッと笑顔を作り、ここで歯を抜いてよかったですとお礼を伝えた。
すると、今村先生から微笑み返しを受けて、先生が俺の胸元を見た。そこで、俺は今日の服装が派手だったかも知れないと思って、少し恥ずかしくなった。今日の俺の格好はいつも通りの浅草&大阪ミックスカジュアルだ。今日は特に大きなトラの顔がプリントされたTシャツを着ている。
「このTシャツですか?大阪で買ってきてもらった、トラの顔のTシャツです。パーカーは浅草の物です」
「かっこいいですね。僕も欲しいです」
「そうですか!そう言ってもらえて良かったです」
ニコッと笑顔を作ると、今村先生の顔が赤くなった。最近の俺は押しが強いというから、何か感じたのだろう。そこで、笑うのをやめた。黙っておいた方が良いだろうか。
そこで、黒崎の方を見ると、何も言われなかった。お義父さんもニコニコしている。一貴さんはクールな感じだ。今日は魔術師のような格好をせずに、大人しい格好をしている。俺も派手で一貴さんまで普段通りだと病院で目立ちすぎてしまう。だから、大人しいデザインを選んだのだと思う。
今村先生と何を話そうかと思っていると、お義父さんから助け船が入った。
「今村先生。息子の圭一と一貴です。紹介が遅くなりました。朝陽君は圭一の弟です。一貴の会社で朝陽君がバイトをしてくれていました。モデルもしました」
「はい。存じ上げております。当大学では噂話をする生徒はいませんから、朝陽君が恥ずかしいということは無いと思います」
「それを聞いて良かった。秋冬物でもモデルをするかもしれません。勉強に支障が無いように日程を組ませます」
「当大学では勉強や部活動に忙しくする生徒ばかりです。モデルも大事な仕事だと思います。必ずや、役に立つ経験になるでしょう。当大学では、過去に朝陽君のように他の大学から転学してきた生徒がいましたし、モデルの経験者もいます。彼も転学者です」
「それは在校生ですか?」
「はい。朝陽君とは3つ年上の生徒です。声を掛けさせてあります。キャンパス内の案内を頼んでありました」
「そうでしたね……。そうか、彼が案内役をしてくれましたか」
お義父さんがニコニコしている。朝陽の環境が整っていることに安心した様子だ。優しい感じだが、要望を伝えるときははっきり伝えるから、このように、色々と面倒を掛けてしまう。朝陽は縮こまっていないだろうか。入学式の日に、医学部の先生が正門まで迎えにきたと言っていた。他の生徒からは、どこのお坊ちゃまかと驚かれていたそうだ。
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