551 / 938
16-7
しおりを挟む
さて、これから朝陽に会いに行く。学生会館と教室が入っている建物の手前に学食とカフェがあり、そこの一階のテラス席のそばで待ち合わせだ。今村先生に続いて歩いて行くと、朝陽の姿を発見した。そして、俺達のことに気がつくと、ペコッと頭を下げた。今村先生が一緒にいるからだと思った。まずは黒崎がそばに行き、声をかけ始めた。その間に、俺はお義父さんに聞いておきたいことがあるから、そっと耳打ちした。
「お義父さん。どうして天文学の先生が案内に来てくれたのか、知ってる?」
「ああ。学長候補だからだ。まだ41歳だから若いが、将来を有望視されている。天文学の博士でもある。大変優秀な先生で、かつ人柄が良く、医学部の先生達とは親しいそうだ。今日の案内役は医学部の先生にしてもらおうかと思ったが、朝陽君が遠慮する。だから、今村先生にお願いした」
「なるほど。入学式の時は驚いていたからさ。先生が案内に出てきてくれたなんてって。そこそこで良いと思うんだ」
「そういうわけにはいかない。圭一と一貴が進路を決めた。私にも責任があると思っている」
朝陽の家族構成はお義父さんの方から大学側に伝えてある。自分が朝陽の母親の元夫だということも、理事長先生に伝えてあるそうだ。その上で、黒崎隆としてこの大学と交流を持ちたいと伝えて、温かく迎え入られた。その結果、朝陽は先生達に名前と顔を覚えられていて、それは悪い反応ではなく、入学式の時は担当になる先生達がぞろぞろと朝陽の周りを歩き、案内されたそうだ。俺はそれを聞き、友達が出来るか心配になった。しかし、俺も大学入学の時は近いものがあり、ちゃんと過ごせた。しかし、朝陽と俺とは性格が違うから、心配だ。
「お義父さん。朝陽の3歳年上の子って、知ってる?」
「ああ。三橋龍成君という。堅物だということだ。モデルをやっていたのは、スカウトされたからだそうだ。とにかく真面目で、周りからの信頼が厚い生徒だと聞いている」
「そっか。朝陽に親しい先輩が出来ると心強いね」
「そのようにさせてもらう。就職先は聖加世病院が良いが、ここの付属病院も悪くない。しかし、聖加世病院の方が居やすいとは思う。ああ、朝陽君。会いに来たよ」
「こんにちは」
朝陽がお義父さんの前に立った。何か困ったことはないかと聞くお義父さんに、朝陽はいいえと言って、首を横に振った。こんなにぞろぞろと会いに来て、居心地が悪いだろうか。そんなことを思っていると、朝陽が俺のことを見て、心配そうな顔をした。
「夏樹。歯の方はどう?予定時間で手術は終わったのか?」
「予定時間通りだったよ。すごい先生だね。ゴリゴリって音がしたと思ったら、歯が抜けたんだ」
「麻酔はよく効いたか?」
「うん。今も効いているよ。それにしても、たくさん荷物を持っているんだね」
「ああ。午後からみっちり授業が入っているからな」
「前の大学の時は、スカスカのバッグで登校していたんだろ。黒崎さんが言っていたんだ」
「そんなことを言うなよ。あの日はたまたまだ」
俺がイジると、朝陽が顔を赤くした。あんまり言わない方が良さそうだ。すると、一貴さんがこっちを向いた。朝陽の前では島川社長そのものだから、そのようになった。姿勢がピンと伸びていて、紳士的で、ニコニコしている。
「朝陽君。久しぶりだな」
「はい。社長。お元気でしたか?」
「ああ。僕は元気だ。学校の中を見たかった。安心してくれ。お父さんが色々と手を回してくれているから、充実した学生生活になるだろう。部活は何に入ったんだ?ここの大学と言えば、バスケットボールだ。テニス部も強い」
「俺、ボート部に入ろうと思っています。結構人気なんです。体験入部をしました。他にも、文化部系にも参加しました。そろそろ入部を決めないといけなくて……」
「そうか!君は泳ぎが得意だし、力も結構ある。いや、そんなことはないか。力はそんなに無かった。生地の束を持ち上げるのでさえもフラフラしていた。やめておいた方がいい。文化部にしたらどうだ?」
「カズ兄さん、朝陽はボート部に入りたいって言っているんだ。ん?黒崎さん、お義父さん、どうしたの?」
俺達の方を見て、黒崎達が声を掛けてきた。そこで聞いた。学長の勧めは漢方研究部だと。そこには朝陽と気が合いそうな生徒がいて、三橋さんもいるというから、それがいいということだった。
「朝陽。どうする?」
「何もかも三橋君と一緒にするのは恥ずかしいよ」
「そうだって……」
「朝陽君。漢方研究部にしなさい。先輩と後輩の絆が密で、卒業後の交流もある。将来の選択としてはベストだそうだ」
お義父さんがそう言った。黒崎も同じ意見らしい。水にまつわる部活は危険だと思っているから、反対するだろうと思っていた。何かあってからでは遅いという判断だ。俺としては体力が付くから良いと思っていたが、黒崎達は水に関しては慎重だ。
「お義父さん。どうして天文学の先生が案内に来てくれたのか、知ってる?」
「ああ。学長候補だからだ。まだ41歳だから若いが、将来を有望視されている。天文学の博士でもある。大変優秀な先生で、かつ人柄が良く、医学部の先生達とは親しいそうだ。今日の案内役は医学部の先生にしてもらおうかと思ったが、朝陽君が遠慮する。だから、今村先生にお願いした」
「なるほど。入学式の時は驚いていたからさ。先生が案内に出てきてくれたなんてって。そこそこで良いと思うんだ」
「そういうわけにはいかない。圭一と一貴が進路を決めた。私にも責任があると思っている」
朝陽の家族構成はお義父さんの方から大学側に伝えてある。自分が朝陽の母親の元夫だということも、理事長先生に伝えてあるそうだ。その上で、黒崎隆としてこの大学と交流を持ちたいと伝えて、温かく迎え入られた。その結果、朝陽は先生達に名前と顔を覚えられていて、それは悪い反応ではなく、入学式の時は担当になる先生達がぞろぞろと朝陽の周りを歩き、案内されたそうだ。俺はそれを聞き、友達が出来るか心配になった。しかし、俺も大学入学の時は近いものがあり、ちゃんと過ごせた。しかし、朝陽と俺とは性格が違うから、心配だ。
「お義父さん。朝陽の3歳年上の子って、知ってる?」
「ああ。三橋龍成君という。堅物だということだ。モデルをやっていたのは、スカウトされたからだそうだ。とにかく真面目で、周りからの信頼が厚い生徒だと聞いている」
「そっか。朝陽に親しい先輩が出来ると心強いね」
「そのようにさせてもらう。就職先は聖加世病院が良いが、ここの付属病院も悪くない。しかし、聖加世病院の方が居やすいとは思う。ああ、朝陽君。会いに来たよ」
「こんにちは」
朝陽がお義父さんの前に立った。何か困ったことはないかと聞くお義父さんに、朝陽はいいえと言って、首を横に振った。こんなにぞろぞろと会いに来て、居心地が悪いだろうか。そんなことを思っていると、朝陽が俺のことを見て、心配そうな顔をした。
「夏樹。歯の方はどう?予定時間で手術は終わったのか?」
「予定時間通りだったよ。すごい先生だね。ゴリゴリって音がしたと思ったら、歯が抜けたんだ」
「麻酔はよく効いたか?」
「うん。今も効いているよ。それにしても、たくさん荷物を持っているんだね」
「ああ。午後からみっちり授業が入っているからな」
「前の大学の時は、スカスカのバッグで登校していたんだろ。黒崎さんが言っていたんだ」
「そんなことを言うなよ。あの日はたまたまだ」
俺がイジると、朝陽が顔を赤くした。あんまり言わない方が良さそうだ。すると、一貴さんがこっちを向いた。朝陽の前では島川社長そのものだから、そのようになった。姿勢がピンと伸びていて、紳士的で、ニコニコしている。
「朝陽君。久しぶりだな」
「はい。社長。お元気でしたか?」
「ああ。僕は元気だ。学校の中を見たかった。安心してくれ。お父さんが色々と手を回してくれているから、充実した学生生活になるだろう。部活は何に入ったんだ?ここの大学と言えば、バスケットボールだ。テニス部も強い」
「俺、ボート部に入ろうと思っています。結構人気なんです。体験入部をしました。他にも、文化部系にも参加しました。そろそろ入部を決めないといけなくて……」
「そうか!君は泳ぎが得意だし、力も結構ある。いや、そんなことはないか。力はそんなに無かった。生地の束を持ち上げるのでさえもフラフラしていた。やめておいた方がいい。文化部にしたらどうだ?」
「カズ兄さん、朝陽はボート部に入りたいって言っているんだ。ん?黒崎さん、お義父さん、どうしたの?」
俺達の方を見て、黒崎達が声を掛けてきた。そこで聞いた。学長の勧めは漢方研究部だと。そこには朝陽と気が合いそうな生徒がいて、三橋さんもいるというから、それがいいということだった。
「朝陽。どうする?」
「何もかも三橋君と一緒にするのは恥ずかしいよ」
「そうだって……」
「朝陽君。漢方研究部にしなさい。先輩と後輩の絆が密で、卒業後の交流もある。将来の選択としてはベストだそうだ」
お義父さんがそう言った。黒崎も同じ意見らしい。水にまつわる部活は危険だと思っているから、反対するだろうと思っていた。何かあってからでは遅いという判断だ。俺としては体力が付くから良いと思っていたが、黒崎達は水に関しては慎重だ。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる